ADHDで頭の中がごちゃごちゃする原因と脳内多動を静め整理する対処法
頭の中がごちゃごちゃで、整理できない人がいます。
耳や目から入る情報を処理しきれず、頭をフル回転させても思考や行動に結びつけられません。頭の中に残り続ける情報をうるさく感じ、うつ病のようになる人もいるかもしれません。
実は脳内のごちゃごちゃには発達障がいの一つである注意欠陥・多動(ADHD)が影響している可能性があります。ADHDの障がい特性のために、頭の中の情報をうまく整理できないのです。
ADHDには治療薬が存在するものの、医療での完治は困難です。しかし、障がい特性を知り、生活しやすい環境を整えることで、症状の緩和が期待できます。軽い運動で脳を活性化させるのも良いでしょう。
この記事ではADHDの特徴と、脳内の多動をもたらす原因、有効な対処法を詳しく説明します。
お子様が取り組める対処法として、こどもプラスが実践する運動療育もご紹介します。
1.病気?頭の中がごちゃごちゃし整理ができない具体例
頭の中がごちゃごちゃし整理ができない人は、社会生活で悩みや困難を抱えがちです。
脳内のあまりのうるささに、病気や発達障がいを疑う人もいるでしょう。
この章では注意欠陥・多動(ADHD)の人に起こりがちな、頭の中がごちゃごちゃする具体例を4つ説明します。
1-1.次々とやるべきことが浮かび手をつけられない
ADHDの人は、やるべきタスクが多すぎると手がつけられなくなります。情報の多さに頭が混乱し、途方に暮れてしまうからです。
1-1-1.子どもでもタスクが多ければパニックを起こす
ADHDの子どもは宿題やテスト勉強などやるべきタスクが多すぎると、パニックになる可能性があります。
頭の中がごちゃごちゃし、なにからどう手を付けるか判断できなくなります。
1-1-2.大人はやるべき仕事が多くなるとパニックになりやすい
大人の場合も同様です。普段メインにしている事務作業に加え、上司に会議の議事録と企画書づくりを頼まれたとします。
事務作業を一旦中断してほかを優先するのか、すべてを並行して進めるのか、自分で仕切り調整しながら進めなければなりません。
ADHDの人はやるべき仕事が頭の中をぐるぐるし、整理できないまま途方に暮れます。無理に作業を開始しても、途中でわけがわからなくなりパニックに陥るかもしれません。
1-2.話したい言葉が次々浮かびうるさい
ADHDの人は会話やスピーチ(プレゼン、発表など)がうまくいかないことがあります。話したい内容が衝動的に頭に浮かび、目の前の話題に集中できません。
たとえば学生が進学の相談を先生にするとします。本来は自分の成績にあった学校を紹介してほしいにもかかわらず、気づくと自分の夢や趣味、思い出を夢中になって語っているかもしれません。
将来の夢を聞かれれば、夢を好きになったきっかけから、すべてを順に話したくなります。
夢が趣味に関連するなら、趣味を持つきっかけや魅力に話が移るでしょう。さらに趣味にまつわる思い出があれば、今度は思い出を話したくなります。
次々と衝動的な感情が浮かんでは、話さずにいられないのです。脳内に言葉が溢れ、いつのまにか話題の中心を忘れてしまいます。
1-3.興味が飛んで集中できず、ものごとを忘れる
ADHDの人は興味が拡散しやすく、一つのことに集中できません。
期限内にやらなければならない仕事があっても、集中できずに納期を守れない可能性があります。
たとえばレポートを明日までに提出しようと作業を進めても、興味がほかに向くと手が止まります。部屋の埃が気になれば掃除を始め、おなかがすいて調理をはじめれば夢中になるでしょう。
頭の中に次々と浮かぶことに意識を取られ、気づけばまったく別のことを考えています。やるべきことを忘れ、取り返しがつかなくなってから焦るのです。
1-3-1.大切な約束を忘れることも
ADHDの人は約束を忘れることもあります。
興味がわくものに意識を向けるうち、頭の中がごちゃごちゃし、大切な約束が埋もれてしまいます。
たとえば夕飯をつくるための買い物の約束を出勤前にすると、勤務時間中の頭のごちゃごちゃで、帰るころには頭から抜け落ちているでしょう。
約束はきっかけがなければ思い出せません。家に帰り食材がないことに気づき、出勤前の約束を思い出します。
1-4.スケジュール管理が苦手
ADHDの人はスケジュール管理が苦手です。
