不適応行動とは?発達障がいとの関連性について
適応行動・不適応行動という言葉を耳にしたことはありますか?
私たちは、普段の日常生活の中で、人との関わりを円滑にする行動を無意識や意識的にしていることが多いと思います。
このような行動を適応行動をいいます。
一方で、不適応行動とは適応行動と反対のことで、「一般的なルールやマナーなどにふさわしくない行為など」をいいます。
この不適応行動は、発達障がいとの関連性が指摘されることもあります。
発達障がいを持つ方の中には、感覚の過敏さや情報処理の特性から、他者との関わり方に困難を感じることが少なくありません。
その結果、周囲からは「不適応」と見られてしまう行動を取ってしまう場合があるのです。
しかし、不適応行動の背景には、その人自身が抱える特性やストレスがあることを理解することが重要です。
今回は、不適応行動と発達障がいの関連性について詳しく解説をしていきます。
不適応行動と発達障がいの関連性とは?
発達障がいを持っている人は、対人関係やコミュニケーションをとることが苦手な特性などがあり、不適応行動を引き起こしやすい傾向にあるといえます。
私たちは、普段の日常生活の中で、人との関わりを円滑にする行動を無意識や意識的にしていることが多いと思います。
その行動・行為を適応行動といいます。
例えば、「滑り台を使いたいから、順番を待つために並ぼう」 「お友達におもちゃを貸しながら一緒に遊ぶ」 「本当はこう思っているけど、あえて言う必要はないから言わないでおこう」などがあります。
また自分のこどもなどにも、適応行動をするように意識的や無意識に声かけをしているという方は多いのではないでしょうか。
一方で、不適応行動とは適応行動と反対のことで、「一般的なルールやマナーなどにふさわしくない行為等」をいいます。
例えば、「衝動的に話をしたり、順番を待てない」「約束の時間を守れない」などの行動や、パニック・他害行為・自傷行為などがあります。
簡単にいうと、人との関わりで相手の気持ちをよく理解できずに一方的に行動してしまうなどが不適応行動といえるでしょう。
発達障がいを持っている場合、その特性により、不適応行動が引き起こしやすい状態になっているといえるでしょう。
では、発達障がいの特性との関連性を見ていきましょう。
自閉症スペクトラム(ASD)と不適応行動
自閉症スペクトラム(ASD)は発達障がいの1つで、対人コミュニケーションにおける障害や、何かに固執して反復して行動する症状などがあります。
障害特性として、「コミュニケーションが苦手」「興味や行動への強いこだわりがある」など、日常生活や社会生活が困難な状態になる場合があります。
その特性のため、集団のルールを理解するのが困難であったり、その場の空気を読み取るのが苦手であるため、学校生活・社会生活において不適応行動を引き起こしていることが考えられます。
上記のように自閉症スペクトラム(ASD)では、「興味や行動への強いこだわり」「コミュニケーションによる対人関係が苦手」「自傷・他傷行為」などの不適応行動がみられることがあります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)と不適応行動
注意欠陥多動性障害(ADHD)は発達障がいの1つで、「不注意」「多動性」「衝動性」という特性を持っています。
それぞれの特性によって、見られる症状や苦手な傾向にも違いがあります。
注意力が散漫になってしまったり、社会に上手く適応できない、人間関係の構築が難しいなどの問題や不適応行動を抱えて悩むことが多々あります。
上記の障害特性から注意欠陥多動性障害(ADHD)では、「順番を待てない」「衝動的にしゃべってしまう」「落ち着きがなく、じっと座っていられない」などの不適応行動がみられることがあります。
学習障害(LD)と不適応行動
学習障害(LD)は発達障がいの1つで、知的な遅れは見られないが、学習における困難がみられる障害です。
「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算等」の能力のうち、特定の分野において困難さがみられることが特徴です。
障害特性のため、特定の分野の学習に対して苦手があるために不適応行動がみられることがあります。
学習による困難さから自信を無くしてしまい「自傷行為・他傷行為」が見られたり、パニックや興奮、こだわりなどの不適応行動がみられることがあります。
発達障がいを持つ方はこのように、障害特性の影響で不適応行動を引き起こしやすい状態なのです。
また不適応行動が見られることで、「困った人・困った子」と誤解されてしまうこともあります。
発達障がいの場合、思うようにできないことがあります。
何に困っているのか、どんな困難が隠れているのかを適切に判断し対応していくことが大切となってくるでしょう。
このように、発達障がいを持っている人は、対人関係やコミュニケーションをとることが苦手な特性などがあり、不適応行動を引き起こしやすい傾向にあるといえます。
次に、発達障がいのこどもに見られる不適応行動の行動パターンについて見てきましょう。
不適応行動と発達障がい:こどもに見られる行動パターン
発達障がいのこどもの場合、「適切な行動が分からず不適応行動をとってしまっている」ということがあります。
注意されても、どのような行動をとることが適切なのかが分からないのです。
そのため、不適応行動をとり続けてしまうことがあります。
障害特性にもよりますが、まずは適切な対応を取ったら褒めてあげるようにしましょう。
褒めることにより自信もつきやすくなります。
注目をされたいために、不適応行動を取っているケースもあります。
不適応行動を取った場合に叱ったり注意したりすることも必要ですが、叱られる=自分を見てくれている と感じ繰り返し同じ行動を取ってしまうこともあります。
状況や行動によっては「相手にしない」ことも必要となってくるでしょう。
その場合は、成功体験を増やしてあげて、褒めて気づかせてあげられるといいですね。
では、どのような場面で不適応行動が見られたり、どのような行動パターンがあるのかを詳しく見ていきましょう。
- 環境の変化に注意
- 家庭では気づきづらい!?
