なぜ発達障害(ASD・ADHD)だと体幹が弱い?3つの理由と改善策

最近は体幹という言葉が一般的に使われるようになり、体幹トレーニングの重要性も広く浸透してきています。そもそも体幹とは、字のとおり体の幹になる胴体部分のことを指します。

なぜ体幹を鍛えることが重要かというと、腕や脚だけを強く鍛えたとしても、それを支える胴体部分がふらふらしていては体が安定しないからです。

体幹を鍛えることは、日常生活の歩行や姿勢の改善、疲れにくい体づくりができるなど大いにメリットがあります。

子ども達にとっても強い体幹を作ることが重要ですが、生まれつき体幹が弱く、日常生活の中でさまざまな困り事を抱えている子ども達には、とくに良い効果をもたらします。

この記事では、ASDやADHDで発達障害で体幹が弱いことで起こる困り事と、その改善・支援方法を解説していきます。

発達障害で体幹が弱い子どもの困り事

ASD・ADHDなど発達障害を持つ子ども達の中には、発達の特性によって生まれつき体幹が弱い子が多くいます。体幹が弱いと体が安定しないので、スムーズにできないことが多くなります。

例えば、

  • 食事に時間がかかる
  • 勉強したくても長時間座ることが難しい
  • 字を書くことがうまくできない
  • 友達と同じように遊べない、すぐに疲れてしまう
  • 身体がぐにゃぐにゃ・フラフラとしてうまく体操・運動できない

など、日常のあらゆる場面での困り事につながります。

発達障害を持つ子ども達は、障害特性による直接的な困り事のほかにも、周囲の人が想像もできないような目に見えないところで、多くの生き辛さやストレスに悩まされていることがあります。

できる・できないなどの表面的な行動だけで判断せず、できていても無理をしていないか、できない場合はその理由や背景をしっかりと見極めて支援をすることが大切です。

体幹が弱い子どもに見られる3つの特徴

体幹が弱い子に見られる特徴

体幹が弱い子どもに見られるのは、主に以下のような特徴です。

  1. 姿勢が悪くなる
  2. 集中力が低下してじっとしていられない
  3. まっすぐ走れない

体幹の弱さからくる特徴では、姿勢が悪くなることが一番想像しやすいかもしれませんが、ほかにも集中力や運動面などで困り事が出てきます。

このような特徴は家庭でも見られるものですが、学校のような集団生活の場のほうがよりはっきりと見えてきます。具体的にどんな様子なのか、詳しく見ていきましょう。

①姿勢が悪くなる

体幹が弱いと、体が支えられないので姿勢保持が困難です。

そのため、座り姿勢では

  • まっすぐ座れない
  • 背もたれにもたれて足を前に投げ出す
  • 猫背で頬づえをつく
  • 机に突っ伏してしまう
  • 椅子の上に足を乗せて膝を立てる

などの行動が見られます。

立ち姿勢でも「まっすぐ立てない」「ふらふらしている」ことが多く、安定しません。

その見た目から、やる気がない・態度が悪いと誤解されてしまうことがありますが、決してそうではありません。体幹が弱いために自分の体重を支えられないので、どうにか座っているためにこのような状態になってしまいます。

関連記事:発達障害児に多い姿勢の悪さは体に様々な悪影響を及ぼします。

②集中力が低下してじっとしていられない

姿勢保持が困難なので、長時間座っているなど同じ姿勢でいることはとても辛いことです。

そのため、椅子に座っている時も足をぶらぶらさせたり何度も立ち歩いてしまい、時には寝転んでしまうこともあります。この状態では、授業を受けたくても集中することが難しくなってしまいます。

また、じっとしていられないことでADHD特性の多動と間違われることもあります。

関連記事:集中力注意力が持続しにくいADHDではあらゆる場面で支障があります。

③まっすぐ走れない

体の軸が安定しないので、まっすぐに走ることが困難です。

走ろうとしても体がぐにゃぐにゃして、うまくバランスが取れず、ドタバタ走ったりふらふらしてしまうので、かけっこでも速く走ることができません。

中には、運動能力をうまくコントロールできず、転びやすい子どももいます。転倒したり、こけたりする子どものことを知りたい方は「よく転ぶ子どもは病気や発達障がい?原因別の特徴や対策を解説」をご覧ください。

体幹が弱いことで子どもに与える影響

体幹が弱いことで生じる2つの困り事

体幹が弱いことは、想像以上に子どもの心身の成長に影響を与えます。どもが家庭に次いで多くの時間を過ごす学校生活の中でも、学習、運動、遊び、食事などすべての活動での困り事につながりやすくなります。

できないことや辛いことが多いと、子どもの自信や自己肯定感を下げてしまうことになり、心の成長にも影響を与えてしまいかねません。

実際に体幹の弱さが子どもに与える影響を、2つ挙げます。

全身の発達に影響する

子どもの発達には、中心から末端に、上から下に向かって発達していく順序性があります。

つまり、体の中心である体幹が十分に発達していなければ、その先の腕や指先、足などの発達は促されません。

全身をバランス良く発達させていくためには、まずは体の軸になる体幹をしっかりと育てておくことが前提条件になるのです。

粗大運動と微細運動

体の発達に順序があるように、運動の発達にも順序があります。最初に粗大運動と呼ばれる、立つ・歩く・ジャンプ・姿勢保持などの全身を使った大きな運動ができるようになります。

