発達障がいグレーゾーンの療育について|困り感がない人って?
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発達障がいのグレーゾーンとは、「発達障がいの特性が見られるものの、診断基準には満たない状態」の通称です。診断名がつかないため、周囲の理解を得にくかったり、適切な支援を受ける機会が少なくなったりすることもあります。
もし、自分のこどもが「発達障がいグレーゾーン」だと言われたら、どのように対応すればよいのでしょうか?
グレーゾーンのこどもの適切な支援や療育にはどんな物があるのか気になる方も多いのではないでしょうか?
今回は発達障がいグレーゾーンのこどもに必要な支援や療育について確認していきたいと思います。
発達障がいグレーゾーンとは?発達障がいグレーゾーンの特徴
発達障がいのグレーゾーンとは、「発達障がいの特性が見られるものの、診断基準には満たない状態」の通称です。
つまり、医学的診断では発達障がいではないこどもです。
グレーゾーンのこどもについてもう少し詳しく見ていきましょう。
「DSM-5の改訂とグレーゾーンのこどもたちの支援」によると、「グレーゾーンのこども」は「保育や教育の場で不適応行動が見られるものの、診断がつかないあるいは未受診のこども」と定められています。
発達障がいグレーゾーンのこどもには、いくつかの特徴がみられることがあります。
先ほど述べたように、不適応行動がみられることがあります。
社会的なルールや適切な行動に関しての理解が曖昧な場合があり、どのような行動や選択が正しいのかを判断することが難しいためです。
また、感情のコントロールが苦手なこともあり、怒りや不安などのネガティブな感情が高まっても、それに対して適切に対処するのが難しいことがあります。
上記の傾向があるからといって、必ずしもグレーゾーンというわけではありません。
グレーゾーン特有の特性はありませんが、ADHDやASD、学習障害(LD)の特徴の一部と重なる部分があると理解しておくとよいでしょう。
そして、グレーゾーンのこどもは、早期の適切な支援や療育によって困りごとが改善しやすいことが特徴です。
なぜならグレーゾーンのこどもは、環境や成長によって特性が強く出ることもあれば、反対に特性による困りごとが気にならないことも多くあるからです。
いずれにせよ早期の適切な支援や療育により、特性や得意な環境・苦手な環境を理解でき、自分の特性とうまく付き合えることが増えるでしょう。
尚、発達障害者支援法では、発達障がいの診断基準に満たない場合でも「疑い」があれば、必要に応じて支援を受けることができる旨が記されています。
発達障がいのグレーゾーンとは、「発達障がいの特性が見られるものの、診断基準には満たない状態」の通称でした。
次に、発達障がいグレーゾーンは療育が必要か、について見ていきましょう。
発達障がいグレーゾーンは療育が必要?
発達障がいグレーゾーンのこどもは、早期の適切な支援や療育によって困りごとが改善しやすいことが特徴のため、療育などの支援は必要であると言えるでしょう。
グレーゾーンのこどもでも、困り事や支援の必要性はその子それぞれで違ってくると思います。
まずはその子の困り事をしっかり理解してあげて、どのような支援・療育が必要であるかを検討していくことが大切です。
生活での困難さや生きづらさを感じている場合は、療育などの支援を取り入れた方が良い状況と言えるでしょう。
医師から「発達障がいのグレーゾーンである」と告げられることで、不安になったり複雑な気持ちになる保護者の方も多いと思います。
また、現段階で発達障がいではないとされていても、実際に家庭や学校で困っていることがあれば、診断がないことで十分な支援が受けられないのではないか、と心配になる方もいるかもしれません。
しかし、安心してください。
発達障がいのグレーゾーンのこどもたちは、必要な支援や療育を受けることが可能な場合が多くあります。
関連記事:「ちょっと気になる」発達障害グレーゾーンの子ども達にも療育支援を。
具体的には、以下のような福祉サービスも、利用を必要とする主治医の意見とお住まいの自治体の審査に通れば、グレーゾーンのこどもも、支援や療育を受けることが可能です。
- 児童発達支援センター
- 放課後等デイサービス
- 発達障害者支援センター
もしこどもが「発達障がいグレーゾーン」と告げられることがあれば、一度上記に相談してみるのも良いでしょう。
日本の行政・福祉サービスは申請主義です。
家庭で困っている状況があるときは、まずは相談してみることで困りごとの解決に1つ近づくことがあるかもしれません。
さまざまなサポートにより、自信がつき、心の負担を軽くすることができるかもしれません。
周囲が温かく見守り、少しずつ自己肯定感を向上させ、安心できる環境を提供できるといいですね。
発達障がいグレーゾーンのこどもは、早期の適切な支援や療育によって困りごとが改善しやすいことが特徴のため、療育などの支援は必要であることを確認してきました。
では、実際に放課後等デイサービス等で提供されるグレーゾーンの療育や支援にはどのようなものがあるのか、見ていきましょう!
