運動療育・運動遊び

ルールのある遊びを療育に取り入れよう!順番を待つ・切り替える力の伸ばし方

運動療育・運動遊び

「ルールのある遊びをすると、負けてかんしゃくを起こしてしまう」「お友達の順番が待てなくてトラブルになる」

こどもと遊び中で、そんな悩みを抱えることはありませんか?

「まだ早いのかな?」「無理にさせなくてもいいのかな?」と迷うこともあるかもしれません。

しかし、療育(発達支援)の現場において「ルールのある遊び」は、単なるゲームではなく、社会生活に必要な土台を育むための大切なツールとして位置づけられています。

今回は、具体的な遊びの例を交えながら、ルールのある遊びが持つ本当の意味と、家庭でもできる工夫についてご紹介します。

ルールのある遊びは療育として本当に意味があるの?

「楽しく遊ぶだけなら、ルールなんてなくてもいいのでは?」と思うかもしれません。

しかし、療育におけるルールのある遊びには、明確なねらいがあります。

「遊び」は、こどもの発達において「学習」そのものです。

特にルールのある遊びは、他者との関わりを学ぶ絶好の機会なのです。

結論|目的は勝敗ではなく「社会的なやりとり」を経験すること

こども家庭庁の『児童発達支援ガイドライン』では、発達支援の領域の1つとして「集団への参加への支援」が掲げられており、「集団に参加するための手順やルールを理解し、遊びや集団活動に参加できるよう支援する」と明記されています。

(出典:こども家庭庁『児童発達支援ガイドライン』

つまり、療育の場での目的は「勝つこと」や「ルールを完璧に守ること」ではありません。

お友達や先生と一緒に遊ぶと楽しい!という気持ちをベースに、他者と関わるためのコミュニケーションの土台(社会的なやりとり)を経験することが最大の目的なのです。

途中で負けてしまっても、ルールを間違えてしまっても、「人と一緒に何かをした」という経験が積み重なること自体に大きな意味があるのです。

なぜ必要?|順番・待つ・切り替えが育つ理由

ルールのある遊びには、集団生活で必要となる「実行機能(目標に向かって行動や感情を制御する脳の働き)」を鍛える要素がたくさん詰まっています。

具体的にどのような力が育つのか、遊びと日常生活の繋がりを整理してみましょう。

育まれる力(実行機能) 遊びの中での体験 日常生活へのつながり
衝動性のコントロール(待つ力) 「今は相手の番!」と動き出しそうな気持ちを抑えて自分の順番を待つ。 ・授業中に離席せずに座っていられる・会話の割り込みをせず順番を待てる
ワーキングメモリ(記憶する力) 「鬼にタッチされたら交代」などのルールを頭に一時的に留めながら動く。 ・先生の指示を覚えて行動に移せる・板書を書き写す(見て覚えて書く)
認知の柔軟性(切り替える力) 「逃げる役」から「追いかける役」への交代や、勝敗の結果を受け入れる。 ・急な予定変更にもパニックになりにくい・嫌なことがあっても気持ちを切り替える

このように、あそびは単なる娯楽ではなく、脳の司令塔ともいえる機能を楽しみながらトレーニングする場になるものです。

ルールのある遊びは、勝敗ではなく人との関わり方や脳の機能を育むため、療育において非常に重要な意味を持っています。

療育でいう「ルールのある遊び」ってどこまでを指す?

「ルールのある遊び」と聞くと、トランプやボードゲーム、スポーツなどを想像するかもしれませんが、療育の現場ではもっと小さなステップから始めます。

まず押さえる考え方|ルールは調整していい

遊びのルールは、参加するこどもの発達段階に合わせて大人が柔軟にアレンジして良いものです。

例えば、「鬼にタッチされたらアウト」というルールが難しければ、「鬼が近づいてきたら逃げる」だけでも立派なルールのある遊びです。

「ルールはこどもに合わせるもの」という前提を持ちましょう。

こどもの発達段階やその日のコンディションに合わせて、特別ルールを設けることは全く問題ありません。

むしろ、状況に合わせて調整する(合理的配慮の練習)という側面も持っています。

自由遊びとの違い|療育で意図的に入れるポイント

自由遊びとルールの大きな違いは、「他者の視点」が入るかどうかです。

遊びの種類 特徴 療育的な狙い
自由遊び 自分のペースで完結できる。想像力を広げる。 安心感、自己表現、没頭する力。
ルール遊び 相手の動きや順番が関係する。予測不可能なことが起きる。 他者意識、我慢する力、協調性。