次に微細運動と呼ばれる、鉛筆で字を書く・箸を使う・ボタンを留める・積み木遊びなどの手先を使った細かな運動ができるようになります。

標準的な乳幼児の発達の順番と年齢の目安は、以下の表のようになっています。

粗大運動 微細運動
3〜4か月 首がすわる おもちゃをつかんでいる
6〜7か月 座位保持(数秒) おもちゃの持ち替え
9〜10か月 つかまり立ち 積み木を打ち合わせる
1歳 数秒立っている なぐり書きする
1歳半 走る コップからコップへ水を移す
2歳 ボールをける 積み木を横に並べる
3歳 片足立ち(2秒) まねて◯を書く
4歳 ケンケンできる 人物画(3つ以上の部位)
5歳 スキップできる 人物画(6つ以上の部位)
6歳 紐を結ぶ

(引用:子どもの心の診療医の専門研修テキスト|厚生労働省

 

障害の有無などに関わらず、子どもの発達の順序はこのように決まっています。

よく、子どもが不器用だからと手先を使うトレーニングばかりをさせる方がいますが、まだ全身を使った粗大運動が習得できていなければ、うまく道具が使いこなせなくて当然なのです。

日々の遊びの中で体幹を鍛えて全身の大きな動きを習得してから、腕に力を入れる遊びや手首や指先を使った遊びというように段階を踏んでいくことが大切です。

関連記事:【ADHD・ASD】手先の不器用さをもたらす発達障がいと改善に導く方法

学校生活が辛くなる

体幹が弱い子の特徴に、「姿勢が悪くなる」「集中力が低下してじっとしていられない」「まっすぐ走れない」の3つを挙げましたが、どれも学校生活での困り事に直結するものです。

学校では椅子に座って授業を受ける時間がとても長いので、姿勢保持の難しさや集中できないことによる困り事や辛さは多くなります。

また、まっすぐ走れないことで体育の授業や運動会などで、悲しい思いをすることもあります。

友達との遊びで鬼ごっこやサッカーなどをして遊ぶときにも、運動面の苦手が影響し楽しく遊べないことがあります。こうしたことが毎日続くと学校へ行くことが辛くなってしまい、不登校につながってしまうケースも考えられます。

姿勢の悪さは学力低下に直結

学校の授業は、小学校なら45分です。45分間椅子に座ったままで姿勢を保ち続け、なおかつ先生の話に耳を傾けて授業に集中しなければいけません。体幹が弱い子にとっては、座り姿勢を保つことだけで精一杯なことです。

その状態でさらに先生の話を聞き、ノートを取ることは難しく、座っているのが辛くて席を立って歩きまわってしまうこともあります。そうなると、授業への参加が難しくなります。

授業中に集中して話を聞くことや活動への参加ができないと、知的な遅れはないのに勉強についていけず、学力低下に陥ってしまうこともあります。

なぜ発達障害では姿勢が崩れて、体幹が弱いのか?

発達障害で姿勢が悪くなる3つの要因

なぜ発達障害を持つ子ども達は体幹が弱いのでしょうか。次の要因が考えられます。

  1. 発達性協調運動障害
  2. 筋肉の低緊張
  3. 固有受容覚の未発達

発達障害の子どもで「体がぐにゃぐにゃ」「姿勢が保てない」のは、3つの要因のうち、どれか1つまたは複数の要因を持っているからだと考えられます。

どのような症状なのか、詳しく見ていきましょう。

①発達性協調運動障害

体の筋肉や骨、神経など各器官には異常がないにも関わらず、体の動きがぎこちなくなる障害です。

とえば、日常生活の中で食事や着替えなどの生活動作がうまくできなかったり、簡単な運動が苦手であったりなど、不器用さが目立つのが特徴です。

ASD、LD、ADHDなど発達障害との併発が非常に多いと言われています。目と手、手と足など複数の部位を同時に動かす協調運動が苦手なので、全身にバランス良く意識を向けなければいけない姿勢保持も困難です。

②筋肉の低緊張

姿勢を保つためには、筋肉に一定の張り(緊張)が保たれている必要があります。適度に筋緊張が保たれていることで、姿勢を保ったりスムーズに体を動かせます。

発達障害を持つ子ども達の中には、生まれつき筋肉の張りが弱い低緊張のお子さんが多くいます。

筋肉の低緊張により、うまく運動ができず。筋肉がつきにくいと悩む人もいます。姿勢を保つのも一苦労です。座っている間、常に姿勢に意識を向け続けることは辛くとても疲弊します。

その結果、姿勢を保てなくなって姿勢が悪くなったり、座っているのが辛くて寝転がったり立ち歩いてしまうことが起こります。

③固有受容覚の未発達

固有受容覚とは、自分の体の位置や動き、力の入れ加減などを感じ取る感覚です。この感覚があることで、私たちは自分の体がどういう状態になっているのかがわかり、座っているときも自分の体を安定させることができます。