スケジュールを管理するには、頭の中で必要な作業時間を計算し、手順を考え実行しなければなりません。
しかし、ADHDの特性があると、順序立てて物事を考えられません。作業時間の概算が難しくで、時間不足であることに気づけないまま無理なスケジューリングをします。
さらにスケジュールにのっとり作業をするのも苦手です。途中で興味の逸脱や、衝動的な欲求で作業が止まります。
頭の中がごちゃごちゃすればするほど、自分で立てたスケジュールを忘れてしまいます。
結局スケジュールどおりに進められず、仕事や学業に支障が出ます。
2.頭の中のごちゃごちゃを生むADHD
頭の中のごちゃごちゃには、ADHDが影響している可能性があります。しかし脳内の多動だけでADHDを判断するのは早計です。
ADHDにはさまざまな症状があります。脳内のごちゃごちゃしか症状がない場合は、同時処理が苦手なだけかもしれません。ADHDがどういった発達障がいなのかを説明します。
2-1.注意欠陥・多動(ADHD)とは
ADHDは不注意や多動、衝動性に特徴がある発達障がいです。ドーパミンと呼ばれる物質の、前頭葉や線条体での機能障がいが原因だと考えられています。
前頭葉での行動抑制機能が弱いため、物事に衝動的に反応し行動しがちです。頭の中がごちゃごちゃするのも、衝動的な思考が溜まるからです。
またADHDの人は、現状を的確に認識し、必要な処理を行う力(実行機能)も弱いと言われます。頭のごちゃごちゃを処理するプロセスが組み立てられず、いつまでも思考を整理できません。
ADHDは社会での認知が進んではいるものの、学校や職場で「だらしない」「集中力がない」とのレッテルが、まだまだ貼られがちです。
ADHDは努力で治るものではありません。周囲が特性を理解し、環境を整備し適切な支援を行う必要があります。
(参照:ADHDにおける衝動性への行動-遺伝的アプローチ | 山形大学紀要(教育科学)第14巻 第2号 大村一史)
2-1-1.自覚しやすいADHDの特徴
ADHDの自覚しやすい特徴は、以下のとおりです。
- 集中できない
- 気が散りやすい
- 物をなくしやすい
- じっとしていられない
- 静かに遊べない
- 待てない
- ケアレスミスが多い
- 仕事の納期を守れない
- 物事を先延ばしにする
(参照:ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療 | e-ヘルスネット(厚生労働省))
2-2.自分をADHDだと思い込んでいるだけのことも
頭の中がごちゃごちゃしやすい人は、ADHDを疑いたくなるでしょう。しかし前節で挙げた特徴を満たさない場合は、自分をADHDだと思い込まないほうが良いかもしれません。
ものごとの処理の仕方には、「継次処理」と「同時処理」があります。継次処理とは物事に順序をつけ、一つひとつ時間差でこなす方法です。同時処理は物事を同時進行し、一気にこなします。
私たちは皆どちらかの処理方法に慣れています。思考の癖がしみついているため、突然異なる処理方法を求められてもすぐには対応できません。
継次処理型の人に、同時処理で仕事を要求しても、うまくはいかないのです。頭がごちゃごちゃしても不思議はありません。
3.ADHDで頭の中がごちゃごちゃになる理由
ADHDの特徴をもとに、頭の中がごちゃごちゃになる理由を説明します。
- 物事に衝動的に反応するため集中が途切れやすい
- マルチタスクが苦手でパニックになる
- ADHD者の頭の中はフル回転している
3つのポイントにまとめました。
3-1.物事に衝動的に反応するため集中が途切れやすい
ADHD者は物事に衝動的に反応します。仕事や勉強中も、なにか気になることがあれば、すぐに意識が引っ張られるでしょう。集中は途切れてしまいます。
拡散した興味の対象から、多すぎる情報を受け取り、頭の中は徐々にいっぱいになります。
頭の中がごちゃごちゃすればするほど、本来やるべきことは埋もれてしまいます。途切れた集中が、戻ることは難しいでしょう。
3-2.マルチタスクが苦手でパニックになる
ADHDの人はマルチタスクが苦手です。現状を的確に認識し、必要な処理を行う力が弱いからです。
なにからどう取り組めば複数の作業をこなせるか、頭の中で工程を組み立てられません。情報が頭の中に溜まる一方で、頭がごちゃごちゃしパニックになります。
