運動療育・運動遊び

「跳び箱の跳び降り」で姿勢作りのための筋力を養います。 放課後等デイサービスの運動療育プログラム

トランポリンを利用した運動療育 運動療育・運動遊び

「トランポリンはただの遊びの道具」そう思っていませんか?

実は、発達支援や療育の現場において、トランポリンは「感覚統合」や「体幹づくり」を助ける非常に重要な支援ツールとして位置づけられています。

こどもたちが笑顔で跳び跳ねるその裏側で、脳と体にはどのような良い変化が起きているのでしょうか。

この記事では、トランポリン療育のメリットと家庭での取り入れ方を分かりやすく解説します。

トランポリン療育とは?基本の考え方と特徴

療育施設に行くと、多くの場所でトランポリンが置かれています

これは単なる「体力づくり」以上の意味を持っています。

まずはその基本的な考え方を見ていきましょう。

療育でトランポリンが使われる理由

こどもにとって「跳ぶ」という動作は、本能的な楽しさを伴います。

療育において最も大切なのは「こどもが自発的に取り組みたくなること」です。

厚生労働省のガイドラインでも、発達支援においては「こどもの意欲を尊重し、肯定的な関わりを行うこと」が推奨されています。

トランポリンは「やらされる訓練」ではなく「やりたい遊び」として導入しやすいため、多くの施設で採用されています。

またトランポリンは、平らな地面での運動と異なり、「短時間で効率よく脳と体に強い刺激を与えられる」という特徴があります。

楽しみながら取り組めるため、こどもにとっても「訓練」ではなく「遊び」として受け入れられやすいのが最大のメリットです。

嫌々やる運動よりも、本人が「楽しい!」と感じて自発的に動くときのほうが、脳の神経回路は発達しやすいと言われています。

出典:厚生労働省「児童発達支援ガイドライン(2019年)」

トランポリン療育と感覚統合の関係

発達に特性のあるこどもの中には、体の使い方が不器用だったり、落ち着きがなかったりする子がいます。

これは脳内での「感覚の交通整理(感覚統合)」がうまくいっていないことが一因とされています。

トランポリンは、以下の2つの重要な感覚を同時に刺激します。

①前庭覚(ぜんていかく)

揺れやスピード、傾きを感じる感覚。「姿勢を保つ」「眼球運動を調整する」のに関わります。

②固有受容覚(こゆうじゅようかく)

筋肉や関節の動きを感じる感覚で、「力の入れ具合を調整する」「自分の体の位置を知る」のに関わります。

これらを遊びの中で統合していくプロセスが、トランポリン療育の核となります。

こどもに人気が高い療育活動の一つ

「療育」と聞くと身構えてしまうお子さんでも、トランポリンなら喜んで参加してくれることが多いです。

空中に飛び上がる高揚感は、脳内の快感物質(ドーパミンなど)の分泌を促し、意欲を引き出します。

成功体験を積みやすいため、自信をつけるための「最初の一歩」として選ばれることが多いのです。

このように、楽しみながら自発的に取り組める点が、トランポリン療育が多くの施設で導入されている最大の理由です。

トランポリンによる療育が効果的とされる理由

なぜ単にジャンプすることが、発達支援につながるのでしょうか。

ここからは具体的な効果を解説をしていきます。

前庭感覚・固有受容感覚を育てるトランポリン療育

トランポリンの上下運動は、脳幹網様体(脳の覚醒レベルを調整する部位)を刺激します。

  • 覚醒レベルが低い子(ぼーっとしている子)・・・リズム良い刺激で脳がシャキッとする。
  • 覚醒レベルが高い子(興奮しやすい子)・・・一定のリズム運動が、情緒を落ち着かせるセロトニン神経系に働きかける。

つまり、トランポリンは脳のコンディションを「ちょうどいい状態」に整える効果が期待できるのです。

筋力・体幹を鍛えるトランポリン療育の効果

不安定な足場でバランスを取りながら飛び続けるには、無意識のうちに「体幹(インナーマッスル)」を使います。

文部科学省の調査でも、幼児期の多様な動きが将来の運動能力に直結するとされています。

特に「姿勢保持が苦手で、椅子に座っていられない」というお子さんにとって、楽しみながら背筋や腹筋を養えるトランポリンは最適なトレーニングです。

発達性協調運動障害(DCD)… 明確な麻痺はないものの、「極端に不器用」「縄跳びやボール投げが苦手」な状態を指します。トランポリンは複雑な動きが少なく、こうした特性を持つお子さんでも取り組みやすい運動です。

注意力や情緒の安定につながるトランポリン療育の研究例

一定のリズムで体を動かす「リズム運動」は、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の分泌を促すと言われています。

情緒が不安定な時やパニックになりそうな時に、トランポリンで数分間無心に跳ぶことで、気持ちがリセットされ、落ち着きを取り戻すケースが多くの療育現場で報告されています。

身体面だけでなく精神面の安定も期待できる点が、トランポリンを用いた療育の大きな強みといえます。

どんな子にトランポリンの療育が向いているの?