療育では、自由遊びで十分に信頼関係を築いた上で、少しずつ他者の意図が介入するルール遊びを取り入れ、社会性のステップアップを図ります。

つまり療育におけるルールのある遊びとは、こどものペースに合わせてルールを調整し、他者と関わるステップを意図的に踏んでいく活動なのです。

年齢や発達段階に合わないと逆効果にならない?

発達段階に合わない高度なルールは、こどもの自信を喪失させ、遊び嫌いにしてしまうリスクがあります。

年齢や特性に応じた配慮が必要です。

段階にあったルールのある遊びについて確認していきましょう。

未就学児|ルールは1つ・大人が一緒に守る

この時期は「ルールを守る」ことよりも、「人と一緒に遊ぶ楽しさ」が優先です。

ルールは「1つだけ」にするのが鉄則です。

「ストップと言ったら止まる」「音楽が鳴ったら歩く」など、直感的に分かりやすいルールにします。また大人が一緒に参加し、ルールを守るお手本を見せることが大切です。

小学生|役割・簡単な勝敗をどう扱うか

小学生になると、少しずつ「勝ち負け」や「役割分担」が分かるようになります。

しかし、負けることに強い抵抗感(負けず嫌い、あるいは自己肯定感の低下によるパニック)を示すこどももいます。

最初から個人の勝ち負けを強調するのではなく、「みんなで協力してタイムを競う」といったチーム戦にしたり、「負けてももう1回チャンスがある」といった救済ルールを設けたりして、失敗への耐性を少しずつ育てます。また運の要素が強いゲーム(じゃんけん、サイコロなど)を取り入れ、実力不足ではないことを経験させます。

特性への配慮|発達特性による感じ方の違い

発達特性によって、遊びの中で感じる「しんどさ」は異なります。

  • ASD(自閉症スペクトラム症)傾向……急なルールの変更で混乱することがあります。事前の見通し(「今日はこういうルールで、3回やったら終わりだよ」など)を視覚的に伝えることが有効です。
  • ADHD(注意欠陥多動性障害)傾向……順ばんんを待つのが苦手で、衝動的に動いてしまうことがあります。待つ場所をテープで示したり、待っている間に短い役割(審判など)を与えたりする工夫が役立ちます。
  • DCD(発達性協調運動症)や感覚過敏……運動そのものが苦手だったり、他者と手が触れ合う(タッチされる)ことに苦痛を感じたりする場合があります。無理な参加は避け、こどもが安心できる代替案を用意します。

こどもの特性や発達段階に寄り添って柔軟に配慮することが、療育としてルールのある遊びを安全かつ効果的に進める鍵となります。

療育現場で使われるルールのあるあそび例

実際に療育の現場でよく取り入れられているルール遊びを3つピックアップし、その効果と指導のポイントをご紹介します。

ご家庭や地域活動でもアレンジして使ってみてください!

ピックアップしたあそび

①色鬼

遊びの概要

色鬼は、鬼ごっこのバリエーションの一つです。

鬼が指定した色のものにタッチしていれば「セーフ」となります。

通常の鬼ごっことは異なり、「色を探す」という要素が加わることで、より戦略的で思考を伴う活動になります。

期待できる効果

ただ逃げるだけでなく、考えながら動くため、心身をバランス良く育てます。

  • 空間認知・状況判断力……自分と友達、鬼との距離を常に測り、「次はどこへどう逃げるか」を瞬時に判断する力が大きく育ちます。
  • 瞬発力・観察力……色を瞬時に判断して探す過程で、色の認識能力や、臨機応変に方向転換する力が自然と身につきます。
  • 社会性・協調性……集団で遊ぶことで友達との距離感や関わり方を学び、ルールを守る中で公平性の感覚も育ちます。