発達障がいグレーゾーンの療育方法とプログラム例
発達障がいグレーゾーンのこどもの関わりとしては、自己肯定感を向上させ、安心できる環境を提供できるのがとても理想的です。
根本的には、発達障がいの子どもと発達障がいグレーゾーンのこどもでも、同じ療育です。
自己肯定感を高めていくことが重要です。
では、発達障がいグレーゾーンの療育方法について詳しく見ていきましょう。
発達障がいグレーゾーンの療育方法について
先ほど述べたように根本的には、発達障がいの子どもと発達障がいグレーゾーンのこどもでも、同じ療育です。
インターネットなどでもさまざまな情報を得て、調べることはできますが、発達障がいは一人ひとりで特性や症状が異なるものなので、自分で判断するのはなかなか難しいこともあるでしょう。
療育で大切なことは、その子に寄り添った支援をしてあげることです。
どんなことに困っているのか、どんなサポートが必要なのかを見極めていく必要があります。
周囲の人は、その子どもの特性や困り事を理解して、その子ども自身に合った環境調整やサポートをしてあげることで、困り事を解消していきましょう。
放課後等デイサービスでは、一人ひとりの子どもに合った療育を提供しています。
専門のスタッフがこどもの個性を活かし、困り事を解消するために一緒に楽しく関わりをしています。
放課後等デイサービスでの療育を利用することで、自身の能力を最大限に引き出しながら、今後につながる力を一緒に育てていけるといいですね!
発達障がいグレーゾーンのこどもは、成長とともに問題が解消されることもあります。
しかし、適切なサポートが得られず自信を失ったことにより、心の負担が増えてしまうケースもあります。
そのため自己肯定感を向上させ、安心できる環境を作っていきましょう。
発達障がいグレーゾーン向けの運動療育プログラム例
今回はこどもプラスの放課後等デイサービスの教室で提供している運動療育プログラムから「スキップで記憶遊び」をご紹介します。
スキップで記憶遊びのやり方
- まず、跳び箱、平均台、鉄棒、三角コーン、フープなどを使ってコースを作っておきます。
- どんなコースで回るのか、指示を受けます。
- 指示されたコースの中をスキップしながら回ります。
※全てを回るのではなく指示された場所だけをたどってくるようにします。
例えば「平均台を渡る→跳び箱の上の赤いカップにタッチ→コーンをジグザグにスキップして戻ってくる」のように指定して行います。
指示された動きや順番をしっかり記憶して、実行することがポイントです。
移動は基本スキップですが、慣れてきたらクマ歩きやワニ歩きで移動する場所を作るなど、アレンジをすることもあります。
コースは1つだけでなく複数作ったり、こどもたちの意見を取り入れていろいろな動きをプラスしたり、楽しく遊びながら個々の育てたい力の獲得にもつながるように工夫して提供しています。
あまり難しすぎるとやる気をなくしてしまうので、少し頑張ればできる程度のレベルで個々に調整をして行いましょう。
スキップで記憶遊びの効果
この遊びは、運動能力と認知機能の向上を組み合わせた遊びです。
指示された通りに実施することで、一時的に記憶する力を鍛えることができます。
日常生活でも必要な情報を一時的に記憶し、実行するなどの場面で役立つ能力です。
また、指示通りに実施することは注意力・集中力・判断力を向上させることにもつながります。
これらの能力を向上させることで、日常生活や学校生活でも必要な能力を鍛えていくことができます。
遊びを通して楽しみながら実施することで、この成功体験が自信にも繋がります。
成功体験により自己肯定感の向上もできるため、こどもたちの成長を促していくことができるでしょう。
スキップの運動遊びをもっと知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください!
今回は、こどもプラスの放課後等デイサービスで提供している運動療育プログラム「スキップで記憶遊び」をご紹介しました。
発達障がいグレーゾーンのこどもたちの困りごとは各々違います。
早期に必要や支援や療育を受けることで、困り感が気にならなくなることも多くあります。
こどもの可能性を最大限に伸ばしてあげられるよう、一人ひとりに合った支援でサポートしていきたいものですね。
発達障がいグレーゾーンのこども療育は、自己肯定感を向上させ、安心できる環境を提供できるのがとても理想的であることを確認してきました。
次に、発達障がいだけど困り感がない?困り感の種類についてなどを見ていきましょう!