トランポリンを用いた療育は、診断名(ASDやADHDなど)に関わらず、以下のような「困り感」を持つお子さんに適していると言われています。

いわゆる「グレーゾーン」のお子さんにも有効です。

言葉が遅い・落ち着きがない子への効果

  • 言葉が遅い子・・・言葉は「口の筋肉の運動」と「コミュニケーション意欲」から生まれます。全身運動で発語に必要な呼吸機能が高まるとともに、対人遊び(「せーの、ジャンプ!」など)を通じてやり取りの楽しさを学びます。
  • 落ち着きがない子・・・常に動いていないと落ち着かない子は、実は「感覚刺激(揺れや圧)」を体が欲している(感覚探求)場合があります。トランポリンで十分な刺激を満たしてあげることで、逆に日常生活での多動が減ることがあります。

運動が苦手な子どもに合うトランポリン療育

「走るとすぐ転ぶ」「ボール遊びができない」という子でも、トランポリンなら「その場でジャンプするだけ」から始められます。

失敗が少なく、「できた!」という達成感を得やすいため、運動嫌いのお子さんの最初の一歩として最適です。

慎重に考えるべきケース(感覚過敏・恐怖心・医師の判断が必要な場合)

全ての子に推奨されるわけではありません。

以下の場合は慎重な判断が必要です。

ケース 注意点・対応
極度の感覚過敏・不安 足元が揺れることを怖がる子がいます。無理強いせず、まずは手をつないで揺れるところから始めましょう。
環軸椎亜脱臼のリスク 【重要】ダウン症のお子さんなど、首の骨(環軸椎)が不安定な体質の場合、激しいジャンプは首への負担が大きく危険な場合があります。必ず整形外科等の主治医に相談してください。
てんかん発作 運動誘発性の発作がある場合や、過呼吸になりやすい場合は医師の指示を仰いでください。

個々の特性や体質を見極めて安全配慮を行うことで、トランポリンは多くの子にとって有効な療育手段となります。

療育現場でのトランポリン活用事例

実際に療育施設(児童発達支援・放課後等デイサービス)ではトランポリンはどのように活用されているのでしょうか

個別療育でのトランポリン活動例

先生とマンツーマンで行う場合、以下のような課題設定が行われます。

  • 「待つ」練習・・・先生が「よーい、どん」と言うまで跳ばずに待つ(衝動性のコントロール)。
  • 模倣(まねっこ)・・・ 先生が手を叩いたら、子供も跳びながら手を叩く(動作模倣)。
  • デュアルタスク(二重課題)・・・ 跳びながら「しりとり」をする、ボールをキャッチするなど、体と頭を同時に使う高度な練習。

集団療育でのトランポリン活動例

小集団(SSTなど)では、社会性を育むツールとして使われます。

  • 順番交代・・・ タイマーを使って「ピピっとなったら次の人に交代」。
  • 応援する・・・ 友達が跳んでいる間、周りの子が数を数えてあげる。

こどもの成功体験を増やす工夫をしよう

大切なのは「高く飛ぶこと」ではなく「楽しく体を動かすこと」です。

支援現場では、「すごいね!」「今のジャンプかっこよかったよ!」と具体的に褒めることで、子どもの自己肯定感を高めています。

これは家庭でもぜひ真似したいポイントです。

身体機能の向上だけでなく、自信や意欲を育むこともトランポリン療育の重要な役割です。

家庭でできるトランポリン療育の取り入れ方

家庭用のトランポリンも手頃な価格で普及しています。

家庭でのトランポリン活動は「療育」と気負いすぎず、「体を使った遊び」として取り入れましょう。

お家で取り入れる際のポイントを紹介します。

家庭用トランポリンの選び方(サイズ・安全ネット・耐荷重)

家庭で購入する場合は、消費者庁等の事故情報を踏まえ、安全性と静音性を重視しましょう。

チェック項目 ポイント
スプリングの種類 ゴムバンド式がおすすめ。金属バネ式より静かで、隙間に足を挟むリスクが低いです。
サイズ・耐荷重 直径100cm前後が一般的。大人が一緒に跳ぶ可能性があるなら、耐荷重100kg以上のものを。
手すり・ネット 体幹が弱い子や、飛び出しが心配な子は、手すり付きや落下防止ネット付きを選びましょう。

参考資料 出典:消費者庁『家庭用トランポリンでの事故に注意』

落下や衝突による事故を防ぐため、周囲に家具がない広いスペースを確保し、必ず保護者が見守ることが推奨されています。

家庭でできるトランポリン療育の遊び例

  • 手つなぎジャンプ・・・親子で向かい合って手を繋ぎ、一緒にリズムを取って跳びます。親子の愛着形成(アタッチメント)にも効果的です。
  • ストップ&ゴー・・・音楽が流れている間はジャンプ、音楽が止まったらピタッと止まる。「動きを止める(抑制機能)」練習になります。
  • 空中じゃんけん・・・ ジャンプして着地した瞬間に「グー」「チョキ」「パー」の足の形を作る。判断力と瞬発力を養います。

家庭でトランポリンを安全に使うための注意点

消費者庁からは、家庭用トランポリンによる転落や衝突事故への注意喚起が出ています。

  • 1人ずつ飛ぶ・・・複数人で飛ぶと、着地のタイミングがズレて衝突したり、弾き飛ばされたりする危険があります。「原則1人」を徹底しましょう。
  • 周囲の環境・・・家具や壁から離して設置し、周囲にはクッションマットを敷くなど、万が一転がり落ちても怪我をしない工夫をしてください。
  • 時間は短めに・・・ 楽しくてやりすぎてしまうことがあります。5分〜10分程度から始め、疲れすぎないように調整しましょう。

出典:消費者庁「遊戯施設におけるトランポリンでの事故にご注意ください!」

トランポリンは、発達に特性のある子どもたちにとって、楽しみながら「感覚・体・心」を整えられる素晴らしい道具です。

「療育」と難しく考えすぎず、まずは「親子で楽しく体を動かす時間」として取り入れてみてはいかがでしょうか。

その笑顔のジャンプが、お子さんの成長につながるはずです。

この記事を書いた人
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発達支援に特化した放課後等デイサービスを全国190教室以上展開する「こどもプラス本部」は、筑波大学大学院博士課程修了・柳澤弘樹博士(体育科学)の研究成果を基に設立されました。
身体活動と脳機能に関する研究を行い、発達障がいのお子様向けの運動プログラム開発に貢献しています。

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