adhdの症状改善に役立つ療育とは?運動療育の高い効果を解説
注意欠陥・多動(ADHD)のお子様に、施設での療育を検討している保護者様もいらっしゃるでしょう。
療育には、子どもの自立や社会性の獲得を促進する効果があります。お子様の障がいに早めに気づき、療育を受けさせれば、生活上の困りごとが軽減できるでしょう。
とくに運動療育は、ADHDの子どもに高い効果を発揮します。施設のプログラムで、衝動性や多動を抑えられるかもしれません。
この記事では、ADHDの症状改善に役立つ療育の効果を説明します。お子様に療育を受けさせる意義が理解できるでしょう。
お子様の障がいが確定していない保護者様に向け、ADHDの特徴や、支援の全体像も説明します。支援方法を考える参考にしてください。
1.衝動性が強いADHDの子どもの特徴
注意欠陥・多動(ADHD)の特徴を説明します。お子様の気になる点と比較しましょう。
1-1.ADHDは注意力不足と多動が現れる発達障がい
ADHDは不注意や多動、衝動性が特徴の発達障がいです。先天的な要素が大きく、12歳以前から症状が現れます。
<ADHDの主な症状>
・集中できない
・気が散りやすい
・物をなくしやすい
・じっとしていられない
・静かに遊べない
・待てない
・ケアレスミスが多い
・期限のある約束が守れない
・物事を先延ばしにする
落ち着きがなく、物事に集中できない特性から、保育所や学校での集団生活に大きな問題を抱えます。先生から叱責され、問題児として扱われがちです。
周囲からの評価が低いため、自己肯定感が育ちません。気分の落ち込みを繰り返すことで、心の病にも結びつきやすくなります。
関連記事:『ADHDで頭の中がごちゃごちゃする原因と脳内多動を静め整理する対処法』
1-2.ADHDの子どもは見た目でわかる?
生活上の困難が多いからこそ、親は早めに障がいに気づきたいと思うでしょう。しかしADHDを見た目で判断できません。
ADHDの多くは、知的障がいやことばの遅れがありません。知識がなければ定型発達の子どもと同じに見えるでしょう。
障がいへの理解がない環境は、子どものストレスを増やすばかりです。
ただし、よく観察すれば特徴がないわけではありません。ADHDの子どもは、定型発達の子どもと比べて表情が豊かです。衝動的な感情が多く、怒りや悲しみ、喜びが顔に出ます。感情のふり幅が大きく、表情もころころ変わるでしょう。
関連記事:『ADHDと顔つきには特徴がある?発達障がいの特性を理解するポイント』
1-3.子どものADHDを判断するチェックリスト
ADHDの診断には、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM)が主に用いられます。以下は内容を平易にしたチェックリストです。お子様の状態判断にご活用ください。
<判定基準>
①〜④のすべてを満たすこと。
1.A・Bいずれかの項目、あるいは両方に6個以上該当するものがある
2.症状が6ヶ月以上続く
3.7歳未満から症状が見られる
4.家庭と学校など、複数の場面で症状が現れる
<A.注意欠陥の判定項目>
・勉強で不注意なミスが多い
・勉強や遊びを集中しておこなえず、注意が途切れる
・話しかけても聞いていないように見える
・指示を理解できるにもかかわらず、タスクが完遂できない
・勉強や課題など、持続的な努力が要されるタスクを避ける。または渋々おこなう
・必要なものを頻繁になくす
・集中しているときでも、気になるものがあれば意識が持っていかれる
・毎日おこなうルーティンを忘れてしまう
<B.多動・衝動性の判定項目>
・手足をそわそわ動かす、または椅子の上でもじもじすることがある
・座っていることを要求される状況(例:授業中)で立ち歩く
・無意味に走り回ったり、高いところに登ったりする
・静かに遊ぶことや、身体を休めることが苦手
・じっとしていられず、エンジンに動かされているような行動をとる
・しゃべりすぎることがよくある
・相手が質問している途中でいきなり回答する
・順番を待てない
・会話やゲームで、他人を妨害し邪魔する
(参照:ADHDに関連する各種の評価法 | 国立特別支援教育総合研究所)
実際にADHDの診断ができるのは医師のみです。専門医にかかって診断を受けてください。
2.ADHDの子どもを支援する方法
ADHDの子どもへの支援の流れを、保護者の立場から説明します。
<ADHDの子どもを支援する流れ>
①障がい特性を理解する。心配があればすぐに医師の診察を受ける
②家庭や学校で特性が出現しにくい環境を整える
③児童福祉施設で療育を受ける
④ペアレントトレーニングを受ける
⑤医師の判断で薬物治療を受ける
※②〜⑤は並行して進めます。
2-1.障がい特性を理解する
ADHDの特性を知らなければ、お子様に寄り添えません。障がい特性を学び、お子様の様子と見比べましょう。障がいが疑われれば、病院で診察を受けます。
2-1-1.幼い子どもの性質とADHDの特性は判別が難しい
