療育と発達支援に違いはある?混同される理由とサービス内容を解説!

こどもの発達について調べていると、「療育」「発達支援」という二つの言葉に必ずと言っていいほど出会います。
施設のホームページでも、行政の案内でも、どちらの言葉も使われているため、多くのお母さん・お父さんが混乱を感じているのではないでしょうか。
療育と発達支援の違いは、歴史的背景と法的位置づけのみで、実際のサービス内容に差はありません。
この記事では、この二つの言葉の違いについて解説します。
療育とは?発達支援との違いを歴史から理解しよう
冒頭でも触れたように、療育と発達支援の違いは、歴史的背景と法的位置づけのみで、実際のサービス内容に差はありません。
まずは、それぞれがどのように生まれ、どんな意味を持つのかを見ていきましょう。
療育の意味と歴史:1940年代から続く支援の考え方
「療育」という言葉は、「治療」と「教育」を組み合わせて作られた言葉で、1940年代から使われ始めました。
最初は主に身体に障がいのあるお子さんへの支援として始まり、単に病気を治すだけでなく、日常生活で自分でできることを増やすための様々な練習や学習を含む、幅広い支援を指していました。
時代が進むにつれて、この「療育」という考え方は対象を広げ、今では知的な発達や学習、コミュニケーションに特性があるお子さんへの支援にも使われています。
今でもこどもの発達支援を行う施設が「療育センター」と呼ばれるなど、この歴史ある言葉が広く親しまれています。
このように療育は、1940年代からの長い歴史を持つ言葉で、「治療と教育」という分かりやすいイメージがあります。
現在も現場では「発達支援」と同じ意味で使われることが多いのですが、法律で決められた厳密な定義はありません。
発達支援とは?厚生労働省が定める現在の公式用語
一方、現在の日本の障がい児支援では、「児童発達支援」という用語が厚生労働省により正式に使用されています。
「児童発達支援」は、2012年(平成24年)の児童福祉法改正により法的に定義されました。
一般的には「発達支援」と呼ばれることが多いですが、正式名称は「児童発達支援」です。
児童福祉法第6条の2の2では、児童発達支援を
「障害児につき、児童発達支援センターその他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること」
と定義しています。
現在、国の公式な用語として「児童発達支援」が使用されており、療育はその歴史的な呼び方として理解されています。
なお、令和6年7月には、支援の質の向上を図るため「児童発達支援ガイドライン」が改訂され、より詳細な支援内容や方法が示されています。
児童福祉法:https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000164
児童発達支援ガイドライン:https://www.cfa.go.jp/policies/shougaijishien/shisaku/guideline_tebiki
つまり、療育は長い歴史の中で現場の実践として使われてきた概念で、児童発達支援は国が法律で改めて公式に定義した用語ということです。
なぜ現場では混同されることが多いのでしょうか。
次に、両者が混同される具体的な理由を見ていきます。
療育と発達支援が混同される3つの理由
療育と発達支援が混同される背景には、明確な理由があります。
実際に同じ目的を持ち、現場では同じ意味で使われることが多いため、保護者の方が混乱するのも無理はありません。
ここでは、なぜこの二つの言葉が混同されやすいのか、3つの具体的な理由を解説します。
1. 支援の目的が同じ
どちらも、障がいを持つお子さんや発達に特性があるお子さんに対して、その子が自立して社会で生活できるよう支援するという、同じ目標を目指しています。
この共通の目標があるため、実際の場面では、両者が同じ意味で使われることが多いのです。
2. 療育センターという名称が残っている
児童発達支援を行う施設が「療育センター」と呼ばれるなど、施設の名前に「療育」という言葉が残っているところが多く、これが「どっちが正しいの?」という混乱を生む原因になっています。
3. 現場での使い分けが明確でない
長い間使われてきた「療育」という考え方が、より広い意味を持つ「発達支援」の中に含まれる形で使われるようになってきたという経緯も、この混乱の一因となっています。
このように、療育と発達支援は目的の共通性、施設名での「療育」の継続使用、現場での使い分けの曖昧さという3つの理由で混同されやすくなっています。
しかし、混同されがちな両者ですが、実際に受けられるサービス内容には違いがあるのでしょうか。
次に、具体的なサービス内容を詳しく見ていきましょう。
療育と発達支援のサービス内容に違いはある?