発達障がいだけど困り感がない?困り感の種類
発達障がいの診断がある方の困り感は、その方の特性と環境などによって左右されます。
周囲のサポートや環境調整により困り感の感じ方にも違いがあるでしょう。
また、環境によっては困り感に気付かないで生活をしていたり、無自覚に困っていたが気付かない、本人が困っていないが周囲は困っていたなんていうケースもあります。
発達障がいの困り感にはどのようなものがあるのか、困り感がない人はいるのか?などを詳しく見ていきましょう。
困り感の種類
発達障がいの困り感は人によって大きく異なります。
以下にどのような種類の困り感があるのかを解説していきます。
1.人間関係での困り感
- コミュニケーションや対人関係が苦手
- 相手の言っていることの真意を上手くくみ取れなかったり、周囲に合わせるのが苦手
- 相手の気持ちを読み取ることが苦手なため、友人関係が難しかったり、トラブルになりやすい
2.日常生活での困り感
- 忘れ物や物を無くすことが多い
- 片付けが苦手であったり、タスク管理やスケジュール管理が苦手
- 順序のこだわりなどにより、臨機応変に対応できない
3.社会生活(学校・仕事など)での困り感
- 優先順位を決められず、仕事などが思うように進まない
- 指示されたことを記憶できない・口頭指示だと聞き漏らしが多い
- 集中力が継続せずに、仕事などが進まなかったりミスをしてしまう
4.身体的機能での困り感
- 多動・衝動性などにより、じっとしていることが難しい
- 手先の不器用さなどで、上手く動作を行うことができない
- 疲れやすさがあり、思うように動くことができない
5.心の問題での困り感
- 感情のコントロール(怒りや不安など)ができない
- 気持ちの切り替えが苦手で、感情を安定させることが難しい
- 失敗体験などが続いたり、自分のルールが崩れると強いストレスを感じてしまう
このように、発達障がいでの困り感を感じる場面は多々あります。
もちろん人によって大きく異なるため、発達障がいだからといって全ての人に当てはまるわけではありません。
本人の特性と環境などによって大きく左右されます。
困り感がない人の特徴
発達障がいの診断があっても困り感がないという人はいます。
困り感のない人は、会社などで問題なく生活している人もいるでしょう。
例えば会社であったら、自分の特性と自然とあっていたり、居心地の良い環境であるなどの理由で、困り感が比較的少なく社会で過ごしているケースがあります。
このような場合でも、会社では上手くいっていても家庭では困り感を感じていることもあるでしょう。
環境により、困り感は変化するため、自分に合った環境が提供されているかどうかが大きく関わってきているかもしれません。
また、本当は困っているけれど自分だけではないと思っているケースもあります。
「〇〇に困っているけど、自分だけじゃないし皆同じだよね?」なんて思ったことないでしょうか?
困っているが、それを問題視していないため、自分が困っていることに気付いていないことも少なくありません。
困り感がなく生活できていることは良いことですが、環境が変わると急に困り感がでてくることもあります。
困り感がないからといって、発達障がいの特性が消えるわけではありません。
困り感のない人は、自身の特性と環境の相性がいい場合や、周囲のサポートが適切にされている場合によく見られます。
環境が自身に合っていたり、自分なりの対処法を見つけることで困り感が減ることがあります。
逆に環境の変化などで困り感が強くなることもあります。
困り感がない人が、発達障がいの特性をうまく活かして周囲のサポートも上手く得ながら、自分に合った生き方を見つけられている証拠かもしれません。
自分自身のことをまずは理解し、周囲の人も発達障がいのことを理解し、上手くサポートしながら気にしてあげられるといいですね。
困り感をなくすには
先ほど、困り感の種類や困り感がない人の特徴についてお話をしましたが、次に困り感をなくすためにはどうしたら良いかを見ていきましょう。
1.環境調整を行う
日常生活や学校・職場生活での環境を整えることが大切です。
片付けが苦手であったり、タスク管理やスケジュール管理が苦手な場合は、見える場所に予定を貼るなどして視覚的にサポートをしましょう。
次にやることが順序立って分かるようになることで、混乱を軽減することができます。
しかし、視覚的な情報が多すぎると集中できず気が散ってしまうこともあるため、できるだけシンプルに整理整頓をすることも心がけていきましょう。
2.特性(得意なこと)を活かす
発達障がいでも得意なことや好きなことがあると思います。
その特性を活かして活動することにより、集中力ややる気が続きやすくなります。
また、得意なことで成功体験を増やし自信をつけることで、ストレスの軽減にも繋がるでしょう。
3.周囲が理解しサポートをする
まずは発達障がいについて、そのこどもの特性について理解をしてあげることが大切です。
どのような特性があるのか、どのような配慮やサポートが必要であるのかを把握し、学校や職場に必要な配慮をお願いできるといいですね。
1人で抱えず、周囲のサポートを受けることも大切です。
家族や友人、学校、職場などの周囲の方と相談をして、適切な支援・サポートが受けられるようにしていきましょう。
4.心のサポートをする
無理せずに自分のペースで休める環境を作るようにしましょう。
適度に休息を取ることは、感情を安定させることにもつながります。
疲れが溜まってくると、イライラしやすくなったり、感情の起伏が激しくなることはありませんか?
自分の好きなことやリラックスできることを見つけて、ストレス解消の方法を探してみましょう。
一番大切なのは、無理をしないこと!
自分に合ったストレス解消方法やリラックス方法を見つけて、無理のないように日常生活を送っていきましょう。
このように発達障がいの診断がある方の困り感は、その方の特性と環境などによって左右されることを確認してきました。
発達障がいと上手に向き合って、困り感の少ない日常生活が過ごせるようにできるといいですね。