お子様が幼いうちは、障がいを特定するのは容易ではありません。定型発達の子どもにも、ADHDと似た症状が現れるからです。
多動でなくても、幼児はいつも走り回ります。
さまざまなものに興味を示す時期でもあり、意識の散漫も起こりがちです。ころころと遊びの対象が入れ替わることは少なくありません。
おもしろそうなものがあれば、衝動的に飛びつく性質もあります。
子どもは成長過程でADHDと似た性質を示します。ADHDを見抜くポイントは、行動が年齢不相応であることです。
3歳児と同じ行動を8歳児がしていたら、障がいの疑いがあります。
2-1-2.自治体や児童発達支援センターで相談を
障がいの判断に迷ったら、専門家に相談するのが一番です。自治体の発達相談や、児童発達支援センターに問いあわせましょう。
児童発達支援センターは、地域の障がい児支援の拠点施設です。利用者だけでなく、近隣に住む保護者からの相談も受け付けています。
2-2.特性が出にくい環境を整える
ADHDの診断がおりたら、特性が出にくい環境を整えましょう。
環境づくりには、周囲の理解が必須です。学校や保育所に伝え、協力体制をつくります。先生はもちろん、友達の協力も仰げると良いでしょう。
2-2-1.学校でできる対策
学校では、
・勉強中に余計な情報が入らないよう、個別ブースを設ける
・集中が続くよう、短時間に区切りながら学習を進める
・一日のルーティンをわかりやすい場所に貼っておく(文字が読めない子どもには、イラストにする)
・伝達事項は紙に書いて伝え、何度も確認する
などの対策が有効です。
普通学級での実施が難しければ特別支援学級への移行や、通級(※)での指導をお願いします。
※通級とは、通常学級に在籍しながら、困難が生じる部分のみ個別指導を受ける形式です。小学校〜高校で実施されています。
関連記事:<a>『ADHDでは環境調整で学習面の問題が改善できることが多々あります。』(こどもプラスFCサイト)
2-2-2.家庭でできる対策
家庭では、
・持ち物を一ヶ所に集約する
・勉強をするときは、使用するテキストと筆記具以外を机に置かない
・子ども部屋にテレビの音が入らないよう配置を変える
・一日の生活スケジュールを図で示す
などの工夫ができるでしょう。
関連記事:『ADHDなどの発達障害には生活環境の調整で刺激を少なくしましょう』
2-3.児童福祉施設で療育を受ける
ADHDだと認定されたら、児童福祉施設で療育を受けましょう。未就学児は児童発達支援センターや同事業所で、小学生〜高校生は放課後等デイサービスで支援が受けられます。
療育でおこなわれるのは、困りごとの解決と障がい特性の抑制です。運動や創作など事業所ごとに工夫されたプログラムで、一人ひとりにアプローチします。
療育施設には、同じ症状を抱えた子どもがいます。友だちができ、社会性も育まれるでしょう。学校では苦手が多くても、施設では個性をのびのび発揮できます。
子ども達にとって、施設は特性を受け入れてくれる居心地の良い場所になるでしょう。
2-4.ペアレントトレーニングを受ける
療育施設に通い始めると、保護者向けの支援(ペアレントトレーニング)も受けられることがあります。子どもへの接しかたや、家庭での療育方法を、施設の指導員から学べます。
ペアレントトレーニングには、2つの役割があります。
・家庭と施設が連携して療育を進めることで、子どもへの支援効果が高まる
・保護者の悩みを解決することで、子どもが暮らす環境の改善もおこなう
とくに後者は重要です。育児の悩みが解消されれば、子どもへの姿勢が変わります。家庭の雰囲気が良くなり、子どもがより過ごしやすい環境になるでしょう。
関連記事:『発達障害児の子育てでは親の適切な関わりがとても大切です』
2-5.必要に応じて薬物治療をおこなう
ADHDは処方薬で症状を軽減させられます。状態に応じて医師から処方されます。
薬の役割は、一時的に症状を抑えることです。発達障がいは病気ではないため、薬での根本的な治療はできません。環境の整備や療育と並行することが大切です。
関連記事:『ADHDでは治療薬もありますが療育を併用することが大切です』
3.ADHDの症状改善に効果的な療育とは
ADHDの症状改善が期待できる療育の詳細を説明します。療育の開始時期を適切に見極めましょう。
通所の条件や、施設の探し方も説明します。
3-1.療育とは障がいを持つ子どもへの支援
療育とは障がいを持つ子どもへの、医学的・教育的支援です。
子ども達は障がい特性により、日常生活にさまざまな困難を抱えます。療育では困難の解決と、特性の抑制を目標にします。
療育のプログラムは個別に設定されます。入所時に児童発達支援管理責任者(療育の責任者)と保護者、利用者の3者で面談し、慎重に支援計画をつくります。
できあがった支援計画にもとづき、療育が提供される形です。一人ひとり異なるプログラムだからこそ、困難や特性に寄り添えます。
療育を進めるうちに、少しずつできることが増えていきます。仲間と過ごす経験により、コミュニケーション能力や社会性も育つでしょう。
3-2.ADHDの療育はいつから受けるべき?
