発達障害

集団行動が苦手な小学生|授業中に立ち歩く・友達の輪に入れない子

一人で登校するこども 発達障害

「授業中に一人だけ立ち歩いてしまう」「休み時間に友達の輪に入れない」「学校行事で参加できない」

小学生のお子さんにこのような集団行動の困りごとがあると、親として「この子は発達障がいなのかもしれない」と心配になりますよね。

実は、発達障がいに関係なく、多くの小学生が集団行動を苦手と感じています。

文部科学省の調査(令和4年)によると、通常学級に在籍する児童の中で「学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされるこどもは8.8%となっており、集団行動が苦手な小学生の存在は決して珍しいことではありません。

出典元:通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について

本記事では、小学校生活で集団行動が苦手なこどもの具体的な困りごとと背景を詳しく解説します。

お子さんが安心して学校生活を送れるよう、実践的な解決策を見つけていただければと思います。

集団行動が苦手な小学生【学年別の特徴】

小学校という集団生活の場では、様々な場面で集団行動の困りごとが現れ、学年が上がるにつれてその内容も複雑化していきます。

小学校では幼稚園・保育園と比べて、より高度な集団行動スキルが求められるため、就学前は問題なく過ごせていたこどもでも新たな困難に直面することがあります。

小学校生活で現れる具体的な「苦手なこと」

授業中の「苦手なこと」

  • 一斉指示についていけない:「教科書の○ページを開いて」などの複数の指示を同時に処理できない
  • 集中が続かない:45分間の授業に集中し続けることが困難
  • 席を立ってしまう:じっと座っていることが苦手で、無意識に歩き回ってしまう
  • 発表ができない:みんなの前で手を挙げて発言することに強い不安を感じる

休み時間の「苦手なこと」

  • 友達の輪に入れない:既に形成されたグループに加わることができない
  • ルールのある遊びが苦手:ドッジボールや鬼ごっこなどの集団遊びについていけない
  • 一人で過ごすことが多い:図書室で本を読んだり、教室で絵を描いたりして過ごす

学校行事での「苦手なこと」

  • 運動会の練習についていけない:大勢での行進や演技の練習で混乱してしまう
  • 音や人の多さに疲れる:体育館での集会や発表会で感覚的な負担を感じる
  • 役割分担が理解できない:グループでの準備や係活動で自分の役割が分からない

学年別に見る集団行動の「苦手」の変化

小学校低学年(1-2年生)の特徴

「幼稚園では大丈夫だったのに、小学校に入ったらなんだか様子が変わった」と感じることはありませんか?

これは珍しいことではありません。

小学校では45分間じっと座って先生の話を聞き続ける必要があり、多くのこどもにとって大きな変化なのです。

よく見られる行動
  • 授業中にトイレに行きたがる(実際には環境からの逃避)
  • 朝の会で一人だけ立っている
  • 給食時間に一人だけ食べ終わらない

小学校中学年(3-4年生)の特徴

3年生頃になると「あれ?友達関係が前より難しくなった気がする」と感じることがあります。

こどもたちの間で仲良しグループができ始めて、お子さんが「どのグループに入ればいいか分からない」と悩むようになることも多いです。

よく見られる行動
  • グループ学習で孤立しがち
  • 係活動で役割を果たせない
  • 休み時間に一人で過ごすことが増える

小学校高学年(5-6年生)の特徴

高学年になると「みんなと違う自分が恥ずかしい」「失敗したら笑われるかも」という気持ちが強くなります。

周りの子と自分を比べて「なんで自分だけできないんだろう」と落ち込むお子さんも多く見られます。

よく見られる行動
  • 委員会活動や生徒会活動への参加を嫌がる
  • 体育の授業で積極的に参加できない
  • 修学旅行などの宿泊行事に不安を示す

これらの困りごとを抱えるお子さんは決して「わがまま」や「やる気がない」わけではありません。

お子さんなりに一生懸命頑張っているけれど、どうしたらいいか分からずに困っているのです。

お子さんの困りごとを理解することで、次は「家庭でどんなサポートができるか」を一緒に考えていきましょう。

このように、集団行動が苦手な小学生の特徴を理解することで、お子さんの現在の状況を適切に把握することができます。

なお、お子さんが就学前の場合や「発達障がいかどうかの判断基準」について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご参考ください。

