運動療育・運動遊び

感覚統合を育てるあそび!療育・保育で使えるアイデアまとめ

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私たちは毎日、音や光、におい、触った感じなど、いろいろな刺激を受けながら生活しています。

こうした刺激を感じ取る力には、目や耳などの「五感」だけでなく、体のバランスをとったり、手足の動きを感じたりする力も含まれます。

これらの感覚がうまく整理されないと、びっくりしやすかったり、落ち着きにくかったり、動きがぎこちなくなることがあります。

特に発達に特性のあるこどもたちは、その影響が出やすいといわれています。

そこで注目されているのが「感覚統合あそび」です。

楽しみながら体を動かすことで、いろいろな感覚をバランスよく育てていく方法です。

この記事では、家庭や保育の場でできる「感覚統合 あそび」のアイデアをわかりやすく紹介します。

こどもの成長を支える「感覚統合」とは

感覚統合とは、私たちの体が受け取るさまざまな感覚情報を脳が整理して、適切な行動につなげる力のことです。

この能力は生まれつき備わっていますが、こどもの成長過程で適切なあそびや経験を通して発達していきます。

感覚統合って何?

感覚統合は、アメリカの作業療法士エアーズ先生が提唱した考え方です。

簡単に言うと、「周りの世界からの情報を受け取り、脳で処理して、適切に反応できるようにする力」のことです。

たとえば、お子さんが公園のジャングルジムで遊ぶとき

  • 手や足で触れた感覚(冷たい、固い)を感じ取る
  • 体の位置や動きを感じながらバランスをとる
  • これらの情報を脳が整理して「次はどこに手をかけよう」と判断する

これが感覚統合の一例です。

こどもの発達に大切な3つの感覚

特に大切なのは次の3つの感覚です。

触覚:皮膚で感じる触れる感覚

例:砂や粘土の感触、抱っこされる心地よさ

前庭覚:体の動きや姿勢を感じる感覚

例:ブランコやすべり台で感じるスピード感、回転する感覚

固有受容覚:筋肉や関節から得る体の位置感覚

例:目を閉じていても、腕や足がどこにあるか分かる感覚

これらは「隠れた感覚」とも呼ばれ、普段はあまり意識しませんが、こどもの発達の土台となる大切な感覚です。

こどもの成長にどう影響するの?

感覚統合の力は、お子さんの様々な面の発達を支えています。

  • 体の動き:座る、立つ、走る、ボタンをとめるなど
  • 言葉の発達:お口の動き、人の話を聞き取る力
  • 学習する力:集中力、記憶力、問題を解決する力
  • 友達との関わり:気持ちの安定、相手の気持ちを理解する力

研究によると、発達に特性のあるお子さんの多くは、感覚の処理の仕方に独自の特徴があることが分かっています。

適切なあそびや環境を整えることで、こどもたちの生活や学習がぐっと楽になることがあります。

例えば、「じっと座っていられない」お子さんが、休み時間に十分体を動かすあそびを取り入れることで、授業中の集中力がアップしたケースもあります。

感覚統合とは、こどもが周りの世界を理解し、うまく対応していくための基本の力です。

次の章では、感覚統合と発達障がいの関係性について、具体的にお話しします。

感覚統合と発達障がいの関係性

感覚統合の課題は、発達障がいのあるこどもたちによく見られる特性です。

感覚統合がうまく機能しないと、日常生活や学習面でさまざまな困りごとが生じることがあります。

感覚統合の課題があるときの様子

感覚統合に課題のあるこどもは、こんな特徴が見られることがあります。

  • 姿勢が安定せず、じっと座っていられない
  • 不器用さ(ボタンかけや靴ひもを結ぶなどの細かい作業が苦手)
  • 特定の音や光、触感に敏感に反応する
  • 危険を感じにくい行動(高いところに登る、飛び降りるなど)
  • 新しい場所や状況に慣れるのが難しい

こどもたちの多くが日常生活で感覚に関する何らかの困りごとを経験していることがわかっています。

自閉症スペクトラムやADHDと感覚統合の関係

自閉症スペクトラムのこどもと感覚統合

自閉症スペクトラムのこどもの多くは、感覚の処理に特徴があります。

特に次のような様子が見られます。

  • 特定の音(掃除機、ハンドドライヤーなど)に耳をふさぐ
  • 特定の食べ物(トロトロ、パサパサなど)を食べられない
  • 服のタグや縫い目が気になる
  • 明るい光や特定の色、模様に反応する

