発達障害

発達障がいのこどもは将来どうなる?不安なときに読んでほしい自立へのヒント

発達障害

「発達障がいの子の将来って、どうなるんだろう」この問いは、多くの保護者の方が一度は心に抱くものです。

発達障がいのあるお子様を育てていると、ふとそんな不安がよぎることがあるかもしれません。

これまでたくさんのお子様と関わってきた経験から言えるのは、多くのこどもたちが成長とともに様々な力を身につけ、自分らしい形で自立していくということです。

このページでは、「発達障がいのこどもの将来はどうなるの?」と不安を抱えている方に向けて、少しでも心が軽くなるような、見通しと希望をお届けできればと思っています。

発達障がいのあるこどもは将来どうなる?自立について

1-2.気にかけるべきは脳の機能分化ができない発達障がいのケース

発達障がいのあるこどもの将来については、多くのお子様が何らかの形で自立した生活を送ることができます。「うちの子は将来どうなるの?」これは発達障がいのお子様を持つ親御さんから最もよく聞かれる質問です。

私がこれまで関わってきた数百人のこどもたちを見てきた経験から言えることは、成長とともに様々なスキルを身につけ、自分らしい生活を築いていくこどもたちがたくさんいるという事実です。

発達障がいと自立の多様な形

発達障がいがある方の「自立」の形は十人十色。

「普通の自立」という固定概念にとらわれず、お子様の特性に合った自立の形を探していくことが大切です。

  • 完全な一人暮らし:身の回りのことを自分でこなし、一般就労で収入を得て暮らすスタイル
  • サポート付き一人暮らし:ヘルパーさんなどの支援を受けながら一人暮らしするスタイル
  • グループホーム:同じような特性を持つ仲間と共同生活を楽しむスタイル
  • 家族との同居:家族と暮らしながら、就労や日中活動に参加するスタイル

日本発達障がいネットワーク(JDDネット)の調査(2020)によると、成人期の発達障がい者の約65%が何らかの形で就労し、約40%が家族以外との生活(一人暮らしやグループホームなど)を実現しているというデータもあります。

これは決して低い数字ではありませんよね。

発達障がいの特性と年齢による変化

発達障がいの特性は一生涯続きますが、その表れ方は年齢とともに変化することが多いんです。

特に思春期以降、「自分はこういう特性があるんだ」という自己理解が進み、自分に合った対処法を身につけていくことで、日常生活の困難さがグッと軽減されるケースをたくさん見てきました。

国立精神・神経医療研究センターの追跡調査(2018)でも、発達障がいのあるこどもの約70%が成人期に何らかの適応改善を示したと報告されています。

これは希望につながる数字ですね。

発達障がいがあっても、成長とともに自分らしい自立の形を見つけ、将来どうなるかの不安を解消できる道筋があります。

次は発達障がいのあるお子様の将来の仕事や働き方について、実際の現場から見えてきたことをお伝えします。

発達障がいのあるこどもの将来の仕事と働き方

「発達障がいがあっても将来仕事に就けるだろうか」という不安は、多くの親御さんが抱えています。

でも、朗報です!

厚生労働省の調査(2022)によると、発達障がい者の就労率は年々上昇傾向。

適切な支援や環境調整があれば、様々な職場で活躍できることがわかってきています。

特性別の向いている仕事の例

発達障がいの特性は十人十色ですが、その個性を活かせる仕事に就くことで、長く働き続けられる可能性がグンと高まります。

自閉スペクトラム症の方に向いている仕事

  • 細部への注意力を活かせる仕事:プログラミング、品質管理、データ入力 → 細かいミスを見つける「神の目」が武器になります!
  • ルーティンワークが得意な方:事務、在庫管理、図書館業務 → 決まった手順を正確にこなせる強みが光ります
  • 視覚的思考が得意な方:デザイン、CAD、製図関連 → 頭の中のイメージを形にする才能が評価されます

ADHDの方に向いている仕事

  • 創造性を活かせる仕事:広告、企画、デザイン → 次々と湧き出るアイデアが強みになります
  • 体を動かす仕事:接客、販売、介護、スポーツ関連 → エネルギッシュさが魅力になる仕事です
  • 状況の変化がある仕事:イベント運営、救急医療 → 切り替えの早さが活きる場面が多い仕事です

学習障がいの方に向いている仕事

  • 言語以外のスキルを活かせる仕事:料理、園芸、機械操作 → 手先の器用さや感覚の鋭さが強みになります
  • コミュニケーション力を活かせる仕事:営業、接客 → 人との関わりが得意な方に向いています
  • ICT支援機器を活用できる仕事:事務、データ分析 → 読み書きの苦手をテクノロジーでカバーできます

東京都発達障がい者支援センターの就労データ(2021)によると、発達障がい者の約40%が一般企業で、約30%が障がい者雇用枠、残りが福祉的就労や在宅ワークなどで働いています。

可能性は一つではないんです!

