3歳の療育、いつ始める?不安を安心に変える基礎知識
発達障害3歳は、言葉や社会性がぐんと伸びる、とても大切な時期です。
それと同時に、3歳児健診などで「少し発達がゆっくりかも?」「周りの子と少し違うかも?」と、専門家への相談を勧められるケースが増えるのもこの頃です。
もし「療育(りょういく)」という言葉を聞いて不安を感じていらっしゃるなら、まずは「療育とは何か」を正しく知ることから始めてみませんか?
3歳という時期は、脳が柔軟に発達している途中にあり、適切なサポート(療育)による効果が非常にでやすい時期だと言われています。
不安や迷いを解消するためにも、まずは情報を知ることが、こどもと家族にとっての「安心」につながる第一歩となります。
3歳で療育を考えるきっかけとよくある悩み

3歳のこどもの保護者の方が「療育」を考え始めるきっかけは様々ですが、大きく分けて「健診での指摘」と「家庭での気づき」の2つがあります。
「うちの子、少し言葉が遅いかも?」「落ち着きがないのは年齢のせい?」そんなモヤモヤを抱える保護者は少なくありません。
3歳という年齢は、集団生活や健診を通じて、発達の特性が見えやすくなる時期です。
3歳児健診で指摘されやすい発達の遅れ
もっとも多いきっかけは、自治体が行う「3歳児健診」です。
3歳児健診は、身体的な成長だけでなく、精神・心理的な発達を確認する重要な機会です。
厚生労働省のデータによると3歳児健診の受診率は非常に高く、ここで何かしらの指摘を受けて専門機関を紹介されるケースが少なくありません。
【よくある指摘事項】
- 言葉の遅れ・・・二語文(「ママ、きた」など)が出ない、自分の名前が言えない。
- コミュニケーション・・・視線が合わない、指さしをしない、名前を呼んでも振り向かない。
- 行動面・・・じっとしていられない、極端な偏食がある。
健診での指摘は「診断」ではありません。
「少し丁寧な関わりが必要かもしれない」というサインです。
家庭で気づく「3歳の発達のサイン」
家庭生活の中で、「育てにくさ」や「違和感」を感じることも大切なサインです。
- 視線が合わない・・・話しかけても反応が薄い、目が合いにくい。
- こだわりが強い・・・特定の道順や手順でないと激しく泣く(パニック)。
- 感覚過敏、鈍麻・・・大きな音を極端に嫌がる、または痛みに鈍感
- 切り替えが苦手・・・あそびを終わりにするときや、次の行動に移るときに激しく抵抗する。
「3歳の個性」と「療育が必要なケース」の違い
「もう少し様子を見れば落ち着くのでは?」と悩むのは当然です。
特に3歳はイヤイヤ期の延長もあり、判断が難しい時期です。
文部科学省や専門機関では、「その特性によって、本人が困っているか、生活に支障が出ているか」を判断の基準の一つとしています。
いわゆる「グレーゾーン」と呼ばれるこどももいます。
医学的な診断名がつかなくても、「集団生活が苦手で自信をなくしている」のであれば、それは療育によるサポートが有効な場合があります。
「3歳」の発達のサインに気づき、「療育」の専門家へつながることが、親子双方の日常生活の困り感を解消するカギとなります。
3歳で療育を受けるべき?迷ったときの判断ポイント

「まだ3歳だけど、療育に行くべきか、待つべきか」
その迷いを整理するためのチェックリストと、早期療育のメリットをまとめました。
3歳から療育を検討した方がいいチェックリスト
以下のような様子が複数見られ、ご家庭での対応に難しさを感じる場合は、専門機関(自治体の発達相談窓口や児童発達支援センター)への相談をおすすめします。
| カテゴリ | チェック項目 |
| 言葉・会話 | □ 会話が成立しにくい(一方的に話す、オウム返しが多い)
□ 指示が通りにくい(「靴を持ってきて」などが伝わらない) |
| 社会性 | □ お友達に関心がない、または関わり方が極端に一方的
□ 集団活動(お遊戯や整列)に参加するのが著しく困難 |
| 行動・情緒 | □ かんしゃくが激しく、切り替えに30分以上かかる
□ 危険なこと(飛び出しなど)への理解が難しい |
※このリストは診断を行うものではありません。
早期に療育を始めるメリット
「早生まれだから」「男の子だから」と様子を見すぎてしまうことで、こどもが「失敗体験」を積み重ねてしまうリスクがあります。
3歳から療育を始める最大のメリットは「二次障害の予防」と「自己肯定感の育成」です。
- 二次障害の予防
- 「できない」と叱られることで自己肯定感が下がり、不登校やうつ状態になる「二次障害」を防ぎます。「できた!」という経験を積むことが心の安定につながります。「できた!」という経験を早期に積むことで、「自分はできる」という自信を育みます。
- 脳の可塑性(柔軟性)
- 幼児期の脳は柔らかく、吸収力があります。適切な刺激やトレーニングを受けることで、発達の凸凹を補うスキルを習得しやすい時期です。
- 親の心の安定
- 「どう接すればいいかわからない」という孤独な育児から、専門家と一緒に育てるチーム育児へと変わります。
「様子を見てもよい」3歳の発達ケース
一方で、以下のような場合は、焦らずに環境を整えながら見守ることも選択肢の一つです。
- 言葉は遅いが、こちらの言っていることは理解しており、身振り手振りで意思疎通ができる。
- 発達のスピードはゆっくりだが、先月と比べて確実にできることが増えている。
- 園の先生や家庭で適切なサポートができており、本人が楽しく過ごせている。
しかし、迷ったときは「相談する」こと自体が前進です。
3歳からの早期療育は、二次障害を防ぎ自己肯定感を育むために、迷ったときこそ前向きに検討したい選択肢の1つです。
3歳からの療育とは?内容と期待できる効果