- 適応行動をとっているのに、不適応・過剰適応状態に?
具体的にどういったことなのか見てきましょう。
環境の変化に注意
こどもの不適応行動の場合は、新しい環境や状況に適応できずに示す行動などもあります。
例えば長期休暇後の登校拒否や友人関係の変化や孤立などです。
この場合の不適応行動には、登校拒否、引きこもり、攻撃的・暴力行為、いじめなどがあります。
私たちも長期休暇の後は、何となくふんわりした気持ちになったりやる気が起きないときがありますよね。
やる気が起きなかったり、久しぶりに会う人とのコミュニケーションが取りづらかったりした なんて経験のある方も多いのではないでしょうか。
また、新しい環境になると今までの通りにいかなかったり、先が分からず不安になるということが大人でもありますよね。
発達障がいの特性により、不適応行動が多くなり、友達からからかわれたりすることなどもあり、学校に行くのが嫌になり登校拒否をしてしまう子もいます。
環境の変化から来る不適応行動は、大人へのSOSかもしれません。
発達障がいへの理解を示した上で、コミュニケーションを取っていきましょう。
良いところや頑張っているところを見てあげて、自己肯定感を高めて自信をつけていけるといいですね。
また環境の変化で見通しのつかないことへの不安が強い場合は、ある程度見通しをつけて説明をしてあげたり、分かりやすいように表や図を作成して話をしてあげると分かりやすくなるでしょう。
大人でも不安になる環境の変化は、発達がいのこどもにとってはとてもストレスや負担になります。
身近な周囲の大人が適切なサポートができるように心がけていけるといいですね。
家庭では気づきづらい!?
発達障がいによる不適応行動は、家庭では気付きにくいことがあります。
集団生活の中(幼稚園、小学校など)で、初めて気付くことも少なくありません。
家庭では、なるべくそのこどもにとって過ごしやすい環境を親などが用意していることもありますよね。
私も家ではこども優先で考えて、ついついどんな行動でも先回りして過ごしやすいようにしてしまったり、不適応行動について意識することもないし、事前にそうならないように自然と配慮しているのかなとまで思います。
しかし、集団生活の場では、自分のやりたいことではないこともやる場面がありますし、順番を待ったり長時間座っていたりなど、我慢する時間も多くなります。
今まで自分にとって過ごしやすい環境にいたのに、いきなり思い通りにならない環境になったら誰でもストレスを感じてしまいますよね。
そのため、家庭で過ごしているときには見えてこなかった特性や不適応行動が見えてくるようになるケースがあります。
特に初めての場や環境は心のケアにも注意して見てあげ、早期発見できるように努めましょう。
適応行動をとっているのに、不適応・過剰適応状態に?