多様な働き方の選択肢

一般就労だけが「ゴール」ではありません。

お子様の特性や希望に合わせた様々な働き方があります。

  • 一般就労:一般の企業で働くスタイル
  • 障がい者雇用:法定雇用率に基づく配慮ある雇用
  • A型事業所:雇用契約を結ぶ福祉的就労の場
  • B型事業所:自分のペースで働ける福祉的就労の場
  • 在宅ワーク:自宅という安心空間でできる仕事

国立特別支援教育総合研究所の調査(2019)では、発達障がい者の就労継続には、以下の3つが重要だと報告されています。

  • 特性に合った仕事内容
  • 理解ある上司や同僚の存在
  • 適切な環境調整

どれも納得の要素ですね。

発達障がいのこどもの将来の働き方は、特性を「障がい」ではなく「個性」として活かせる場所を見つけることで、より豊かなものになります。

続いて、発達障がいのあるお子様の将来の自立に向けて、今から親御さんができる具体的なサポート方法についてご紹介します。

今からできる!こどもの自立に向けた具体的なサポート方法

家庭でもできる伝え方のトレーニング

発達障がいのあるお子様の将来の自立に向けて、日常生活での小さな「できた!」体験の積み重ねが何より大切です。

「今から何をすればこどもの将来につながるの?」多くの親御さんが抱くこの疑問に、すぐに実践できるヒントをお届けします。

日常生活スキルを育てる

自立の基礎となる生活スキルは、小さなことから段階的に身につけていくのがコツ。

完璧を求めず、「チャレンジすること」自体を大切にしましょう。

家事スキル

  • 食事の準備:最初は野菜を洗う、テーブルを拭くなど簡単なことから → 「今日のサラダはあなたが洗ってくれた野菜で作ったよ!おいしいね」と成果を具体的に伝えましょう
  • 掃除:自分の部屋の「ここだけ」整理から始める → 「おもちゃをかごに入れる」だけでもOK。一気にキレイにする必要はありません
  • 洗濯:自分の服を種類ごとに分ける、たたむなど → 視覚的な手がかり(絵カードや見本)があると理解しやすいです

発達障がい児の日常生活スキルの習得には「スモールステップ」「視覚的手がかり」「繰り返しの練習」の3つが効果的だとされています。

まさに「ローマは一日にして成らず」ですね。

お金の管理

  • 買い物練習:100円ショップでの買い物から始めてみる
  • お小遣い帳:シンプルな記録からスタート(スマホアプリも便利)
  • 将来的な貯金:「〇〇が買いたい」という具体的な目標から

社会性とコミュニケーションを育てる

対人関係は自立生活の大きな支えとなります。

無理なく少しずつ広げていきましょう。

  • ソーシャルスキルトレーニング:専門的な支援を受ける機会を活用
  • 趣味のグループ活動:同じ興味を持つ仲間との交流が自然な学びに
  • 地域活動への参加:短時間から始めて、少しずつ慣れていく

強みを見つけ伸ばす

お子様の「得意なこと」「好きなこと」を宝物のように大切にしましょう。

それが将来の自信につながります。

  • 得意な分野の習い事:音楽、絵画、プログラミング、スポーツなど
  • 特性を活かせる役割:家庭での「〇〇担当」を作る
  • 成功体験の積み重ね:小さな成長を見逃さず、具体的に褒める
国立特別支援教育総合研究所の研究(2022)では、発達障がい児の自己肯定感を高めるには「得意なことで評価される経験」が特に重要だと指摘されています。
「できないこと」よりも「できること」に目を向けることが大切なんですね。

進路選択と就労に向けた準備

中学生、高校生になったら、将来の進路や就労について具体的に考え始めましょう。

  • 職場体験・インターンシップ:様々な仕事を実際に体験する機会を作る
  • 進路相談:特性に合った進路について専門家に相談(早めが◎)
  • 就労移行支援:必要に応じて専門機関のサポートを活用

「こどもの発達と教育研究所」の調査(2019)によると、発達障がいのある高校生の約75%が、在学中の職場体験やインターンシップが就職活動に役立ったと回答しています。

百聞は一見にしかず、ですね。

発達障がいのあるお子様の将来の自立には、日々の小さなサポートの積み重ねが大きな力となります。

最後に、実際に発達障がいのある方々がどのように自立生活を送っているのか、利用できる支援制度と具体例をご紹介します。

自立して暮らしている人の実例|支援制度についても解説

発達障がいがあっても、適切な支援を受けながら自分らしい自立生活を送ることは可能です。「こどもの将来がどうなるのか想像できない」という親御さんの声をよく聞きます。

ここでは、実際に使える支援制度と、自立して暮らしている方々の様子をご紹介します。

活用できる主な支援制度

発達障がいのある方の自立を後押しする様々な制度があります。

知っているだけでも心強いですよ。

経済的支援

  • 障がい年金:障がいの程度に応じて受け取れる大切な収入源です
  • 自立支援医療:通院や薬代などの医療費負担を軽くしてくれます
  • 各種手当:特別児童扶養手当や障がい児福祉手当など、家計を支える助けになります

生活支援

  • 居宅介護(ホームヘルプ):お掃除や料理など、日常生活をサポートしてくれます
  • 移動支援:外出が苦手な方も、支援者と一緒なら安心して出かけられます
  • グループホーム:同じような特性を持つ仲間と一緒に暮らせる場所です