ADHDのこどもと感覚統合

ADHDのこどもも、感覚処理に課題があることが多いです。

特に体の動きや位置に関する感覚の処理に特徴が見られます。

  • たくさん動き回る(体の感覚を確かめている可能性)
  • 椅子に座っていても体が傾いたり、ゆれたりする
  • 力加減の調整が難しい(ドアを強く閉める、友達を強く叩くなど)

感覚が敏感すぎる・鈍感すぎる場合

感覚が敏感すぎる場合

普通の刺激でも「強すぎる!」と感じてしまう状態です。

例えば:

  • 洋服のタグが肌に触れるだけでとても不快に感じる
  • スーパーや教室の音や声でパニックになる
  • 特定の食感(ネバネバしたものなど)を受け付けない

感覚が鈍感すぎる場合

普通の刺激では「物足りない」と感じてしまう状態です。

例えば:

  • 痛みに気づきにくい(転んでも平気)
  • ずっと体を揺らしたり、回ったりしている
  • 人や物にぶつかる、強く抱きしめるなどの行動

一人のこどもが、ある感覚には敏感で、別の感覚には鈍感というケースも多くあります。

たとえば、音には敏感だけど、体の位置感覚は鈍いという場合などです。

日常生活での気づくポイント

こどもの感覚統合の課題に早めに気づくために、こんな様子に注目してみましょう。

  • 特定の食べ物を極端に嫌がる
  • 特定の音(掃除機、ハンドドライヤーなど)を極端に嫌がる
  • 服の素材や縫い目、タグなどに敏感
  • 手先が不器用(はさみの使用、ボタンかけなどが難しい)
  • 姿勢が崩れやすい、椅子から落ちそうになる
  • じっとしていられない
  • 友だちとぶつかりやすい、力加減の調整が難しい

感覚統合の課題に早めに気づいて対応することで、「自分はダメだ」と思ってしまうことや、学ぶ意欲が下がるなどの二次的な問題を防げる可能性が高まります。

感覚統合の課題と発達障がいは深く関係していますが、適切なサポートにより、こどもたちの生活は大きく改善できます。

次の章では、感覚別に実践できる感覚統合の遊びの例をご紹介します。

感覚別!実践できる感覚統合あそびアイデア集

感覚統合あそびは、こどもの様々な感覚を刺激することで脳の発達を促します。

それぞれの感覚に適したあそび方を知ることで、効果的にこどもの発達をサポートできます。

以下では、感覚別の具体的なあそびのアイデアをご紹介します。

前庭覚を育てるあそび

前庭覚は、体のバランスや動きを感知する感覚です。

この感覚を刺激するあそびは、こどもの姿勢制御や空間認識能力の発達に効果的です。

ブランコあそび

準備するもの: 公園のブランコや室内用のハンモック型ブランコ

あそび方
  1. こどもをブランコに座らせ、最初はゆっくりと前後に揺らします
  2. こどもの様子を見ながら、徐々に揺れの幅を大きくしていきます
  3. 揺れる方向を前後だけでなく、円を描くように変えてみましょう
  4. 「高く、高く」「ゆっくり、ゆっくり」など声をかけながら楽しみます
効果

前庭覚への刺激が脳の覚醒レベルを適切に調整し、その後の集中力向上につながります。

また、リズミカルな揺れは情緒の安定にも効果があります。

トランポリンあそび

準備するもの: 小型トランポリン(家庭用サイズで十分)

あそび方
  1. 両手を大人に支えてもらいながら、ジャンプの感覚に慣れていきます
  2. 慣れてきたら、「1、2、3、ジャンプ!」とリズムをつけてみましょう
  3. さらに慣れてきたら、ジャンプしながら物を取るなど、別の動作を加えます
  4. 安全のため、必ず周囲に柔らかいマットなどを敷いておきましょう
効果

上下の動きが強い前庭覚刺激となり、姿勢の安定性や空間認識能力の向上に効果的です。

特に多動傾向のあるこどもにとって、適度な前庭覚刺激は落ち着きをもたらします。

クルクル回転あそび

準備するもの: 特になし(広いスペース)

