よく転ぶ子どもは病気や発達障がい?原因別の特徴や対策を解説

よく転ぶ子どもは病気や発達障がい?原因別の特徴や対策を解説

子どもは大人と比べてよく転びます。

小さなうちは普通のことと受け止めていても、成長とともに直らないと心配になります。とくに小学校でお友達と体を動かす機会が増えると、転んでばかりの子は目立つでしょう。

「うちの子は、どこかおかしいのでは?」

そう感じて、お子様の病気や発達障がいを疑う保護者様もいらっしゃるのではないでしょうか。

子どもの転倒にはさまざまな要因があります。よく転ぶことが、必ずしも病気や発達障がいと結びつくわけではありません。大切なのは原因を幅広く理解し、お子様の状態を正しく見極めることです。

この記事では子どもがよく転ぶ原因を3つのポイントから挙げ、病院や発達障がいの場合の有効な対策を説明します。

ここで習得した知識をもとにお子様を見つめれば、お子様がよく転ぶ原因を推測できるでしょう。また、お子様をサポートする方法もわかるため、今まで感じていた不安が和らぎます。

1.子どもがよく転ぶ原因

1.子どもがよく転ぶ原因

子どもが転ぶ原因は、次の順に考えていくと良いでしょう。

  1. 心身の成長過程に現れがちな、子どもの特性
  2. 病気
  3. 発達障がい

幼児は筋力や神経系の発達段階のため、転ぶことはめずらしくありません。まずは子どもの成長過程に現れがちな特性を確認しましょう。

お子様の状態が①の子どもの特性だけでは説明できない場合、病気や発達障がいも疑わなければなりません。ただし、病気や発達障がいを転倒だけで判断するのは危険です。症状や特性を知り、総合的に判断しましょう

1-1.3歳~5歳の子どもがよく転ぶのは子どもの特性

歩きはじめてから日が浅い1〜2歳児が転ぶのは当然です。頭が大きくて体のバランスが取りづらい上に、バランスをつかさどる三半規管も未熟だからです。

しかし3歳、4歳と年齢を重ねても、転ぶのが改善されない子もいます。それには就学前の子どもに見られるいくつかの特性が影響しています。

1-1-1.前庭感覚の刺激を求め走り回る

幼児はよく走り回ります。少しの移動でも歩くことなく、常に走る子どももいます。走る筋力と止まる筋力がアンバランスなため、走れば転ぶ確率が上がります。

重力や身体の傾き、スピードを感じ取る感覚を「前庭感覚」と言います。幼児が走る理由は、前庭感覚を刺激し、発達させるためだと考えられています。前庭感覚が発達すればできることが増えるため、子どもは無意識に前庭感覚への刺激を求めるのです。

(参照:活動がうまくできるには… | 奈良県障害者総合支援センター

1-1-2.運動神経の発達が途上

幼児は運動神経が発達段階です。

Scammon(1930)の「スキャモンの発達・発育曲線」によれば、神経系の発達は0歳から始まり、4歳で全体の80%、6歳で90%に達します。就学前までに運動神経は急激に獲得されます。

しかし身体を動かす機会が少ない子どもは、運動神経の獲得が遅くなります。日常生活やスポーツに必要な動作に支障をきたし、それが転びやすさに結びつきます。

(参照:Scammon, R, E. (1930). The measurement of the body in childhood, In Harris, J, A., Jackson., C, M., Paterson, D, G. and Scammon, R, E.(Eds). The Measurement of Man, Univ. of Minnesota Press, Minneapolis.

1-1-3.注意がすぐにそれる

子どもは大人ほど一つのことに集中できません。

歩いているときに足元に集中を向けられず、見えるもの、聞こえるものに次々と興味が移ることも珍しくありません。その結果、不注意で転んでしまいます。

集中力が足りないのは、脳の前頭前野が未発達なためです。前頭前野はワーキングメモリ、反応抑制などをつかさどる部分で、集中力にも影響します。大切な部位であるいっぽう、成熟は遅く、幼い子供の前頭前野はあまり発達していません。

集中力を獲得しきれないことが、転倒を招くのです。

(参照:前頭前野| 脳科学辞典

1-1-4.見る力が弱い

ものを見る力が弱く、周りが見えずに転ぶ場合もあります。

ものが見えるのは、網膜に映った像を脳が受け止めるからです。目から脳への伝達路は、日常生活や遊びで徐々に鍛えられます。幼児は伝達路の発達段階で、ものを見る力が弱い子もいるのです。