発達障がいではないけれど集団行動が苦手な子|不安を解消する判断基準【2~6歳向け】
「3歳の息子が保育園の集団活動で一人だけ参加できない…これって発達障がいのサインでしょうか?」「周りの子と比べて明らかに集団行動が苦手で、将来が心配です」こういった不安や悩みを抱えている親御さんがたくさんいらっしゃいます。こどもの発達は本当...

次のステップとして、家庭でできる具体的なサポート方法を検討していきましょう。

家庭でできるサポート|家を「安心できる居場所」にする

集団行動が苦手な小学生への家庭でのサポートは、学校で疲れた心を癒し、翌日への意欲を育むことが最も重要なポイントです。

家庭は、お子さんにとって「今日も頑張ったね」と言ってもらえる一番安心できる場所です。

学校で頑張って、疲れて帰ってきたお子さんを、どう迎えてあげるかで翌日への意欲が大きく変わります。

「うちの子、みんなと違って心配」ではなく「うちの子らしさを大切にしながら、できることを増やしていこう」という気持ちでサポートしていきましょう。

帰宅後のサポートが翌日への意欲を左右します

疲れた心を受け止める効果的な声かけ

「おかえり、今日もお疲れ様」という労いの言葉から始めることをお勧めします。

無理に「今日は何をしたの?」と聞かず、お子さんが話したくなるまで待つことが大切です。

「話したいときに話してね」という安心感を与えることで、徐々に自分から学校での出来事を話してくれるようになります。

失敗を責めない受け止め方の実践

「今日、授業中に立っちゃった」という報告があっても、「だめでしょ」ではなく

「座り続けるのは疲れるよね。明日はどうしようか?」と共感的な対応を心がけましょう。

このような受け止め方をすることで、お子さんは「失敗しても大丈夫」という安心感を得られ、次への挑戦意欲を保つことができます。

小さな成功体験を積み重ねる具体的な方法

「できたこと」を見つける習慣づくり

集団行動が苦手なお子さんは、どうしても自信を失いがちです。

そこで重要なのが、日々の小さな「できたこと」を見つけて具体的に伝えることです。

「今日は最後まで席に座っていられたね」「お友だちに挨拶できていたね」など、些細なことでも認めてあげましょう。

選択権を与えることで主体性を育む

「明日の服はどれにする?」「夕食は和食と洋食、どちらがいい?」など、日常の小さな選択をこども自身に委ねることをお勧めします。

自分で決める経験を重ねることで、「自分でできる」という自信が育ち、学校でも主体的に行動する力につながります。

集団行動への練習ステップ

少人数からのステップアップ

いきなり大きな集団に参加するのは、お子さんにとって大きな負担です。

まずは1対1の関係から始めて、「親子→3人→小グループ→大きな集団」という段階を踏むことをお勧めします。

それぞれの段階で「安心して参加できた」という成功体験を積むことが重要です。

事前の見通しが安心感を生む

「明日の朝の会では○○をするよ」「給食の時間はこんな流れだよ」など、事前に活動内容を教えてあげることで、お子さんは心の準備ができます。

予測できない状況への不安が強いお子さんには、特に効果的なサポート方法です。

感覚面への配慮も忘れずに

聴覚過敏や視覚過敏があるお子さんの場合、教室の騒音や蛍光灯の明かりなどが集団行動を困難にしている可能性があります。

家庭では、音に敏感なお子さんにはイヤホンの使用を認めたり、明るい光が苦手なお子さんには部屋の照明を調整するなど、感覚面への配慮も大切です。

重要なのは、お子さんのペースを尊重し、無理強いをしないことです。

家庭での適切なサポートにより、集団行動が苦手な小学生も自信を取り戻すことができます。

それでは次に、学校との効果的な連携方法について詳しく見ていきましょう

担任教師との連携と学校でのサポート体制づくり

集団行動が苦手な小学生の学校生活を改善するためには、担任教師にお子さんの特性を理解してもらうことが重要です。

ただし、「うちの子に特別な配慮をしてください」と頼むのではなく、

「お子さんの特性を理解してもらい、一緒にサポート方法を考える」という姿勢が大切です。

