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発達障害で苦手なことを避けるのは良くない?話し合いを克服するには

発達障害

発達障害やその傾向のある子どもの中には、「話し合いが苦手」と感じている子どもも多いのではないか、と思います。

保護者のみなさんとしては、話し合いがうまくできずに辛そうにする子どもの姿を見て、話し合いが苦手なままで大丈夫だろうかと心配になることもあるでしょう。

今回は、発達障害の子どもが話し合いを苦手に感じるとき、苦手なことを避けるか、克服するかについて様々な角度から見ていきたいと思います。

発達障害の子どもが話し合いを苦手に感じるのはなぜ?

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発達障害の子どもの全員ではありませんが、発達障害の子どもは、話し合いを苦手と感じることも少なくありません。

理由の1つは、ASD特性では一度にたくさんの情報を処理することが苦手で、苦痛を感じやすいからです。

小学校の授業では、よく数名のグループに分かれて話し合いをするという学習の時間がありますね。

クラス全体での活動とは違った学びを得られるでしょう。

しかし、この話し合いは、ASD特性のある子どもに大きな負荷がかかることがあります。

まず、ASDの基本特性として「対人関係や社会的なやりとりの困難さ」や「興味行動の狭さと反復性の行動」が挙げられます。

もう少し簡単にまとめると、一方通行で周囲とのコミュニケーションをとる傾向があり、細部思考やこだわり行動が見られるということです。

他にも光や音の刺激に敏感な感覚過敏の特性や、一般的な感覚や価値観についての推測を外しやすい想像力の困難さを抱えていることもあります。

「話し合い」は複数の人がお互いの意見や考えを交換し合い、問題や課題について解決やひとつの答えにまとめることを目指すプロセスを指します。

つまり、話し合いの参加者は、一度に複数の人と向き合い話を聞き、聞いた内容を一時的に覚え、要点を整理し、自分なりに解釈したり重要性を判断したりしています。

加えて、今までの知識や経験を踏まえた自分の考えや意見をまとめ、自分の意見を言葉や身振り手振りで伝え、これらをキャッチボールのように短い時間でラリーしていきます。

また議論が白熱した時には、周囲の様子を観察したり、自分自身の内面に目を向け感情をコントロールしたりという動きも必要になってくるかもしれません。

このように、話し合いの参加者の頭の中では、実に大量の情報が一気に複雑な過程を経て処理されているのです。

この情報処理の過程の中で得意不得意の差が大きいと途中で情報処理ができなくなってしまい、結果話し合いが困難で、パニックやフリーズをしてしまうことがあるのです。

情報処理のどの過程に苦手さを感じているかは、それぞれの子どもによる部分もあるでしょう。

例えば、文字を見て理解するのは得意だけど、話を聞いて内容を理解することは苦手という子どもも多いでしょう。

感覚過敏によりそもそも誰がどの意見を言っているか聞き分けたり、重なる声が苦痛であるという子どももいるでしょう。

自分の考えや意見をタイムリーに言葉にすることに苦手さを感じている子どももいるかもしれません。

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発達障害の行動特性は、生まれつきの脳の機能の違いによるものです。

よって、子どもが感じている「話し合いが苦手によって伴う苦痛さ」は決して繰り返すことで慣れるようなものではないといえるでしょう。

ここでは、発達障害の子どが話し合いを苦手に感じるのは一度にたくさんの情報処理することに苦痛を感じやすいからということを確認しました。

続いて、発達障害の子どもが苦手を避けること、苦手を克服することのそれぞれのメリットについて見ていきたいと思います。

発達障害の子どもが苦手を避けること、苦手を克服することそれぞれのメリット

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発達障害の子どもを育てていると、「苦手」との付き合い方について、思い悩むことも多いでしょう。

発達障害の子どもが苦手を避けること、克服することそれぞれにメリットがあります。

メリットは以下の通りです。

<苦手を避けることのメリット>

ストレスの軽減

誰しも苦手なことに取り組もうとすると、大なり小なりストレスを感じます。

ASDの子どもの中には決めたことを完璧にしたい気持ちなどから、チャレンジや新しいことに強いストレスを感じやすいことがあります。

苦手な場面そのものを避けることで感情的な負荷を回避することができます。

自尊心や自己肯定感の保護、二次障害の予防

苦手なことを避けることにより、失敗や否定的な経験を避けることができます。

発達障害やその傾向のある子どもは自己肯定感が育まれづらく、二次障害になりやすいことが知られています。

無理をすれば苦手なこと以外にも自分の存在や生きることすべてに苦痛を感じるようになってしまうこともあります。

<苦手を克服するメリット>

新しいスキルの獲得

苦手なことに挑戦することで、子どもは新しいスキルや能力を獲得することができます。
これにより、「自分はやればできる」という自己効力感を得られるようになるかもしれません。

将来の適応力の強化

苦手なことを克服する経験は、子どもが大人になったときに大きく役立ってくれるでしょう。
柔軟性や忍耐力等が身に付くかもしれません。

上記のとおり、どちらにもメリットがあります。

教育の視点から考えると、出来ないことにチャレンジすることは価値のあることだといえるでしょう。

また、できないことを頑張ってできるようになることも多くあるでしょう。

しかし、発達障害の子どもの場合、苦手は苦手を通り越して苦痛であることも多くあります。

特性上本人の努力だけでは、頑張ってもできないと感じることも多くあるかもしれません。

苦手なことはすぐに克服することだけを目指さず、発達レベルや本人の心身の状態に合わせて、時には苦手を避ける選択も良いでしょう。

いつどんな目標設定で苦手に向き合うのかを慎重に設定したり、周囲のサポートで困りごとを解消する等1人1人に合った対処法や改善方法を考えながらサポートをしていくことが大切です。

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発達障害の子どもの苦手との付き合い方を考えていくことは、長期間にわたり根気のいることです。

家族だけで支えていくことは難しい時もあるでしょう。

そんな時は、専門家を頼ったり、療育を活用することも検討すると良いでしょう。

最後に、こどもプラスの放課後等デイサービスで提供している運動療育プログラムから「忍者開脚跳び(3段)」をご紹介します。

3段の跳び箱を2台並べて、連続で跳び越していく遊びです。

「忍者開脚跳び(3段)」

  1. 1台目を跳びます
  2. 続けて素早く2台目も跳びます。

忍者のようにできるだけ着地でも音がしないように静かに素早く跳び越すことを目指しましょう。

レベルアップをする時も、跳び箱を高くして大きなジャンプをすることだけを目指さず、素早く細かな動きをコントロールできる力を育てていき、今後の運動能力の向上にもつなげていきます。

こどもプラスでは、子ども達が自分のペースで確実にステップアップし自信をつけていけるように工夫しながら、楽しいと感じられる療育活動を大事に行なっています。

今回の記事では、発達障害の子どもが苦手を避けること、克服することそれぞれのメリットについて確認し、こどもプラスで実践している運動療育についてご紹介しました。