あそび方
  1. お互いの手をつないで、ゆっくりと回り始めます
  2. 「クルクルクル~」と声をかけながら、徐々にスピードを上げていきます
  3. 急に止まって「ストップ!」と言い、バランスを取る練習もします
  4. こどもの様子を見て、めまいがひどくなる前に適宜休憩を入れましょう
効果

回転運動は三半規管に強い刺激を与え、バランス感覚の発達を促します。

また、急に止まる動作は姿勢の調整力を養います。

バランスボードあそび

準備するもの: バランスボード(なければ、厚めのクッションや折りたたんだ毛布でも代用可)

あそび方
  1. 最初は大人と手をつなぎながら、ボードの上に立つ練習をします
  2. バランスが取れるようになったら、片足立ちに挑戦してみましょう
  3. さらに慣れてきたら、ボードの上で軽くジャンプしたり、物を拾ったりします
  4. 「船に乗ったよ~」「波が来るよ~」など、ストーリーを加えると楽しさアップ
効果

不安定な面の上でバランスを取る動きは、前庭覚と固有受容覚の両方を刺激します。

日常生活での姿勢の安定につながります。

前庭覚のあそびを取り入れる際の注意点
・こどもの反応を常に観察し、恐怖や不快を示す場合はすぐに中止しましょう
・徐々に刺激量を増やし、急激な変化は避けます
・あそびの後に落ち着く時間を設けることで、感覚を整理する機会を与えましょう
・特に感覚過敏のあるこどもは、少しずつ慣らしていくことが大切です

前庭覚のあそびは、多くのこどもたちが自然と好む傾向がありますが、感覚過敏のあるこどもは刺激が強すぎると感じることもあります。

こどもの反応を見ながら、適切な刺激量を見つけることが大切です。

次に、固有受容覚を高めるあそびについて見ていきましょう。

固有受容覚を高めるあそび

固有受容覚は、筋肉や関節の位置や動きを感知する感覚です。

この感覚は、体の使い方や身体イメージの形成に関わります。

以下のあそびで効果的に固有受容覚を刺激できます。

重い物を運ぶあそび

準備するもの: 砂袋、重めのぬいぐるみ、小さなバケツに水や砂を入れたもの

あそび方
  1. こどもの体格に合った重さの物を用意します(無理のない重さが大切です)
  2. 「お引っ越しごっこ」など、ストーリー性を持たせてあそびます
  3. 「これ、重いから二人で運ぼうか」「こっちの荷物は軽いよ」など、重さの違いを言葉で伝えます
  4. 両手で持つ、胸に抱える、頭の上に乗せるなど、様々な持ち方で運んでみましょう
効果

重いものを持つ体験は、筋肉や関節からの深い感覚入力を促し、体の位置感覚を強化します。

また、力の調整能力も自然と身につきます。

プッシュ&プルあそび

準備するもの: 大きめのクッション、布団、小さな台車など

あそび方
  1. 壁を押す:「お家を支えよう」と言いながら、壁に両手を当てて押します
  2. ロープ引き:太めのロープやタオルの両端を持ち、引っ張り合います
  3. 台車押し:小さな台車やカートに重しを乗せて、押したり引いたりします
  4. 相撲ごっこ:お互いの手のひらを合わせて、押し合います
効果

押す・引くという抵抗運動は、関節や筋肉に強い固有受容覚刺激を与えます。

これにより、力の入れ具合の調整や体の使い方の理解が深まります。

動物歩き

準備するもの: 特になし(十分なスペース)

あそび方
  1. カエル跳び:しゃがんだ姿勢から、両手両足でジャンプします
  2. クマ歩き:手と足を床につけて、お尻を高く上げながら歩きます
  3. カニ歩き:しゃがんだ姿勢から横向きに移動します
  4. ウサギ跳び:手を先に床につけてから、足を手の位置まで跳ねます
効果

普段使わない姿勢や動きを取り入れることで、全身の筋肉や関節の感覚が活性化されます。

また、左右の協調性や体幹の安定性も向上します。

ボディイメージを養うゲーム

準備するもの: 鏡(あれば)

あそび方
  1. 鏡の真似っこ:向かい合って、相手の動きを鏡のように真似します
  2. ボディタップ:目を閉じて、指示された体の部位を素早く触ります
  3. 人間ツイスター:床に色を置き、指示された手や足を色の上に置きます
  4. 体でアルファベット:体を使ってアルファベットや数字の形を作ります
効果