保護者の方が最も知りたいのは、療育と発達支援で実際に受けられるサービスに違いがあるかどうかでしょう。結論から言うと、現在提供されているサービス内容に大きな違いはありません。
どちらの名称を使っている施設でも、お子さんの発達を支援する同じような内容のサービスが受けられます。
未就学のお子さん向けには「児童発達支援」というサービスがあります。
このサービスでは、手洗いや食事、着替えといった毎日の生活で必要なことの練習から始まり、身体全体を使った運動や手先の細かい動きの練習、数や色の理解、お話を聞くといった認知面の支援も行います。
また、話す力を伸ばしたり相手の気持ちを理解するコミュニケーションの練習、お友達との関わり方やみんなで一緒に活動するときのルールを学ぶ社会性の支援まで、幅広くサポートしてくれます。
小学生以上のお子さん向けには「放課後等デイサービス」があります。
放課後等デイサービスでは、一人でできることを増やして「できた!」という気持ちを育てる自立支援や、工作やアートを通して表現する力や他の人と協力する力を育てる創作活動を行います。
また、いろいろな人との出会いを通して社会経験を広げる地域交流や、楽しい活動を通してリラックスしたり新しいことにチャレンジする余暇活動も大切にしています。
運動を通じた発達支援の効果
発達支援の「運動・感覚」領域において、運動は脳の発達に影響を与えることが科学的に証明されています。
特に大きな筋肉を動かすことで前頭前野が活性化し、感情コントロールや認知機能の向上につながります。
発達障がいのお子さんにとって、この前頭前野の発達促進は「生きづらさ」の軽減につながる重要な要素です。
こどもプラスでは、運動を通じた発達支援に特化したプログラムを提供しています。
成功体験を通じてお子さんの自信を育み、楽しみながら身体を動かすことが好きになるよう支援しています。
運動療育の詳しい内容については、こどもプラスの運動療育プログラムページをご覧ください。
このように、療育と発達支援では提供されるサービス内容に違いはありません。
むしろ重要なのは、名称ではなくお子さんに合った質の高い支援を提供してくれる施設を見つけることです。
では、具体的にどのような点に注意して施設を選べばよいのでしょうか。
療育・発達支援施設を選ぶ際の注意点
療育・発達支援施設を選ぶ際に最も重要なのは、名称ではなく実際の支援内容と質です。
「療育」「発達支援」のどちらの言葉を使っている施設でも、お子さんにとって最適な支援を提供してくれるかどうかを見極めることが大切です。
療育・発達支援施設選びで重要なポイント
施設を選ぶときに大切なのは、「療育」と「発達支援」のどちらの言葉を使っているかではありません。
- お子さんの特性に合った活動があるか
- しっかりとした資格を持った先生がいるか
- お子さん一人ひとりに合わせた個別支援計画を作ってくれるか
また、保護者との連絡や相談がしっかりできるか、施設の雰囲気がお子さんに合っているかなども確認しておきたいポイントです。
療育・発達支援の利用料金と費用負担
名前に関わらず、発達支援サービスの費用は全国で統一されています。
基本的に利用料の1割を保護者が負担し、収入に応じて月の上限額が決まっています。
生活保護世帯や市町村民税非課税世帯は0円、市町村民税課税世帯でも所得によって4,600円から37,200円までの上限があります。
特に3歳から5歳まで(正確には満3歳になって初めての4月1日から小学校入学まで)のお子さんは無料で児童発達支援を利用できます。
※ただし、おやつ代や遠足代などは別途必要になります。
療育・発達支援の相談窓口と申請方法
お住まいの市区町村の障がい福祉窓口が相談先になります。
サービスを利用するための受給者証の申請も、窓口で行います。
もしお子さんの発達について気になることがあれば、まずはこちらに相談してみることから始めましょう。
療育・発達支援施設の選び方から利用方法まで、名称に関わらず基本的な仕組みは同じです。
施設を選ぶときは、名前にとらわれず、実際の支援内容や先生の様子、お子さんとの相性を総合的に見て判断することをおすすめします。
※最新の情報については、各機関の公式サイトをご確認ください。