基本的な手順

  1. 鬼を1人決めます。
  2. 鬼が「赤!」「青!」「黄色!」などと色を指定します。
  3. こどもたちは指定された色のものを探して、タッチします。
  4. 色にタッチしていれば鬼にタッチされてもセーフです。色にタッチする前に鬼にタッチされたらアウトで、次の鬼になります。

鬼は色を指定した後、「もういいかい」「まーだだよ」のやり取りをしてから追いかけ始めるなど、こどもたちが色を探す時間を確保することも大切です。

アレンジ方法

  • 難易度アップ……「赤と青の両方」「丸い形の黄色」など、条件を複雑にしてみましょう。
  • 言葉の力を育む……「りんごのような赤」「空のような青」など形容詞をつけることで、語彙力や想像力が刺激されます。
  • スピードアップ……「10秒以内に色を見つける」という時間制限を設けると、より素早い判断が求められます。

指導のポイント

  • 環境づくり……室内で行う場合は、色画用紙、色付きのカップ、折り紙などをあらかじめ配置しておくとスムーズです。
  • 段階的な色選び……色の認識がまだ十分でない場合は、簡単な色(赤、青、黄など)から始め、徐々に難しい色(オレンジ、紫、ピンクなど)へ挑戦すると無理なく楽しめます。
  • 安全への配慮……広い空間を確保し、ぶつからないよう注意を促します。興奮すると乱暴になりがちなので、事前に「優しくタッチする」「押したり引っ張ったりしない」とルールを明確にしておきましょう。

②しっぽ取りゲーム

遊びの概要

しっぽ取りゲームは、参加者が腰にしっぽ(縄やタオルなど)をつけて、お互いのしっぽを取り合う遊びです。

「自分のしっぽを守る」ことと「相手のしっぽを取る」こと、攻守両方の要素を持つ活動的な遊びです。

期待できる効果

全身を使いながら、集団での関わり方を強く養うことができます。

  • 状況判断力・先を読む力……相手の動きを予測しながら自分も動くため、思考力が育ちます。
  • コミュニケーション能力……相手との適切な距離感や関わり方を、身をもって学ぶことができます。
  • 体力づくり・敏捷性……運動量が多く、方向転換や素早い動きが求められるため、瞬発力が自然と身につきます。
  • 特性へのアプローチ:特にADHDなど多動性のあるこどもにとって、エネルギーを発散しながら社会性を学べる非常に優れた活動です。

基本的な手順

  1. まずは慣れる……全員が後ろにしっぽをつけ、しっぽの先が地面につかないように速く走る練習から始め、感覚に慣れます。
  2. 大人が見本に……指導者(大人)だけがしっぽをつけて走り、こどもたちが追いかけて取ります。「取った人が勝ち」というシンプルなルールで理解を促します。
  3. こども同士で……慣れてきたら全員がしっぽをつけ、お互いに取り合います。しっぽを取られたら座るなど、分かりやすいルールを設定しましょう。

アレンジ方法

  • 役割交代……しっぽを取った人が「次の逃げる役」になるルールにすると、役割の交代を体験でき、より複雑な社会性を学べます。
  • チーム戦……色の違うしっぽをつけてチーム戦にすることで、チームワークや協力の大切さを学べます。

指導のポイント

  • 安全への配慮……走り回るため広い空間の確保は必須です。衝突には十分に注意しましょう。
  • ルールの徹底……興奮のあまり力加減が難しくなることがあるため、「優しく取る」「押したり引っ張ったりしない」というルールを事前にしっかり約束することが大切です。

③○×グーパー

遊びの概要

大人が出すクイズに対して、体を使って「○」か「×」で答える遊びです。

頭での判断と身体表現を組み合わせた、楽しみながら学べる活動です。

期待できる効果

「聞いて理解する→判断する→体で表現する」という一連の流れを経験できます。

  • 総合的な理解力……クイズの内容を理解し、正誤を判断する過程で、集中力や判断力が育ちます。
  • 身体コントロール・表現力……「○は手足を大きく開いてパー」「×は手足を閉じてグー」と全身を使うため、自分の体を思い通りに動かす力が身につきます。
  • 社会性・協調性……グループで行うことで、正解を喜び合ったり、間違いを笑い合ったりしながら、コミュニケーション能力が育ちます。