これらのあそびは、自分の体の各部位の位置関係を把握する能力を高め、ボディイメージを強化します。

日常生活での動作の正確さにつながります。

固有受容覚のあそびを取り入れる際のポイント
・こどもの力に合わせた適切な負荷を与えましょう(強すぎず、弱すぎず)
・「押す」「引く」「持つ」「支える」など、様々な種類の力の使い方を体験させましょう
・成功体験を多く積めるよう、難易度を調整します
・言葉で体の動きを説明しながら行うと、理解が深まります

固有受容覚のあそびは、多動傾向のあるこどもたちにとって特に効果的です。

身体全体を使うことで、適度な疲労感が得られ、その後の集中力向上にもつながります。

実践例:こどもプラスの感覚統合トレーニング

感覚統合あそびの実践例として、こどもプラスの放課後等デイサービスで実際に行われている運動療育プログラムをご紹介します。

このあそびは、前庭覚、固有受容覚、視覚の協応を同時に促進する総合的な感覚統合トレーニングです。

準備するもの
  • 床に貼る幅広の一本線(テープなど)
  • 紙コップ
  • ボールや風船
あそび方
  1. 床に幅のある1本線を作ります
  2. こどもには「線から落ちないように歩く」というルールを伝えます
  3. 紙コップの上にボールを乗せたものを手に持ち、ボールを落とさないように線の上をゆっくり歩きます
  4. 上手にできたら、次の段階として:
    • ボールを風船に変えてみる(難易度アップ)
    • 両手にそれぞれコップとボールを持ってみる(さらに難易度アップ)

感覚統合あそびの例

このあそびの特長は、通常の一本橋渡りよりもスピードが自然と抑えられるため安全であることと、正確性という要素が加わることで新たな楽しさを見出せる点です。

バランス感覚、身体の位置感覚、目と手の協応動作を同時に促進できる優れた感覚統合あそびです。

このあそびを通して多くのこどもたちが集中力を発揮し、普段落ち着きのないこどもが驚くほど真剣に取り組む様子がよく見られます。

また、成功体験を重ねることで「できた!」という達成感も高まります。

こども一人ひとりの特性に合わせて難易度を調整し、達成感を味わえるように支援することが大切です。

この感覚統合トレーニングは単なる運動あそびではなく、脳と体の協調性を高め、学習の土台を作る重要な活動です。

あそびを通して得られる感覚体験が、こどもの脳内でさまざまな感覚情報をつなぎ合わせ、認知機能の発達を促します。

触覚を発達させるあそび

触覚は、皮膚を通して得られる感覚情報です。

触覚の発達は、手先の器用さや情緒の安定にも関わっています。

以下に、触覚を効果的に刺激するあそびをご紹介します。

様々な素材あそび

準備するもの: 様々な質感の素材(滑らかな布、ザラザラした紙、フワフワした綿、ゴツゴツした木の実など)

あそび方
  1. 触覚ボックス:箱の中に様々な素材を入れ、手を入れて何かを当てるゲームをします
  2. 触覚トレイル:床に異なる素材を並べ、裸足で歩いてみます
  3. 素材コレクション:散歩中に見つけた自然素材(葉っぱ、石、木の実など)を集めて触り比べます
  4. 目隠し触り当て:目隠しをして、触っただけで物を当てるゲームをします
効果

様々な質感に触れることで、触覚の弁別能力が高まります。

また、日常生活で遭遇する様々な触感に慣れていくことで、触覚過敏の軽減にも役立ちます。

粘土あそび

準備するもの: 小麦粘土、油粘土、砂粘土など様々な種類の粘土

あそび方
  1. こねる・伸ばす:粘土をよくこねたり、平らに伸ばしたりします
  2. 型抜き:クッキー型や身近な物を使って、形を作ります
  3. 宝物隠し:粘土の中に小さなビーズなどを隠し、指先で探し出します
  4. 粘土こま:粘土を丸めて、コマのように回します
効果

粘土あそびは指先の力や巧緻性を高めるだけでなく、手のひら全体で感じる触覚も刺激します。

力の入れ具合の調整も自然と身につきます。

砂場あそび

準備するもの: 砂場または室内用の砂あそびセット

あそび方
  1. 砂山作り:砂を山のように積み上げ、形を整えます
  2. 砂の雨:砂を高い位置から落として、手や腕に当てます
  3. 砂ケーキ:砂と水を混ぜて、型に入れてケーキを作ります
  4. 宝探し:砂の中に隠した小さな玩具を、手探りで見つけます
効果