3歳からの療育では、どのようなことが行われるのでしょうか。
「療育」といっても、一日中訓練をするわけではありません。
3歳からの療育はあそびを通じた楽しい学びの場です。
言葉や社会性に見られる3歳の療育効果
療育では、小集団や個別指導を通じて、こどもの特性に合わせたプログラムが組まれます。
①小集団療育
3~5人程度のグループで、順番を守る、挨拶をするなどの「社会性の基礎(SST)」を学びます。
②個別療育
言語聴覚士や作業療法士などが、マンツーマンで言葉の練習や手先の運動を行います。
【期待できる効果】
- 気持ちを言葉で伝えられるようになり、かんしゃくが減る。
- 「貸して」「いいよ」などのやり取りがスムーズになる。
- 着替えやトイレなどの身辺自立が進む。
幼稚園・保育園との違いと併用の仕方
・幼稚園・保育園・・・「集団生活」を楽しむ場。多くの友達と関わり、社会のルールを学ぶ。
・療育(児童発達支援)・・・その子の特性に合わせた「専門的な支援」を受ける場。苦手な部分を補い、得意を伸ばす。
多くの3歳児は、幼稚園や保育園に通いながら、週に1~2回療育に通う「並行通園」を行っています。
園と療育先が情報を共有することで、一貫したサポートが可能になります。
3歳児の療育に適した運動あそびプログラム

2歳から4歳という時期は発達の個人差が非常に大きい時期です。
同じ3歳でも、できることに大きな差があることを理解したうえで、一人ひとりのペースに合わせて提供することが重要です。
完璧にできることを目指すのではなく、楽しく体を動かす経験を積み重ねることが、この時期の運動あそびにおいて重要なポイントです。
ここでは、脳機能の向上にもつながる「こどもプラス」の運動プログラムから、3歳児におすすめの療育、あそびを紹介します。
積み木拾い
このあそびは2歳から3歳のこどもに特に適しています。
【あそび方】
色や形の違う積み木を床に散らばせておいて、大人が「赤い積み木を2つ持ってきて」といったように指示を出します。
こどもはその指示を聞いて、該当する積み木を拾って持ってくるという活動です。
【ポイントと効果】
最初は「1つ持ってきて」など数だけを指定するなど簡単なところから始めて、徐々に「赤くて四角いもの」など色や形の指定も加えていきます。
大切にしてほしいのは、お勉強のような雰囲気にならないよう、ストーリー仕立てで伝えることです。
「魔法の石を集めてきて!」などワクワクする設定にしましょう。
人の話を集中して聞こうとすることで、他者への意識が育ち、コミュニケーション力の基礎が作られていきます。
平均台あそび
昔はあそびの中で自然に習得できた力ですが、現代のこどもは機会が減っているため、意識的に提供する必要があります。
【あそび方】
3歳児には低い高さから始めることが大切です。
市販の平均台がない場合は、床にビニールテープを貼ったり、低い板を使ったりしても構いません。
【ポイントと効果】
「忍者に変身して渡ってみよう」「落ちたらワニさんに食べられちゃうぞ~」といったイメージを持たせると取り組みやすくなります。
平均台の途中で「じゃんけん」をするなど、単調にならない工夫も効果的です。
ここで養われるバランス力や体感の強さは、姿勢の保持につながり、日常生活での転倒予防や、椅子に座って集中する力にもつながる大切な能力です。
個人差の大きい3歳だからこそ、療育の視点を取り入れた運動あそびで、楽しみながら心と身体の土台を育てていきましょう。
3歳で療育を始めるときのよくある質問

最後に、3歳で療育を検討されている保護者の方から寄せられる疑問にお答えします。
実際に療育に通った3歳児の変化
個人差はありますが、「言葉が増えた」「かんしゃくが減った」「視線が合うようになった」という変化を感じる保護者が多いです。
何より、「こどもへの声かけのコツ(スモールステップ)」を親が学ぶことで、親子関係が穏やかになる効果が大きいです。
療育は「できないことを訓練させられる場所ではなく、「自分が認められる安心できる場所」です。
安心感が土台となり、様々な能力が伸びていきます。
親の体験談「不安から安心へ」
保護者の方が一人で抱え込まないための場所、それが療育施設でもあります。
よくある質問(費用・期間・幼稚園との両立)
A.前述の通り3歳~5歳のこどもは、利用料が無償化の対象です。
ただし、給食費やおやつ代などの実費は自己負担となる場合があります。
詳しくは自治体の窓口でご確認ください。
A.通える場合が多いです。
医師の診断書がなくても、自治体が発行する「通所受給者証」があれば利用できます。
自治体の窓口で相談し、必要性を認められれば取得可能です。
「困り感」があれば、まずは相談してみましょう。
A.こどもによりますが、就学前までが一般的です。
小学校入学のタイミングで卒業する子もいれば、放課後等デイサービスに移行する子もいます。
まずは「半年」など区切りをつけて目標を立てるのがおすすめです。
A.施設によっては土曜日の開所や、保育園・幼稚園への送迎サービスを行っているところもあります。
ライフスタイルに合った施設を探すことが可能です。
さいごに・・・
3歳という時期は、こどもの可能性が大きく広がる時期です。
「療育」という言葉に身構えず、「こどもの得意なことを増やし、親子の笑顔を増やす習い事」くらいの気持ちで捉えてみてはいかがでしょうか。
一人で悩まず、まずは自治体の相談窓口や、お近くの発達支援事業所に「見学」に行ってみませんか?
疑問を解消して3歳から療育をスタートすることは、こどもの成長だけでなく、保護者の方が安心して子育てに向き合える環境づくりにもつながります。