ADHDの子どもへの療育の開始は、できるだけ早いほうが良いでしょう。
早いうちから障がい特性の抑制方法を身につければ、日常生活の苦労が減ります。ADHDの特性とうまく折りあいをつけ、コントロールできるようになるでしょう。
発達障がいの診断が下り、医師から療育の必要性が判断されると、意見書を書いてもらえます。
書類を自治体に提出することで、受給者証が発行され、療育が受けられる状態になります。
関連記事:『発達障害グレーゾーンの子ども達にも早期の療育が有効です』
3-3.療育手帳は必要?ADHDで療育を受ける条件
ADHDの子どもは、自治体が発行する受給者証があれば、療育を受けられます。知的障がいのある人に発行される療育手帳は必要ありません。
受給者証には1ヶ月あたりの利用上限日数と負担上限額が記されています。利用上限日数の範囲内なら、何度でも通所可能です。
通所日数は障がいの程度に応じて慎重に決定されるため、不足を感じることは少ないでしょう。
受給者証の発行には、医師の意見書が求められます。療育の希望を医師に伝え、準備してもらいましょう。
3-4.療育施設はプログラムで見極める
ADHDの障がい特性や個性にあった施設を選ぶことで、療育効果が高まります。
サービスを提供する事業所の数は年々増えており、サービス内容や質はさまざまです。お子様が気に入った施設でないと、長く続けられません。
見学に出向き、プログラムの説明を受けましょう。可能なら入所体験をすると良いでしょう。
多くの施設がホームページで療育プログラムを公開しています。日々の療育活動の様子をブログやSNSでアップする施設も増えてきました。
未就学児は児童発達支援、小学生〜高校生は放課後等デイサービスから施設をよく調べ、通所し続けられそうなプログラムのある施設を選択してください。
関連記事:『ASD、ADHD、LDでの苦手はその子に合った対策や方法を見つけることが大切です。』
4.衝動性をコントロールする運動療育とは
療育プログラムの中で、ADHDのお子様におすすめしたいのが運動療育です。
運動には、ADHDの多動を静める効果があります。集中力を高め、物事に取り組めるでしょう。遊びながら体を動かすうちに、障がい特性が克服できる可能性もあります。
4-1.軽い運動で楽しく身体を動かし遊ぶ
運動療育は、軽い運動を取り入れた療育方法です。楽しく遊びながら、心身の成長を促します。
運動療育では、すべての子どもが同じメニューを同じようにできる必要はありません。一人ひとりのペースで取り組み、少しでも成功体験を積めれば成功です。
技術の習得も、競技で勝つことも目的にしません。子ども達が楽しめる遊びであることが重要です。遊びだから継続的に実施でき、療育効果が期待できるのです。
提供するメニューは、障がい特性や発達段階にあわせて決定されます。
鉄棒では、逆上がりが目標の子もいれば、バランスの取り方を目標にする子もいます。マットの上で体を回転させるだけでも良いのです。
どのような練習でも、楽しい遊びにできるよう、ゲーム形式でチャレンジしたり、動物の動きに見立てたりと、提供の仕方が工夫されます。
4-2.運動は集中力を高め多動への療育効果がある
運動には脳を活性化させ、覚醒させる効果があります。覚醒した状態で勉強や創作に取り組むことで、集中しやすくなります。
ADHDの子どもは、多動で集中が難しい特性があります。運動は多動の子どもにも効果があります。集中力が上がり、目の前の物事に取り組みやすくなるでしょう。
運動療育をおこなった後に、勉強や創作などの静的な活動に取り組むと、高い療育効果を実感しやすくなります。
4-3.ADHDの子どもへの有効性は脳科学で証明されている
運動療育がADHDの子どもにもたらす効果は、脳科学でも証明されています。
ADHDは脳の前頭前野の機能障がいだと言われています。
前頭前野は、記憶や感情の制御、行動の抑制などさまざまな役割を担う部位です。感情や行動がうまく抑制できないため、多動や衝動的な行動が引き起こされます。
運動は前頭前野を刺激し、活性化します。機能が低下している前頭前野にも有効に働き、多動や衝動性を制御します。ADHDの特性が出にくくなり、集中力が上がります。
(参照:ADHD のある児童に対する認知リハビリテーション | 昼田源四郎)
5.運動療育で改善できるADHDの子どもへの3つの効果
運動療育がADHDの子どもにもたらす効果をまとめます。
効果は大きく3つに分類されます。運動を長期的におこなうメリットが実感できるでしょう。