砂の感触は多くのこどもたちにとって心地よい触覚刺激となります。乾いた砂と湿った砂の感触の違いなど、細かな違いを感じることができます。

水あそび

準備するもの: 洗面器やバケツに入れた水、水温の異なる水

あそび方
  1. 水の中の宝物探し:目を閉じて、水の中から物を探し出します
  2. 水のかけ合い:少量の水を手にかけたり、腕にかけたりします
  3. 泡あそび:石鹸で泡を作り、手や腕に乗せます
  4. 水温当て:温度の異なる水を用意し、触って温度を当てます
効果

水あそびは触覚だけでなく、温度感覚も同時に刺激します。特に温度や圧力の感覚を養うのに適しています。

触覚あそびを行う際の注意点:
・こどもの反応を良く観察し、不快感を示す素材は無理に触らせないようにしましょう
・清潔な環境で行い、アレルギーのある材料は避けてください
・触覚過敏のあるこどもは、最初は間接的な触れ方(道具を使うなど)から始めると良いでしょう
・成功体験を積み重ねることで、徐々に様々な触感に慣れていきます

触覚は日常生活のあらゆる場面で使われる感覚です。

様々な触覚体験を通じて、手先の器用さや感覚の弁別能力を高めていきましょう。

次に、視覚・聴覚を含めた総合的なあそびについて見ていきます。

視覚・聴覚を含めた総合的なあそび

感覚統合あそびは、複数の感覚を同時に刺激することでより効果的になります。

特に視覚と聴覚を他の感覚と組み合わせたあそびは、日常生活や学習に必要な統合能力を高めるのに役立ちます。

目と手の協応動作を促すあそび

準備するもの: ビーズ、紐、ペグボード、お絵かき道具など

あそび方
  1. ビーズ通し:大きめのビーズから始め、徐々に小さいビーズに挑戦します
  2. ペグ差し:ペグボードに色や順番を考えながらペグを差していきます
  3. なぞり書き:点線をなぞったり、迷路を解いたりします
  4. ハサミ切り:最初は直線から始め、徐々に曲線や複雑な形に挑戦します
効果

これらのあそびは、目で見た情報を手の動きに正確に変換する能力を養います。

書字や衣服の着脱など、日常生活のスキルの基礎となります。

音楽を使った感覚統合あそび

準備するもの: 音楽を流せるもの、簡単な楽器(タンバリン、鈴など)

あそび方
  1. リズム打ち:音楽に合わせて手拍子したり、足踏みしたりします
  2. 音楽ストップ:音楽が止まったら動きを止めるあそびをします
  3. 音の大きさに合わせた動き:大きな音では大きく動き、小さな音では小さく動きます
  4. 音の種類に合わせた動き:低い音では低い姿勢、高い音では高い姿勢を取ります
効果

音楽に合わせた動きは、聴覚と運動機能を結びつけます。リズム感、タイミング、空間認識能力が向上します。

総合的な感覚あそび:障がい物コース

準備するもの: クッション、トンネル、平均台代わりのテープライン、マット、ボールなど

あそび方
  1. 様々な障がい物を配置したコースを作ります
  2. 「くぐる」「登る」「跳ぶ」「バランスを取る」など多様な動きを含めます
  3. 最初は簡単なコースから始め、徐々に複雑にしていきます
  4. タイムを計ったり、ミッションを追加したりして楽しさを増します
効果

障がい物コースは、前庭覚、固有受容覚、触覚、視覚、聴覚など複数の感覚を同時に使うため、感覚統合の促進に非常に効果的です。

また、計画性や問題解決能力も育ちます。

日常生活を活用した感覚統合あそび

準備するもの: 日常の家事道具や身の回りの物

あそび方
  1. お料理手伝い:材料を混ぜる、こねる、切る(安全なナイフで)などの活動
  2. お掃除ごっこ:箒で掃く、雑巾で拭く、重い物を運ぶなどの活動
  3. 洗濯物干し:洗濯ばさみを使って干す、折りたたむなどの活動
  4. お買い物ごっこ:商品を選ぶ、お金を数える、袋に詰める活動
効果