適応行動をとっているが、不適応・過剰適応状態となっているこどももいます。
過剰適応とは、自分のやりたいことや都合を我慢して、周囲に合わせて無理に頑張りすぎることを指します。
発達障がいのこどもは過剰適応になりやすい傾向にあるともいわれています。
障害特性から自己肯定感が低くなってしなったり、学校や親からの期待や圧力も原因となっています。
また、自閉症スペクトラム(ASD)の特性の場合、「興味や行動への強いこだわり」という部分で、ルールやこだわりの通りにやらないと気が済まないのです。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の場合も、自分の興味のあることは集中して没頭する傾向にあります。
その様子も周囲から見ると過剰適応と見えるでしょう。
過剰適応は、見方によると「いい子」に見える場合もありますが、こどもの心には大きなストレスや不安をかけている状態です。
過剰適応が続くと、二次障害を引き起こしたり、不適切行動へつながることもあります。
この場合、「〇〇(名前)ならできるよ」「もう少し頑張って」などの期待の言葉は、強いプレッシャーになることがあります。
出来るこどもに対して期待を込めた言葉をかけてあげたくなる気持ちはわかります。
過剰適応の場合は、期待を込めた言葉はほどほどにしてあげましょう。
自分らしくのびのびと過ごせるような環境や工夫を一緒に考えて、うまく折り合いがつけられるといいでしょう。
カウンセリングなどの専門機関を利用したり、他者に相談することも一つの方法です。
周囲の人も抱え込まずに、相談できる場所を見つけていけるといいですね。
こどもたちは日々の生活の中で少しずつ成長します。
今までできなかったことができるようになっていく姿は、見守る保護者にも元気をくれますね。
しかし、発達障がいのこどもの中には、1回チャレンジしたけどできなかったことができるようになるまでがとても困難で、時間がかかることがあります。
こどもが「頑張ってもできない」と感じると本人もとてもつらいですが、見ている保護者もつらいものです。
今見えるものだけでなく、長い目で見ていけるようになると、保護者も気楽に過ごせるようになりますね。
このように、発達障がいのこどもの場合、「適切な行動が分からず不適応行動をとってしまっている」ということがあります。
次に、発達障がいの大人に見られる不適応行動の行動パターンについて見てきましょう。
不適応行動と発達障がい:大人に見られる行動パターン
発達障がいの大人の場合、「大人になってから不適応行動や発達障がいに気付く」ということがあります。
発達障がいは、生まれつきみられる特性なので、急に大人になってから発達障がいになるということはないですが、幼少期に気付かず大人になってから気付くこともあります。
大人の発達障がいの不適応行動は、進学や就職などの社会生活・仕事で現れることが多いでしょう。
それまでは親や周囲の方のサポートがあり、特性があまり目立たず過ごしてきたが、大人になり自立するようになって困難なが顕著に現われることがあるのです。
では、どのような行動パターンがあるか、どんな点でつまづきやすいのか等を見ていきましょう。
- 自閉症スペクトラム(ASD)社会生活での不適応行動。どんなことでつまづくの?
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)社会生活での不適応行動。どんなことでつまづくの?
- 自閉症スペクトラム(ASD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)の得意なことは?
自閉症スペクトラム(ASD)社会生活での不適応行動。どんなことでつまづくの?
まず自閉症スペクトラム(ASD)では、対人コミュニケーションにおける障害や、何かに固執して反復して行動する症状などがあります。
そのため、社会生活の中で「相手の立場に立って考えることが苦手」であるケースがあります。
- 相手の気持ちを読み取ることが苦手。
- 悪気はないが、自分の発言で怒らせてしまった。なぜ相手が怒っているのかが分からない。
- 仕事で「もう少し」「適当に」などの指示をされても、曖昧な表現だと理解や判断などが難しく、対応が上手くできない。
- 好きなことに没頭してまい、他の仕事を忘れてしまう。臨機応変に対応することが苦手。
このような特性からくる不適応行動が見られると、周囲から空気が読めない等と思われてしまい、社会生活の中で生きづらさを感じてしまうこともあるでしょう。
しかし、発達障がいの特性を持っていても得意なことはあるはずです!
自分の得意な所を活かし、特性に気付き周囲からのサポートを受けることで、社会生活でのストレスが軽減できる可能性があります
障害特性での得意なことについては、後述しますのでご覧下さい。
注意欠陥多動性障害(ADHD)社会生活での不適応行動。どんなことでつまづくの?