発達障害を持つ子ども達では、あらゆる感覚の発達に偏りが見られることが多く、さまざまな困り事を抱えています。感覚には、視覚・味覚・嗅覚・触覚・聴覚のいわゆる五感のほかに、固有受容覚と前庭覚のあわせて7つの感覚があります。

これらの感覚は、子どもが成長していく過程で少しずつ発達させていきますが、発達障害特性があると感覚の発達に特異性が見られることが多く、固有受容覚の未発達よって自分の体をコントロールして動かすことが難しくなり、姿勢を保つことも苦手になります。

この3つの要因によって、発達障害を持つ子ども達ではとくに姿勢が悪くなってしまうことが考えられます。では、体幹の弱さや姿勢の崩れを改善していくために具体的にどんな支援をすれば良いのか、実例をまじえながら解説します。

関連記事:発達障害児に多い姿勢の悪さは体に様々な悪影響を及ぼします。

発達障害の子どもの体幹を鍛えるトレーニング

姿勢改善には環境調整+トレーニング

発達障害の子ども体幹を鍛えるトレーニング方法を紹介します。体幹を強くし、姿勢を改善するポイントをまずはお伝えします。

姿勢改善には環境調整+トレーニング

子どもの姿勢を改善するための支援で最初に行うのは、環境調整です。環境調整とは、本人に苦手を改善させるのではなく、周囲がその苦手が起こらないような環境に整えてサポートをすることです。

体の発達の特性で姿勢を保つことが苦手な子どもは、言葉で注意をしてもできません。筋肉を鍛えるトレーニングをしても、急にできるようにはなりません。

まずは、長時間姿勢を保つことが苦手だということを周囲が理解して、授業中に先生のお手伝いをしてもらうなどの方法で動くことができるようにしたり、座りやすい椅子に変えるなどの環境調整をしてあげたりすることが最優先です。

その上で体のバランス力を養って体幹を鍛え、筋肉の持久力を高めるようなトレーニングを遊びとして取り入れていくことが適切な方法です。

遊びの中で楽しく体幹トレーニング

子ども達が無理なく体幹トレーニングを続けるためには、遊びの中で楽しく行うことが最も重要なポイントになります。

例えば、トランポリンや縄跳びなどのジャンプ遊び、木登りやジャングルジム、ブランコなど公園にある遊具で遊ぶのも、体幹やバランス感覚を鍛えるトレーニングになるのでオススメです。

ぜひ、子どもが楽しく行えるトレーニング遊びを見つけてあげてください。

関連記事:発達障がいの子どもは体が固い!柔軟性を獲得し体幹をきたえる運動療育

こどもプラスの運動遊びの実例

放課後等デイサービスの教室「こどもプラス」が提供している運動遊びの中から、体幹トレーニングになる遊びをご紹介します。

<忍者カンガルーの縄越え>

  1. 2つの椅子の足などにゴム紐をくくりつけて、高さのある障害物を作ります。
  2. ゴム紐の前に立ち、両足を揃えたカンガルージャンプでゴム紐を跳び越えます。
  3. ゴム紐に当たらずに跳び越せるようになったら、着地で音がしない静かなジャンプで行なってみましょう。腕を振って、膝のクッションを使い、足の指先を強く踏ん張るのがポイントです。

この遊びでは、高さのある障害物を跳び越えることで跳躍力や空間認知力が養われます。また、ジャンプ遊びでは腹筋背筋を刺激して、体幹も鍛えられます。

音がしない静かなジャンプができるようになると、足の指先の踏ん張り力が付いて立ち姿勢でふらふらしなくなります。さらに全身の連動性も身に付くので、スムーズでなめらかな動きの獲得にもつながっていきます。

こどもプラスが運営するInstagramの公式アカウントでも、体幹を鍛える運動遊びを紹介しています。動画付きでトレーニング方法をわかりやすく解説しているので、ぜひ併せてご覧になってください。

<体幹を育てる運動遊びの関連記事>

こどもプラスの運動療育は遊びで効果を最大化

子どもの発達を促すための活動では、「楽しさ」が最も重要になります。どんな良い活動も、楽しくなければ継続して取り組むことはできません。

私たちが行う運動療育「柳沢運動プログラム」は、運動にゲームや競争など遊びの要素を加えた運動遊びです。あくまでも遊びの中で、体・心・脳を育て、困り事の軽減や生きる力の習得につなげていきます。

子どもにとっては、遊んでいるだけで力が身に付きできることが増えるので、楽しくてどんどん取り組み、さらにどんどん力がつくという好循環の中で無理なく活動していくことができます。

一人ひとり好きなことや得意なこと、興味があること、また課題となる力は違うので、その子にあわせた活動で楽しく着実に力を育てていくのがこどもプラスの療育です。

「こどもプラス」は放課後等デイサービスの教室を全国に190拠点展開しています。体幹を鍛えたり、姿勢を良くするトレーニングに興味がある方は、ぜひお近くの教室までお問い合わせください。

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