3-3.ADHD者の頭の中はフル回転している
うまく処理ができずに溜まったタスクと、衝動的な興味がもたらす新たな情報で、ADHDの人の脳内はいつもフル回転の状態です。
情報を処理しようと過剰に思考を巡らすため、普通に生活しているだけで必要以上に脳疲労を起こします。
ただし頭をフル回転させても、思考を整理できるわけではありません。ぐるぐる回るだけの思考を、雑音のように感じることもあるでしょう。自分の思考が、さらなる脳内の騒音を生むのです。
4.ADHDで頭の中がうるさいときの有効な対策
頭の中がごちゃごちゃし、整理できないときの対処法を説明します。対処のポイントは次の5つです。
- まずは診断でADHDであることをはっきりさせる
- 特性を理解し、小さなことでも仕事や学校ででき得る対策を取る
- ADHDの特性が出にくい環境をつくり出す
- 病院の処方薬で症状の改善を図る
- 適度な運動を心がける
ADHDの診断を受けていない場合は、なにより先に専門家に相談し、ADHDか否かをはっきりさせます。
診断が下りれば、さまざまな支援を受けやすくなるからです。これまでの研究で明らかになった特性を参考に、ライフスタイルを障がいにあわせて見直すこともできます。
②〜⑤は同時に実行します。難しい場合はできることからでも構いません。
4-1.何より先に発達障がいの相談と医療機関の受診を
ADHDの不安が生じたら、まずは専門家に相談し、意見を聞きましょう。
大人は発達障がい者支援センター、子どもは同センターか児童発達支援センターが窓口です。無料で相談支援を受けられ、発達障がいに強い医療機関を紹介してもらえます。
医療機関でADHDの診断が下りれば、その後の支援が受けやすくなります。
主な支援施設には、発達障がい者の就労を支える就労移行支援、子ども達に療育(医学的・教育的支援)を提供する放課後等デイサービス・児童発達支援などがあります。
発達障がい者一人ひとりが自立した生活を送れるよう、専門的な知識とスキルで支援します。
4-2.特性に対応するため、職場や学校でできることを考える
ADHDの特性が原因でうまくいかないことを分析し、具体的な対策に乗り出しましょう。職場や学校ででき得ることを考えます。
たとえば集中できず大切なことを忘れてしまうなら、普段からメモをとる癖をつけます。
頭の中がごちゃごちゃし結論を出せないなら、すべての情報を紙に書き出すことも有効です。仕事や勉強を溜め込まないよう、少しずつこなす癖をつけるのも良いでしょう。
4-3.情報を遮断し集中できる環境をつくる
環境づくりも重要です。ADHDの人はすぐに興味がそれ、集中が途切れてしまいます。外部刺激を少なくするため、できるだけ情報を遮断することが大切です。
たとえば仕事の書類を仕上げるときは、インターネットの回線を切っておきます。物理的に新たな情報を遮断するのです。電話や来客対応もほかの人に任せ、余計なことを考えないようにしましょう。
学生の場合、机の周辺に余計なものを置かないよう整理するのも有効です。
スマホやテレビがある部屋を避け、なるべく外の音が入らない場所で勉強します。勉強する科目以外のテキストも、本棚やカバンにしまっておきましょう。
4-4.頭の中のごちゃごちゃを処方薬で改善する
ADHDには治療に使われる薬が存在します。コンサータ、ストラテラ、インチュニブなどです。ただし根本的にADHDを治せるわけではありません。
日々の生活を楽にし、症状を静める薬だと認識しましょう。依存性が高いものもあるため、安易な処方や不適切な服用はできません。普段かかっている病院で処方された場合のみ使用します。
4-5.体を動かし前頭前野を活性化させる
頭の中がごちゃごちゃしたとき、軽い運動をするのもおすすめです。運動をすることで、前頭前野が刺激され脳が活性化します。
ADHDは前頭葉の機能障がいだと考えられています。運動は前頭前野(前頭葉の一部)に働きかけるため、ADHDの人に効果が期待できます。運動での刺激により、行動抑制機能が正常に機能するようになるのです。衝動的な行動が抑えられ、集中して物事に取り組めます。
5.ADHDで頭の中を整理できない子どもに有効な運動療育
ADHDの人にとって、運動は脳を活性化させ、頭のごちゃごちゃを解消する有効な手段です。
高校生までの子どもは、児童福祉サービスの放課後等デイサービス(小中高生)や児童発達支援(未就学児)で、運動療育を受けられます。