5-1.トレーニングで子どもの多動や衝動性をコントロールする
運動には多動や衝動性を抑える役割があります。集中が難しいADHDの子どもでも、運動後は集中して物事に取り組みやすくなります。
集中して取り組むことで、子どもは勉強や創作など静的活動での成功体験を積めるようになります。
集中が成功を生むと実感できれば、「また集中して取り組もう」と意識づけられるでしょう。
集中への意識を持つことが、多動や衝動性のコントロールにつながります。
5-2.ADHDの子どもが悩みがちな運動能力を改善する
運動に苦手意識をもつADHDの子どもが一定数います。
技術の習得を目標としない運動療育は、苦手な子どもでも楽しく取り組めます。身体を動かしているうちに、運動能力も改善されるでしょう。
運動の苦手は、自閉スペクトラム症(ASD)や発達性協調運動障がい(DCD)の症状です。ADHDの子どもは、ASDやDCDを併発しやすいため、症状が現れます。
研究によれば、ASDとの合併率は59〜83%(※1)、DCDは55.2%(※2)です。
ADHDの子どもが運動の苦手を抱えていても、不思議はありません。運動能力改善が目的になる子どもも多いのです。
※1)以下の2019年におこなわれた講演資料を参照しています。
(参照:ADHDに関する最近の話題 | 聖マリアンナ医科大学 神経精神科学教室 小野和哉)
※注2)2007年発表の、以下の論文を参照しています。
関連記事:『発達障がいの子どもは体が固い!柔軟性を獲得し体幹をきたえる運動療育』
5-3.他人と協調する社会性が身につく
運動をとおして、他人と強調する社会性も身につきます。
ADHDの子どもは、学校で問題児扱いされることが多いため、孤立しがちです。他人と良好な関係を築きづらく、社会性の獲得やコミュニケーション能力に不自由が生じます。
運動療育のメニューには、複数人でおこなう遊びもあります。施設の友達と一緒に取り組むことで、良好なコミュニケーションが取れるでしょう。
関係を阻害する特性が発現しても、先生がすぐにフォローします。子ども達は自然と協調して遊ぶ方法を学びます。
6.放課後等デイサービス「こどもプラス」の運動療育
「こどもプラス」は、障がい特性や個性に応じたさまざまな療育を提供する児童発達支援・放課後等デイサービスの教室です。
プログラムのメインは運動療育で、他社にはない多彩な運動遊びを提供しています。
プログラムの効果は、広く認知されています。日本各地の教育委員会や学校機関、ベネッセ、ポピーなどの名だたるブランドで、弊社の運動療育が採用されてきました。
ここではこどもプラスの運動療育から、「カップタッチクマ」を紹介します。
6-1.プログラム紹介「カップタッチクマ」
「カップタッチクマ」は考えながら動く遊びで、子ども達の身体と脳を育みます。
赤、黄色、緑など複数のカップを用意します。床に間隔を空けて並べましょう。
子どもはクマのように四つん這いになりながら、並べたカップにタッチして進みます。
順調にタッチできたら、「タッチする色」「タッチしてはいけない色」を指定すると良いでしょう。難易度が上がり、楽しさが広がります。
「黄色だけタッチ」
「黄色と赤以外の色をタッチ」
「赤はタッチしてはダメ」
「ほうれん草の色をタッチ」
「赤→緑→黄色の順番にタッチ」
など、一つひとつわかりやすく指示しましょう。
難しい場合は、イラストやカードを使った指示でも良いでしょう。
成功したときは、できたことをしっかり褒め、心の成長を促しましょう。
こどもプラスが運営するInstagramアカウントでは、さまざまな運動遊びを紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
この投稿をInstagramで見る
さいごに
ADHDの症状改善には、療育が効果的です。とくに運動療育は、集中力を高める効果があります。多動や衝動性の抑制が期待できます。
医師から意見書を出してもらったら、早めに自治体に申し込みましょう。特性が出現しにくい環境を早期につくれば、子ども達の困難が軽減されます。
運動療育をご検討の保護者様は、ぜひお近くのこどもプラスにお問いあわせください。全国で190教室を展開していています。見学も可能です。
こどもプラスの運動療育は、毎月新たなメニューが加わります。楽しく遊べて、お子様を飽きさせません。
経験豊かな職員が、皆様のお越しをお待ちしております。