発達障害

療育を受けさせたいけど・・・健常児だったらどうする?保護者が知っておきたいこと

発達障害

「うちの子はもしかしたら普通に発達しているかもしれない。それなのに療育を受けさせても大丈夫なのだろうか?」

実際に、このような声を聞いたことがあります。

お子さんの発達で気になることがあっても、このような不安から療育に踏み出せない保護者の方は多くいらっしゃいます。

また、療育を受けていたお子さんが後に健常児だったと分かったケースについて心配される方もいらっしゃいます。

特に「グレーゾーン」と言われるお子さんの場合、判断に迷われることは当然のことです。

グレーゾーンとは、発達に気になる特徴はあるものの、はっきりとした診断には至らない状態のことです。専門的には「境界領域」と呼ばれることもあります。

この記事では、健常児の可能性があるお子さんの療育について、メリット・デメリットと療育を受けていた子が実際に健常児だった場合のその後についても解説します。

健常児でも療育を受けられる現在の制度

健常児の可能性があるお子さんでも、現在の療育制度では診断がなくても支援を受けることができます。

現在の療育制度では、お医者さんからの確定診断がなくても、療育サービスを利用することができます。

通所受給者証の取得に必要なのは、障害者手帳や診断名ではなく、「発達で気になるところがあって、療育が必要だと思われる」ことです。

専門家は、たとえ確定診断がついていない「グレーゾーン」のお子さんであっても、「日常生活での困り感」がある場合には療育が必要であると提言しています。

幼少期は脳の成長が最も活発な時期であり、この時期の「早期介入」がその後の発達に大きな影響を与えるためです。

療育の詳しい内容や制度については、療育とは何か?基本から分かりやすく解説で詳細にご説明していますので、ぜひご参照ください。

つまり、健常児かもしれないという不安があっても、お子さんに困り感があれば療育を利用することは制度上も推奨されているのです。

次に、健常児が療育を受けることで実際に得られるメリットについて詳しく見ていきましょう。

健常児が療育を受けるメリット

心・体・脳を育て生きやすさに導くこどもプラスの運動療育

健常児が療育を受けることで、社会性やコミュニケーション能力の向上など、多くのメリットを得ることができます。

すべてのこどもに有益な支援内容

療育で提供される支援は、発達に課題のあるこどもだけでなく、すべてのこどもの成長に役立つ内容をたくさん含んでいます。

具体的な支援内容

  • 着替えや食事、トイレなどの日常生活に必要な動作の指導
  • 集団生活での適応支援(順番を守る、お友達と仲良くする)
  • 社会的に自立するための訓練
  • あそびやレクリエーションを通じた集団生活への適応

これらのスキルは、将来の学校生活や社会生活で「大きな力」になってくれます。

専門家からは「得られるものはあっても、損をすることはない」という意見も出ており、療育の経験が無駄になることはないと考えられています。

こどもプラスでは、運動療育を中心としたプログラムを通じて、楽しみながらこれらのスキルを身につけることができます。詳しくは、こどもプラスの運動療育をご確認ください。

社会性とは、他の人と上手に関わっていく力のことです。挨拶をする、順番を守る、相手の気持ちを考えるといった、集団で生活するために大切なスキルを指します。

自己肯定感の育成と成功体験

療育を通じて、こどもたちは「自分にもできた」という成功体験を積み重ねる機会を多く得られます。

このような成功体験は、お子さんの自己肯定感を育む上で極めて重要です。

自己肯定感がしっかり育つと、「わたしってすごいんだ!」「ぼくっていい奴だな」と自分を前向きに捉えることができます。

すると、少し難しそうなことにも前向きにチャレンジできたり、失敗しても「もう1回やってみよう」と自分を励ましながら頑張れる気持ちにつながっていきます。

自己肯定感とは、「自分にはできる力がある」「自分は価値のある存在だ」と感じる気持ちのことです。心理学では「自己効力感」とも呼ばれ、こどもの健やかな成長に欠かせない要素とされています。

保護者への包括的サポート

療育はこどもだけでなく、お父さんお母さんへの幅広いサポートも大切にしています。

保護者への具体的な支援

  • お子さんの発達状況の共有
  • 保護者面談での相談や助言
  • こどもとの関わり方に関する具体的なアドバイス
  • 家庭での育児に役立つ知識やスキルの習得
  • 同じような境遇を持つ保護者同士の交流の機会