1-1-5.靴のサイズがあわない

靴があわない

靴のサイズがあっておらず、つまずいて転ぶこともあります。

子どもの足はすぐに大きくなります。靴の大型チェーン店を展開するシューマートによれば、3歳半までは半年で約1cm、それ以降は半年で5mmずつ大きくなります。あわない靴を履いているとつまずきやすいだけでなく、扁平足や外反母趾の原因にもなります。

お子様の靴のサイズが適切か、定期的に確認する必要があります。

(参照:知っておきたい”子供の足と靴”のこと | 株式会社シューマート

1-2.子どもの脳腫瘍

子どもの脳腫瘍

病気を疑う場合、最も心配な病気の一つが脳腫瘍です。脳腫瘍は治療が大変で、後遺症も出やすい病気だからです。

「小児脳腫瘍の会」によると、子どもの脳腫瘍は約6割が小脳や脳幹に発生します。小脳に腫瘍ができた場合の局所症状(※注1)として、歩いているときのふらつきや、姿勢の維持困難が挙げられます。

同会の情報をまとめると、以下が子どもの脳腫瘍の初期症状です。

  • 頭痛、嘔吐、ぼんやりする
  • けいれん発作
  • トイレの回数増加、おねしょ

現在はMRI検査が最も有効な診断方法です。心配な場合は、MRI検査が受けられる病院を受診しましょう。

※注1)局所症状とは、脳腫瘍ができた部位ごとに異なる症状です。大脳の前頭葉、脳幹部、目の神経の近くなどで、現れる症状が異なります。

(参照:小児の脳腫瘍について | 小児脳腫瘍の会

1-3.神経筋疾患(NMD)の可能性も

よく転ぶ以外にも、歩きづらい、ジャンプができない、立ち上がりづらいなどの症状が長く続き、症状が進んでいる場合は、神経筋疾患(NMD)の可能性があります。

神経筋疾患(以下、NMD)は脳や脊髄、末梢神経などの異常により、運動機能に影響が出る病気の総称です。進行性のため、早期の発見と治療が必要です。

NMDの総合情報サイト「もしかしてNMD?」によると、

  • 両足でジャンプできない(2歳半ころまでのジャンプし始めを除く)
  • うまく歩けない
  • 突然転ぶ
  • 手を使わずに床や椅子から立てない、階段を上れない
  • 屈伸できない
  • 運動発達がゆっくり

などの項目が、症状に挙げられています。気になる場合は早めに病院を受診しましょう。

(参照:もしかしてNMD? | サノフィ株式会社/日本新薬株式会社/バイオジェン・ジャパン株式会社

1-4.発達障がいの子どもは転びやすい

発達障がいの子どもは転びやすい

成長過程の特性でも病気でもない場合、発達障がいの可能性もあります。

発達障がいは先天的な脳機能障がいです。ものごとの捉え方や行動が独特で、社会生活でしばしば困難にぶつかります。知能やことばの遅れが見られないこともあり、見た目からは判断しづらい子もいます。

発達障がいにはさまざまな種類があります。よく転ぶ特性が出やすいのは、「発達性協調運動障がい(DCD)」と「自閉スペクトラム症(ASD)」です。第2章で特徴を詳しく説明します。

発達障がいはできるだけ早く診断し、一人ひとりにあった環境で適切な支援を受けることで、症状を緩和できる可能性があります。

周囲の大人が気づかないままでいると、子どもは学校や生活で生きづらさを抱えます。「問題児」「能力が低い」などとレッテルを貼られ、精神的なショックを受けることも少なくありません。

まずは正しい知識をつけ、心配な場合は診断を受けることが重要です。

2.よく転ぶ子どもに疑われる発達障がい

発達障がいのうち、転びやすさに結びつくのが「発達性協調運動障がい(DCD)」と「自閉スペクトラム症(ASD)」です。

とくに発達性好調運動障がいは運動能力をうまくコントロールできないため、転びやすさと直結します。

この章では発達性運動障がいを中心に、障がいの特徴や見極めポイントを説明します。

2-1.発達性強調運動障がい(DCD)の特徴

運動が極端に苦手な子どもや、なにをやらせても不器用な子どもは、これまで「経験不足」「個人の気質の問題」と捉えられてきました。しかしそのような子ども達は、発達障がいの一種である「発達性協調運動障がい(以下、DCD)」である可能性が指摘されるようになりました。

DCDの特徴は、身体障がいがないにもかかわらず、協調運動が苦手で、日常生活に支障をきたすことです。

協調運動とは、手と足、目と手など別々の動きを同時になめらかに行うことです。定型発達であれば、歩くときに手と足をバランスよく動かすことは難しくありません。

しかしDCDの子は、歩くのに必要な命令を脳がうまくコーディネートできず、手と足をうまく連動させられません。その結果ふらついてしまい、よく転ぶのです。

2-1-1.学校生活で求められる協調運動の例

学校生活では、さまざまな場面で協調運動が必要です。

たとえばサッカーをするには目でボールを追いかけながら、足で蹴らなければなりません。黒板の板書をするにも、目で見た情報と、指で字を書く作業を連動させなければならないのです。