運動療育は遊びがベースです。遊びながら身体を動かしているうちに、ADHDの症状が緩和されます。弊社が運営する放課後等デイサービス「こどもプラス」の運動療育も紹介します。
5-1.運動療育はADHD児の脳を活性化させ集中力を高める
運動療育は、子ども達が楽しみながら運動できる機会を与えます。学校の体育と異なり、うまくできることは求めず、競争もありません。あくまでも遊びの延長として楽しみながら身体を動かします。
運動療育は前頭前野を刺激するため、脳機能に問題を抱えるADHD児にも有効です。弊社が独自に行った研究では、運動療育の後に学習をすることで、集中力が上がり学習効果が高まることが検証されました。
ADHDの子どもは学校生活に困難を抱えがちです。「落ち着きがない」「言われたことができない」などと批判され、自己否定感に苛まれることもあります。
運動療育を行うことで、ADHD児の問題行動が抑制され、学校生活が楽になります。
関連記事:adhdの症状改善に役立つ療育とは?運動療育の高い効果を解説
5-2.実例紹介「すずめポイントジャンプ」
こどもプラスが全国の教室で行っている運動療育から、「すずめポイントジャンプ」を紹介します。すずめポイントジャンプでは、後方感覚や空間認知能力が高まります。
まずは鉄棒の上ですずめに変身します。すずめの姿勢から、足を数回前後に振って勢いをつけ、タイミングよく手を離して後方にジャンプし跳び下ります。
着地ではフラフラせず、ピタッと止まれるようにしましょう。鉄棒から手を離すときに、両手で鉄棒を押すようにすると遠くまで跳べます。
手を離してジャンプをするタイミングがとりにくい場合は、ジャンプ時に「1、2、3」と掛け声をすると良いでしょう。タイミングをとりやすくなります。
なお足振りが不十分で勢いが足りないときや、ジャンプのタイミングがあわないときは、うまく跳べずに鉄棒に顎をぶつける恐れがあります。子どもの胸のあたりに手を当て軽く押す、鉄棒に手を置き顎がぶつかっても痛まないようにする、などの補助を行いましょう。
慣れてきたら、着地ポイントにテープ等で目印をつけ、ポイントに着地できるように工夫します。色違いの複数のテープを間隔をあけて貼り、何色に着地するか宣言してから跳ぶのも楽しいでしょう。少しずつ遊びかたを変えることで、より楽しく集中できます。
こどもプラスのインスタグラムでは、ジャンプに関する運動療育をはじめ、たくさんのプログラムを紹介しています。動画でプロの運動保育士が解説しています。ぜひご覧ください。
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ジャンプを取り入れた運動療育をもっと知りたい人は、こちらの記事もご覧ください。
さいごに
頭の中がごちゃごちゃで整理をつけられない人は、注意欠陥・多動(ADHD)の可能性があります。
ADHDは不注意や多動・衝動性が特徴の発達障がいです。頭の中がごちゃごちゃするのは、さまざまな外部刺激に衝動的に興味が向き、情報が蓄積されるためです。また情報を整理し処理するのも苦手で、頭の中のごちゃごちゃを上手に解消できません。
頭の中のごちゃごちゃを改善するには、
- 特性を理解し、日常生活ででき得る対策をする(メモをとる、情報を書き出す等)
- 外部刺激を入れず、集中できる環境をつくる
- 病院の処方薬を飲む
- 軽い運動で脳機能を活性化する
などの対策が有効です。
子どもの場合、放課後等デイサービスや児童発達支援で運動療育を受けられます。運動療育は発達障がいの子どもに高い効果を発揮し、集中力を高めます。生活にうまく取り入れれば、落ち着いて行動できるようになり、学力も高まります。
こどもプラスは運動療育のパイオニアです。弊社のプログラムは、これまで全国各地の教育委員会や保育園、学校で採用されてきました。また一般企業にも認知され、ベネッセやポピーなどで利用されています。
全国190箇所の教室で運動療育を体験いただけます。ご興味のある保護者様は、ぜひ最寄りの教室までお問いあわせください。
なおADHDについてもっと学びたい人は、こちらの記事もご覧ください。
ADHDや多動性のことをもっと学びたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。 |