基本的な手順

  1. 指導者が簡単なクイズを出します。(例:「リンゴは果物ですか?」「空は緑色ですか?」など、こどもの年齢や理解度に合わせます)
  2. 答えが「○」だと思ったら、手足を大きく開いてパーのポーズをします。
  3. 答えが「×」だと思ったら、手足を閉じてグーのポーズをします。

アレンジ方法

  • ポーズの変更……「○は星のポーズ、×はしゃがむ」など、表現方法にバリエーションを持たせると飽きずに楽しめます。
  • 学習要素のプラス……算数や国語の問題、季節や行事に関する問題などを取り入れると、知識の定着にも役立ちます。

指導のポイント

  • 安心できる雰囲気づくり……「間違えてもいいんだよ」「考えることが大切だよ」と声かけをし、間違えることを恐れずに参加できる環境を作りましょう。
  • スモールステップ……最初は全員が確実に分かる問題から始め、徐々に難易度を上げていくと、「できた!」という達成感を感じながらレベルアップできます。

このように、療育の現場で使われるルールのある遊びは、楽しみながらこともたちの心身と社会性をバランス良く育む工夫が詰まっています。

ルールを守れず混乱するときはやめた方がいい?

ルールのある遊びでパニックになったり、頑なにルールを拒否したりすることもあります。

「うちの子にはまだ無理だった」と諦める前に、その背景を探ってみましょう。

考え方|「できない」の背景を探る

こどもがルールを守れないのは、決してわがままや性格のせいではありません。多くの場合、「理解」「不安」「感覚」のどこかにつまづきがあります。

発達支援において大切なのは、表面的な「ルールを破った」「癇癪を起こした」という行動だけを見るのではなく、その奥にある「なぜそうしてしまったのか?」という理由を探ることです。

よくある理由|理解・不安・感覚面のつまずき

こどもがルールのある遊びで混乱する背景には、以下のような理由が隠れていることが多いです。

理由 こどもの心の中 対応のヒント
理解不足 「口で言われてもイメージできない…」 図や絵を使ってルールを可視化する。一度大人がやってみせる。
不安・恐怖 「負けたらどうしよう」「鬼が怖い」「いつ終わるかわからない」 鬼は歩くスピードにするなど怖さを減らす。負けても次は勝てるかもと見通しを伝える。
感覚過敏 「みんなの声がうるさい」「触られるのが嫌」 耳栓(イヤーマフ)を使う。接触の少ない遊び(だるまさんが転んだ等)に変える。

対応例|ルールを減らす・選ばせる・一部参加

混乱してしまった時は、無理に参加させ続ける必要はありません。

ただ、遊びをやめてしまうのではなく、どうしれば参加できるかを調整して成功体験につなげていきましょう。

  1. ルールを極限まで減らす……「鬼にはならない」「逃げるだけ」など、こどもができるレベルまでハードルを下げます。
  2. 役割を選ばせる……「走るのが嫌なら、ストップウォッチを押す係(審判)をやっている?」と、無理なく参加できるポジションを提案します。
  3. クールダウンの場所を作る……「しんどくなったら、この青いマットの上で休んでいいよ」と、事前に逃げ場を用意しておくことで、安心して参加できるようになります。

ルールのある遊びは、少しの工夫と大人の寄り添いがあれば、こどもの社会性を大きく伸ばすことができます。

焦らず、こどものペースで「みんなと遊ぶと楽しい!」という経験を積み重ねていけるといいですね。

混乱したときこそ療育の視点を持ち、やめてしまうのではなく、こどもが安心できる形でルールのある遊びに参加できるようサポートしていきましょう。

この記事を書いた人
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発達支援に特化した放課後等デイサービスを全国190教室以上展開する「こどもプラス本部」は、筑波大学大学院博士課程修了・柳澤弘樹博士(体育科学)の研究成果を基に設立されました。
身体活動と脳機能に関する研究を行い、発達障がいのお子様向けの運動プログラム開発に貢献しています。

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