DCDは注意欠陥・多動(ADHD)や学習障がい(LD)、自閉スペクトラム症(ASD)と併発しやすい特徴もあります(※注2)。DCDを疑う場合は、ほかの発達障がいの症状も確認しましょう。

※注(参照:発達障害児の姿勢や身体の動きに関する研究動向 | 香野毅(特殊教育学研究)

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2-2.【幼児期】発達性強調運動障がいの症状チェックリスト

【幼児期】発達性強調運動障がいの症状チェックリスト

幼児期のDCDに気づけるチェックリストを作成しました。お子様がひとりでできない項目が多いほど、DCDの可能性が高まります。

 

<DCDチェックリスト>

手助けがなくても、ひとりでシャツを着られる

ひとりで靴紐やファスナー、ベルトが閉められる

立ったり座ったりを良い姿勢でできる

正確にものを切ることや、上から文字や絵をなぞることができる

小さなブロックをつまめる

人や物にぶつかることなく部屋を歩ける

短い距離をスキップできる

片足跳び(けんけんぱ)ができる

動きながら目標めがけてボールを投げられる

止まっている大きなボールを走って蹴ることができる

動いているボールを近くまで行ってキャッチできる

 

このチェックリストは、「MABCチェックリスト」を参考に、編集部でわかりやすくアレンジして掲載しています。

(参照:幼児期における発達性協調運動障害に関する質的評価の試行的検討 | 増田貴人(弘前大学教育学部論文)

2-3.アスペルガー症候群の可能性も

転びやすい子どもで運動全般が苦手な場合、自閉スペクトラム症(以下、ASD)の可能性もあります。運動神経の悪さは、ASDの中でもアスペルガー症候群に見られる特徴です。

アスペルガー症候群は運動制御にかかわる神経物質がうまく働かず、脳の興奮を抑制しにくい障がいです。その特性が全身を協調して動かす技術を低下させます。

アスペルガー症候群には、運動能力の低さ以外にも、以下の特性があります。

  • コミュニケーションを取りづらく、良好な人間関係を構築しにくい
  • 場の空気を読むことが難しく、社会性に問題を抱えがち
  • 五感のいずれかが過敏になり、感覚が偏っていることがある
  • こだわりが強く、法則や規則に従って行動したがる
  • 体をうまく動かすことや、細かな作業が苦手

これらの特徴が見られる場合は、DCDよりもASDの検査を優先すると良いでしょう。

詳しくは、運動が苦手なアスペルガー症候群でも遊びながら改善!運動音痴の問題と克服方法をご覧ください。

3.よく転ぶ子どもを支援するために必要なこと

よく転ぶ子どもを支援するために必要なこと

よく転ぶ原因が成長過程の特性の場合、時間の経過で問題が解決します。病気や発達障がいの知識は頭に入れつつ、引き続き成長を見守ると良いでしょう。

しかし病気や発達障がいが疑われる場合は、極力早めの対処が必要です。

転びやすさにつながる病気は深刻なものが多く、判断を遅らせるわけにはいきません。この章では病気、発達障がいを検査する場合の受診・相談先を説明します。

3-1.病気が疑われる場合は早めに病院を受診する

第1章で説明したとおり、転びやすさに結びつく病気は、脳腫瘍と神経筋疾患(NMD)です。

どちらもできるだけ早く発見し、治療を受ける必要があります。NMDでは先にご紹介した「もしかしてNMD?」が参考になります。

検査までの流れを説明していますので、お子様の状態が気になる人は、以下リンク先をご覧ください。

参考サイト:「もしかしてNMD?」

3-1-1.よく転ぶ子どもを診てもらえるのは何科?