注意欠陥多動性障害(ADHD)では、「不注意」「多動性」「衝動性」という特性を持っています。
注意力が散漫になってしまったり、社会に上手く適応できない、人間関係の構築が難しいなどの問題や不適応行動を抱えて悩むことが多々あります。
- デスクの片付け(整理整頓)が苦手。
- 注意力が散漫になり、小さなミスをしてしまう。
- 予定管理をするのが苦手で、約束や仕事を忘れてしまう。
- 物をよく無くす、忘れ物や遅刻をよくしてしまう。
このような特性から、社会生活・人間関係でのトラブルを引き起こしてしまうことがあります。
マルチタスクが苦手なため、一度にたくさんの指示をされると混乱してしまう可能性が高いです。
自閉症スペクトラム(ASD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)の得意なことは?
自閉症スペクトラム(ASD)の得意なこと
- ルールに忠実に行動できる。
- 規則的に仕事を行うことができる。
- 興味のあるものに対して高い集中力を保てる。
- コツコツ集中して物事に取り組むことができる。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の得意なこと
- 好奇心旺盛で意欲が高い。
- 興味のあるものに対して高い集中力を保てる。
- 発想力がありアイデアをだせる。
- 行動力や決断力がある。
このように発達障がいの特性からくる得意なこともたくさんありますね。
障害の有無にかかわらず、人はみんな得意なこと・苦手なことがあります。
まずは自分の特性を理解して、対策を考えることが大切です。
自分の特性から何が苦手なのかを理解し、どのようにしたらスムーズに対応できるのかを考えていきましょう。
このように、発達障がいの大人の場合、「大人になってから不適応行動や発達障がいに気付く」ということがあります。
次に、不適応行動への対応について見ていきましょう。
不適応行動への対応について
不適応行動への対応は、行動の背景を理解し、環境を整えることが重要です。
まず、不適応行動などの行動には何かしらの理由があることを理解しましょう。
目に見えている行動だけでなくその原因や背景となっていることにも目を向けてみましょう。
どんなことがどんな風に苦手なのか、どんなサポートや環境調整が必要なのか、自分自身が気づき、言葉にして伝えることはなかなか難しいことです。
周囲から見てすぐにわかる場合もあれば、自分自身の困り感の原因がなかなか特定しにくい場合もあります。
自分ではどうしようもなく、苦しんでいることも多いので、丁寧に適切に対応していくことで、不適応行動を減らしていくことができるでしょう。
試行錯誤をしたり一緒に考えながら、困り感を減らしてできることを増やしていけるように丁寧なサポートをしていけると良いでしょう。
こどもプラスの放課後等デイサービスの教室では、発達障がいを持つこどもに対して療育を提供しています。
適切な療育を行うことでも、不適切行動は減ってきます。
1人1人に一番合った方法で、自信を取り戻しながら将来につながる力をつけていけると良いですね。
発達障がいのこどもたちも、ゆっくりかもしれませんが、日々の生活の中で少しずつ成長します。
「頑張ってもできない」姿や「やらなければいけないこと」になかなか取り組もうとしない様子を見ていると、熱心な保護者ほどつらさやもやもやを感じることもあるかもしれません。
そんなときは、まずはご自身の気持ちのケアをしましょう。
その後、こどもの姿をよく観察し、困り感に寄り添っていけるといいですね。
一人で難しいときは専門家を頼るのもいいでしょう。
こどもの成長に合わせて焦らず、スモールステップでできることを増やしていくことが大切です。
発達障がいのこどもたちは、個々の理由で「やらない」のではなく「できない」ことがあるのです。
発達障がいを持つこどもには、分かりやすくシンプルな言葉で話をすることが効果的です。
何をすべきなのかすぐに理解できるよう、簡潔に具体的な言葉を使い説明をしましょう。
不適応行動は長期化すると二次障害につながることがあります。
ストレス状態が長く続くと、抑うつ的になったりパニックを起こすなどの症状が出てしまうことがあります。
大人の場合も一人で抱え込まずに、少しでも生きづらさや困難さを感じていたら専門機関へ相談をおすすめします。
相談をすることで、支援を受けられる可能性があります。
相談窓口としては、以下のような機関を上手く活用してみてください。
- ・医療機関の「精神科」、「心療内科」
医療機関では、大人の発達障がいの検査や診断を行っています。 - ・全国の発達障がい者支援センター
発達障がいのある人への支援を総合的に行う専門機関です。ご家族からの相談も可能です。 - ・発達障がいナビポータル
国が提供する発達障がいに特化したサイトです。
このように、不適応行動への対応は、行動の背景を理解し、環境を整えることが重要であることをお話しました。
障害の有無にかかわらず、皆さんが自分らしくスムーズに社会生活を送れるようになるととてもいいですね。