先生も限られた時間の中で多くのこどもたちを見ているということを理解した上で、建設的な連携を目指しましょう。

担任の先生への相談を成功させる準備と話し方

相談前に整理しておくべき3つのポイント

1. 困っている場面を具体的に整理する

「集団行動が苦手」というあいまいな表現ではなく、「朝の会で一人だけ立っている」「グループ学習で何をしていいか分からず固まってしまう」など、具体的な場面を整理しましょう。

2. 家庭での工夫とその結果を伝える

「家では事前に活動内容を説明すると参加できます」「少人数だと問題なく活動できます」など、効果のあった方法を共有します。

3. お子さんの良い面も含めて伝える

「集中力があり、一人の作業は得意です」「優しい性格で、困っている友達に気づくことができます」など、お子さんの強みも併せて伝えることが大切です。

相談時の効果的な話し方の例

step1: 感謝から始める 「いつもお世話になっています。○○のことで相談があります」

step2: お子さんの良い面を伝える 「家では△△が得意で、こんな良いところがあります」

step3: 困りごとを具体的に説明 「ただ、□□の場面で困ることがあるようで…」

step4: 家庭での工夫を共有 「家では◇◇の方法で上手くいっています」

step5: 学校でのサポートを相談 「学校でも同じような工夫をしていただくことは可能でしょうか?」

このように段階を踏んで話すことで、先生にもお子さんの状況を理解してもらいやすくなります。

学校にお願いできる配慮とは?

比較的対応しやすい配慮例

座席の配慮 「集中しやすい席にしていただけませんか?」

例:一番前の席、窓際を避けた席、先生の近くの席など

時間の予告 「活動の切り替え時に予告をお願いできますか?」

例:「あと5分で片付けの時間です」という声かけ

選択肢の提供 「参加の仕方を選ばせていただけませんか?」

例:「見ているだけでも、一緒にやってもどちらでも大丈夫」

学校での対応が難しい場合があることを理解する

担任の先生は一人で30人以上のこどもたちを見ています。

すべての要望に応えるのは物理的に困難な場合もあります。

そんな時は「学校に全てを依存しない」という考え方が大切です。

学校・家庭・地域・専門機関それぞれの役割を理解し、バランスよくサポートを組み合わせることが、お子さんにとって最良の結果につながります。

スクールカウンセラーや特別支援教育コーディネーターとの連携

スクールカウンセラーの活用方法

多くの小学校にはスクールカウンセラーが配置されています。

お子さんの心のケアだけでなく、保護者の相談にも応じてくれます。

「集団行動が苦手で、こどもが学校を嫌がるようになった」「家庭でのサポート方法が分からない」といった相談ができます。

担任の先生とは違った専門的な視点からアドバイスをもらえるのが特徴です。

特別支援教育コーディネーターとの連携

特別支援教育コーディネーターは、校内での支援体制を調整する専門的な役割を担っています。

診断がない場合でも、「この子にはどんな支援が必要か」を一緒に考えて、担任の先生や他の先生方に具体的なサポート方法を提案してくれます。

進級時の引き継ぎなども確実に行ってくれるため、継続的な支援を受けるためには重要な存在です。

このように、集団行動が苦手な小学生の学校生活を改善するためには、周りの大人に理解をしてもらうことが大切です。

それでも困りごとが解決しない場合は、専門機関への相談も検討しましょう。

専門機関へ相談するタイミング

集団行動が苦手な小学生への専門機関への相談は、お子さんが強いストレスを感じている場合に、より良いサポート方法を見つけるための重要な選択肢です。

お子さんが苦しんでいる様子が見られたり、家庭や学校での工夫だけでは改善が見られない場合は、専門家の力を借りることも検討してみてくださいね。

「専門機関への相談」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、困ってから相談するのではなく、より良いサポート方法を見つけるための相談と考えることが大切です。