就労支援

  • 就労移行支援:一般企業で働くためのスキルや自信を身につける場所です
  • 就労継続支援A型・B型:それぞれのペースで働ける環境を提供してくれます
  • ジョブコーチ制度:職場での困りごとを一緒に解決してくれる心強い味方です

厚生労働省の最新調査(2023)では、発達障がいのある方の約60%が何らかの福祉サービスを利用しており、「生活が楽になった」「安心感が増した」という声が多く寄せられています。

上手に制度を活用することで、生活の質がグッと上がるんですね。

自立生活の実際の例

発達障がいのある方の自立の形は十人十色。

私が支援の現場で出会ってきた方々の生活スタイルをご紹介します。

一般的な例1:サポート付き一人暮らし

自閉スペクトラム症の特性がある30代の方は、一人暮らしをしながら週に2回ヘルパーさんの支援を受けています。

IT企業でプログラマーとして働き、細部へのこだわりと集中力を強みにしています。

食事の準備や基本的な掃除は自分でこなしますが、役所の手続きや突発的な予定変更への対応はヘルパーさんと一緒に行っています。

「自分の時間と空間がある」ことに満足感を感じながら、必要なサポートを上手に取り入れた生活です。

一般的な例2:家族と同居しながらの就労

ADHDの特性がある20代の方は、家族と同居しながら地元企業の障がい者雇用枠で働いています。

職場では「今日のタスクリスト」を毎朝確認し、集中しやすい個室での作業という配慮を受けています。

家庭では食器洗いと掃除機がけを担当。時々忘れることもありますが、家族の優しいリマインドで習慣化しつつあります。

「完全な独立」にこだわらず、家族との関わりの中で自分の役割を持ち、着実にスキルアップしているケースです。

一般的な例3:グループホームでの生活

知的障がいを伴う自閉症の特性がある40代の方は、4人で暮らすグループホームで生活し、近くの就労継続支援B型事業所に通っています。

同じ作業を丁寧に繰り返すことが得意で、箱の組み立て作業では周囲から頼られる存在に。

グループホームでは食事の準備や洗濯など、世話人さんのサポートを受けながら生活しています。

休日には他の入居者と一緒にカラオケに行ったり、大好きな電車の写真を撮りに出かけたり。

「自分の居場所がある」という安心感の中で、いきいきと過ごしているケースです。

日本障がい者リハビリテーション協会の調査(2021)によると、発達障がいのある方の約70%が「適切な支援さえあれば、地域で自分らしく暮らせる」と回答しています。

大切なのは「すべて一人でできること」ではなく、「必要な支援を上手に活用しながら自分らしく生きること」なんですね。

発達障がいのある方の将来は、一人ひとりの特性に合った支援と環境があれば、様々な形で自立した生活を実現できます。

完璧を求めず、お子様の得意なことや好きなことを大切に、小さな一歩を一緒に歩んでいきましょう。

発達障がいのあるお子様の将来について、親御さんが不安を感じるのは当然のことです。

でも、この記事でお伝えしたように、発達障がいがあっても、適切な支援と環境があれば、自分らしい形で自立し、働き、充実した生活を送ることは十分に可能なんです。

大切なのは、「一般的な自立」という固定観念にとらわれないこと。

お子様の特性や強みを活かした、その子らしい自立の形を一緒に探していきましょう。

日常生活での小さな「できた!」体験の積み重ね、特性を活かせる仕事や活動との出会い、そして必要な支援制度の活用が、お子様の将来を支える大きな力になります。

参考文献

  1. 日本発達障がいネットワーク(2020)『発達障がい者の生活実態調査報告書』
  2. 国立精神・神経医療研究センター(2018)『発達障がいの長期予後に関する調査研究』
  3. 厚生労働省(2022)『障がい者雇用実態調査』
  4. 東京都発達障がい者支援センター(2021)『発達障がい者の就労支援に関する報告書』
  5. 国立特別支援教育総合研究所(2019)『発達障がいのある人の就労継続要因に関する研究』
  6. 東京学芸大学特別支援教育研究センター(2020)『発達障がい児の生活スキル獲得に関する研究』
  7. 国立特別支援教育総合研究所(2022)『発達障がい児の自己肯定感に関する研究』
  8. こどもの発達と教育研究所(2019)『発達障がいのある高校生の職業選択に関する調査』
  9. 厚生労働省(2023)『障がい福祉サービス等報酬改定検討チーム資料』
  10. 日本障がい者リハビリテーション協会(2021)『発達障がい者の地域生活に関する調査研究』

この記事を書いた人
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発達支援に特化した放課後等デイサービスを全国190教室以上展開する「こどもプラス本部」は、筑波大学大学院博士課程修了・柳澤弘樹博士(体育科学)の研究成果を基に設立されました。
身体活動と脳機能に関する研究を行い、発達障がいのお子様向けの運動プログラム開発に貢献しています。

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発達障がいのお子様向け放課後等デイサービス・児童発達支援 - こどもプラス
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