このような交流は、保護者が抱える不安や孤立感を軽減し、「自分だけではなかったんだ」という共感や安心感を得るための貴重な場となります。

これらの経験により、お子さんの特徴を理解して、適切にサポートするためのスキルが身につくことは大きなメリットと言えるでしょう。

このように、のちに健常児だったと判明したとしても、療育を受けることで得られるメリットは多岐にわたります。

一方で、療育施設での活動内容について知っておきたい注意点もあります。

健常児の療育における注意点:活動内容の物足りなさ

健常児が療育を受けることに大きなデメリットはありませんが、療育施設での活動内容について知っておきたい注意点があります。

療育施設での活動が物足りないと感じる可能性

療育施設では、様々な発達段階のこどもたちが一緒に活動することが多くあります。

発達で気になるところがあるこどもに合わせた活動内容やペースで進められることがあるため、健常児にとっては活動に物足りなさを感じ、十分に楽しめなかったり、成長の機会が不足していると感じたりする場合があります。

たとえば、発達がゆっくりなこどもに合わせて工作やあそびの進行速度が調整されることで、健常児には「もっと難しいことをやりたい」と感じられることがあります。

また、職員が発達支援により多くの時間を必要とするこどもへの対応に集中するため、健常児への個別の声かけや指導の時間が相対的に少なくなることもあります。

物足りなさに気づく方法と対処法

お子さんが療育で物足りなさを感じているかどうかは、以下のサインで判断できます。

  • お子さんが療育に行くのを嫌がるようになった
  • 「つまらない」「簡単すぎる」と言うことが増えた
  • 療育中にぼーっとしていることが多いと職員から聞いた
  • 家では年齢相応の活動を楽しめているのに、療育では消極的になっている

このようなサインに気づいた時の対処法

  • 施設スタッフに相談し、お子さんの発達段階に合わせた活動を検討してもらう
  • 他の療育施設の見学も検討し、より適した環境があるか確認する
  • 家庭でお子さんが興味を持つ活動を充実させる
  • 療育を一時的に休止し、様子を見ることも選択肢の一つ

このように、健常児が療育を受けることのデメリットは限定的で、お子さんの様子をよく観察することで適切に対処できます。

続いて、実際に判断に迷った時にどこに相談すれば良いのか、具体的な相談先をご紹介します。

療育を迷う時の相談先と施設選びの判断基準

自治体

療育を受けさせるかどうか迷った時は、一人で悩まず専門機関に相談することで適切な判断ができます。

療育を受けさせるかどうかについて相談できる機関

療育を受けさせるかどうか迷った時には、以下の機関に相談することができます。

  • 基幹相談支援センター:地域の相談支援の中核となる機関で、発達に関する相談を受け付けています。
  • 市区町村の窓口:障害者福祉課、こども家庭支援課などで、療育サービスに関する相談ができます。
  • 保健センター:乳幼児健診を通じて発達に関する相談を受け付けており、地域の支援機関への橋渡し役を担っています。
  • 医療機関:小児科や発達専門外来で、お子さんの発達について相談できます。

迷ったら段階的に検討しよう

いきなり本格的な療育を始めることに不安がある場合は、以下のような段階的なアプローチも可能です。

  1. まずは相談から始める:専門機関での相談や発達検査を受けて、客観的な評価を得る
  2. 短期間の体験利用:可能であれば、短期間の体験利用で様子を見る
  3. 必要に応じて本格的な利用:お子さんとご家族にとって有益と判断された場合に利用を開始

なお、療育サービスは原則1割負担で、3歳から5歳までのお子さんは無償化制度もあるため、経済的な負担について過度に心配する必要はありません。

詳しい手続きや費用については、相談時に丁寧に案内してもらえます。

お子さんの「今」を大切にした判断を

健常児の可能性があるお子さんに療育を受けさせることについて、重要なのは「今、お子さんが困っているかどうか」「サポートが必要かどうか」という現在の状況に焦点を当てることです。

療育で提供される支援は、すべてのこどもの成長に有益な要素を多く含んでおり、たとえ将来的に「特別な支援は必要なかった」と分かったとしても、その経験が無駄になることはありません。

むしろ、お子さんの社会性やコミュニケーション能力、自己肯定感の向上に大きく貢献し、その後の学校生活や社会生活の土台となります。

不安や迷いを感じた時は、一人で抱え込まず、専門機関に相談して客観的なアドバイスを求めることをおすすめします。

また、実際に施設を見学し、お子さんが楽しく参加できそうかどうかを確認することで、より適切な判断ができるでしょう。

最終的には、お子さんの個性と現在のニーズを理解し、その子にとって最適な環境を整えることが何よりも大切です。

療育という選択肢を前向きに検討しながら、お子さんの健やかな成長を見守っていただければと思います。

この記事を書いた人
アバター画像

発達支援に特化した放課後等デイサービスを全国190教室以上展開する「こどもプラス本部」は、筑波大学大学院博士課程修了・柳澤弘樹博士(体育科学)の研究成果を基に設立されました。
身体活動と脳機能に関する研究を行い、発達障がいのお子様向けの運動プログラム開発に貢献しています。

発達障害
発達障がいのお子様向け放課後等デイサービス・児童発達支援 - こどもプラス
発達障がいのお子様向け放課後等デイサービス・児童発達支援 - こどもプラス