こんなサインがあったら専門機関への相談を検討しましょう

お子さんの変化に注意

身体的なサイン

  • 頭痛や腹痛を頻繁に訴える
  • 食欲がない、よく眠れない
  • 朝起きるのがつらそう

行動面のサイン

  • 学校を嫌がる、行きたがらない
  • 家でも集団的な活動(家族での食事など)を避ける
  • 以前はできていたことができなくなった

心理面のサイン

  • 「どうせ僕はダメだ」などの自己否定的な発言が増える
  • イライラしやすくなった
  • 一人でいることを極端に好むようになった

このような変化が2週間以上続く場合は、専門機関への相談を検討することをお勧めします。

相談先の選び方と活用方法

まずは身近な相談窓口から

地域の子育て支援センター 気軽な相談から始められます。

「うちの子、こんな感じなんですが…」という漠然とした相談でも大丈夫です。

専門機関の紹介もしてもらえます。

保健センター 保健師さんが発達に関する相談に応じてくれます。

必要に応じて専門機関を紹介してもらえるため、どこに相談すればいいか分からない時の最初の窓口として適しています。

より専門的な支援が必要な場合

児童発達支援センター より専門的な評価と具体的な支援方法を教えてもらえます。

お子さん一人ひとりに合った療育プログラムを受けることも可能です。

小児科・児童精神科 医学的な視点からお子さんの状態を評価してもらえます。

学校との連携体制が整っている医療機関を選ぶと、より効果的なサポートが期待できます。

相談時に準備しておくと良い情報

相談を有効活用するために、以下の情報を整理しておきましょう。

  • 困っている場面の具体例(いつ、どこで、どんな状況で)
  • 家庭や学校での工夫とその結果
  • お子さんの良いところ、得意なこと
  • 質問したいこと(事前にリストアップ)

重要なのは、一人で抱え込まず、適切な時期に適切な専門家の力を借りることです。

専門機関との適切な連携により、集団行動が苦手な小学生も大きく改善できることがあります。

最後に、お子さんの成長を見守るための長期的な視点について解説します。

長期的な視点でお子さんの成長を見守ろう

小学生の集団行動が苦手という困りごとは、「直さなければいけない問題」ではありません。

お子さんの個性の一部として受け入れ、上手に付き合っていくものです。

慎重な子は危険を察知する力があり、自分のペースを大切にする子は集中力に優れています。

3か月ごとの見直しで継続的なサポートを

支援の効果を定期的に確認し、お子さんの成長に合わせてサポート内容を調整することが重要です。

「最近、朝の会に参加できるようになった」「友達と話すことが増えた」など、小さな変化も見逃さずに記録しておきましょう。

成長の記録は、お子さん自身の自信にもつながります。

中学校進学に向けての準備

小学6年生になったら、中学校との連携も視野に入れることが大切です。

小学校での支援内容や効果的だった方法を中学校に確実に引き継ぐことで、環境変化によるストレスを最小限に抑えることができます。

最も大切なのは「自分らしさ」を認めること

大切なのは「みんなと同じ」にすることではなく、「自分らしさを保ちながら、必要な時には協力できる子」に育てることです。

お子さんのペースを尊重し、焦らずに温かく見守りながら、家庭・学校・専門機関が連携してお子さんの成長を支えていきましょう。

集団行動が苦手な小学生への支援は、お子さんの特性を認めて個性として受け入れることから始まります。

適切な理解と継続的なサポートにより、お子さんは必ず成長していくことができるでしょう。

この記事を書いた人
アバター画像

発達支援に特化した放課後等デイサービスを全国190教室以上展開する「こどもプラス本部」は、筑波大学大学院博士課程修了・柳澤弘樹博士(体育科学)の研究成果を基に設立されました。
身体活動と脳機能に関する研究を行い、発達障がいのお子様向けの運動プログラム開発に貢献しています。

発達障害
発達障がいのお子様向け放課後等デイサービス・児童発達支援 - こどもプラス
発達障がいのお子様向け放課後等デイサービス・児童発達支援 - こどもプラス