脳腫瘍は脳神経外科が専門ですが、お近くに小児脳神経外科がある場合は、そちらがより適切です。

NMDは脳神経内科です。こちらも小児脳神経内科がお近くにある場合は、そちらがより適しているでしょう。

3-2.発達障がいは発達障害者支援センターや児童発達支援センターに相談を

発達性協調運動障がい(DCD)や自閉スペクトラム症(ASD)が疑われる場合は、発達障がい者支援センターや児童発達支援センターに相談しましょう。

発達障がい者支援センターは、自治体、もしくは自治体指定の法人が運営している相談機関です。相談内容に応じてセンターのスタッフが具体的な支援計画を作成してくれます。

児童発達支援センターは、障がいのある未就学児の支援施設です。地域の障がい児支援の拠点として、さまざまな相談に応じ、アドバイスしてくれます。

これらの機関を経ることで、お子様の個性にあった療育(医療的・教育的支援)が受けられるようになります。

転びやすいお子様には、作業療法士の支援と、身体を動かす習慣づくりが必要です。

3-2-1.作業療法

作業療法は、日常生活の動作を円滑にするリハビリテーションです。作業療法士が日常生活に必要な動作をケアします。DCDやアスペルガー症候群の場合、歩き方や立ち方、座り方など基本動作を中心に支援を受けられます。

3-2-2.身体を動かす習慣づくり

DCDやアスペルガー症候群の子は、運動での成功体験がありません。

うまくいかない経験が多いため、体を動かすことに抵抗があります。そのため、我流で進めようとせず、療育のプロに任せると安心です。

障がいのある未就学児が対象の児童発達支援や、障がいのある小中高生が対象の放課後等デイサービスがおすすめです。こどもプラスをはじめ、身体を動かす「運動療育」を提供している事業所が多数あります。

個性にあわせた支援プログラムなら、楽しく身体を動かせるでしょう。

4.発達障がいがありよく転ぶ子どもに有効な運動療育

発達障がいがありよく転ぶ子どもに有効な運動療育

DCDやアスペルガー症候群の子は、運動の習慣づくりをすることが重要です。

楽しく身体を動かすうちに、徐々に運動の苦手を克服し、成功体験を積み重ねられます。それには児童発達支援や放課後等デイサービスで受けられる運動療育(運動遊び)が効果的です。この章では運動療育が効果を発揮する理由を説明します。

また、ご自宅で簡単にできる「運動能力を引き出す遊び」を紹介します。ぜひトライしてみてください。

4-1.運動遊びが発達障がいの子どもに有効な理由

発達障がいは、前頭葉の機能障がいであると言われています。

前頭葉は前頭前野、運動前野などから形成される脳組織です。遊びながら身体を動かす「運動遊び」は、前頭前野に刺激を与え、活性化させる役割を果たします。そのため、前頭葉に問題を抱える発達障がいにも有効です。

子ども達は運動遊びをとおし、自分のペースで気持ちよく体を動かすことを覚えます。とくにこどもプラスの運動遊びは、楽しく工夫されたプログラムばかりです。夢中になって遊ぶうち、DCDやアスペルガー症候群の症状をおさえることにつながります。

4-2.子どもの運動能力を引き出す「足を使った積み木積み」

こどもプラスの運動遊びから、DCDやアスペルガー症候群の子ども達に向けに、運動能力を引き出す遊びを紹介します。

4-2-1.足を使った積み木積み

子どもは体操座りのように座り、両手を後ろについて軽く体を支えるようにします。そして、足だけを使って積み木を積んで遊びます。

積み木を挟むときは、くるぶしあたりでなく、両足の親指のあたりで挟むようにします。

小さな積み木だと難しい場合は、大きな積み木や紙の箱などを使うのもおすすめです。

この遊びでは主に腹筋と太ももの筋肉を育てます。腹筋や太ももの筋肉は、さまざまな運動で必要です。また普段姿勢よく椅子に座るためにも鍛えておきましょう。

こどもプラスのInstagramでも、下半身や体のバランス感覚が鍛えられる運動遊びを紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

転びにくい体づくりに役立つ運動遊びはこちらもオススメです。

さいごに

子どもがよく転ぶ原因は、

  • 発達段階の特性
  • 病気
  • 発達障がい

にわけられます。このうち病気と発達障がいには、できるだけ早く気づき対処しなければなりません。

病気で考えられるのは、脳腫瘍と神経筋疾患(NMD)です。脳腫瘍は神経外科・小児神経外科を、NMDは神経内科・小児神経内科を受診しましょう。発達障がいでは、発達性協調運動障がい(DCD)や自閉スペクトラム症(ASD)が疑われます。どちらも転倒だけで判断せず、障がいの特性を知り総合的に見極めることが大切です。

発達障害者支援センターや児童発達支援センターで相談を受けられます。個別の支援計画を作成してもらい、作業療法や運動療育を受けることをおすすめします。

なお、こどもプラスが提供する運動療育(運動遊び)も、DCDやASDに有効です。こどもプラスの運動遊びは、集中力を高め、お子様の運動能力を引き出します。ご家庭でも取り入れやすいプログラムを多数揃えています。「こどもプラス」は放課後等デイサービスの教室を全国に190拠点展開しており、随時入所体験も行えますので、お気軽にお問いあわせください。

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