日常生活の活動は自然と複数の感覚を使うため、実用的なスキルと感覚統合を同時に促進できます。また、達成感や自己効力感も高まります。

総合的な感覚あそびを取り入れる際のポイント
・こどもの興味や得意なことから始め、徐々に苦手な要素を取り入れていきましょう
・一度に多くの感覚刺激を与えすぎないよう注意します
・成功体験を積み重ねられるよう、適切な難易度設定を心がけましょう
・あそびの中で言語化(「高い所に登ったね」「滑らかだね」など)を加えると、感覚体験の理解が深まります

感覚統合あそびは、日常生活の中で簡単に取り入れることができます。

例えば、お風呂でのシャボン玉あそびや、料理の手伝いなども素晴らしい感覚統合活動です。

あそびを通して楽しみながら、こどもの発達をサポートしていきましょう。

最後に、感覚統合あそびを行う際の大切なポイントを解説します。

感覚統合あそびの大切なポイント

感覚統合あそびは、単なるあそびではなく、こどもの発達を促す計画的なアプローチです。

効果的な感覚統合あそびには、いくつかの重要な原則があります。

感覚統合あそびが発達に与える効果

感覚統合あそびには、以下のような多面的な効果があります。

  • 脳の神経回路が発達する: さまざまな感覚を使うあそびによって、脳の中の神経のつながりが強くなります
  • 体の機能が良くなる: 姿勢を保つ力、バランス感覚、体の動きをコントロールする力が育ちます
  • 学習の土台ができる: 集中力や注意力、記憶力など、勉強に必要な基本的な能力が高まります
  • 気持ちが安定する: 適切な感覚刺激を受けることで、自分の気持ちを調整する力が育ちます
  • 人との関わりが上手になる: 他の人とのあそびの中で感覚経験を共有することで、社会性が育ちます

最新の研究では、感覚統合的なあそびがこどもの前頭前野(実行機能をつかさどる脳の部位)の発達を促進することが明らかになっています。

あそびを選ぶ際の重要なポイント

感覚統合あそびを選ぶ際には、以下のポイントを考慮することが重要です。

  1. こどもの発達段階に合わせる: 発達年齢に適した難易度のあそびを選びましょう
  2. 「ちょうど良い挑戦」を提供する: 簡単すぎず難しすぎない、少し頑張れば達成できる程度の課題設定が理想的です
  3. こどもの興味関心に合わせる: こどもが興味を持てるあそびは、自発的な参加につながります
  4. 複数の感覚を統合できるあそびを選ぶ: 例えば、前庭覚と固有受容覚を同時に刺激するあそびなど

こどもが「もっとやりたい!」と思えるあそびこそが、最も効果的な感覚統合あそびです。

こどもの笑顔や集中した表情は、そのあそびが適切であることの重要なサインです。

こどもの特性に合わせたあそびの選び方

こどもの感覚処理特性に合わせたあそびの選び方について、いくつかの例をご紹介します。

感覚過敏のあるこどもの場合

  • 徐々に刺激量を増やしていく段階的アプローチ
  • 予測可能で安心できる環境でのあそび
  • こども自身がコントロールできるあそび

感覚鈍麻のこどもの場合

  • より強い感覚入力を提供するあそび
  • 活動的で全身を使うあそび
  • 視覚的手がかりを多く含むあそび

注意力の課題があるこどもの場合

  • 短時間で完結するあそび
  • 明確な目標があるあそび
  • 視覚的な構造化されたあそび

無理強いせず楽しむことが重要!

感覚統合あそびで最も重要なのは、「楽しさ」です。

こどもが楽しいと感じることで、脳は最も効率的に学習します。

  • こどもの反応を常に観察し、拒否反応があれば中止する
  • 成功体験を多く積めるよう配慮する
  • こどもの主体性を尊重し、選択肢を与える

脳科学研究によれば、楽しいと感じる活動中は、脳内の報酬系が活性化し、学習効率が高まることが確認されています。

こどもの安全を守る環境づくり

感覚統合あそびを行う際の環境設定と安全確保も重要です。

  • 体の安全を確保する: クッションマットを敷く、テーブルの角にカバーをつけるなど、ケガを防ぐ工夫をする
  • 心の安全を感じられるようにする: 「次は何をするか」が分かるような予定表や、見てすぐ分かる手順表を用意する
  • 感覚刺激を調整する: 明るすぎる光や大きな音など、こどもが苦手な刺激を減らす工夫をする(カーテンで光を調整する、ヘッドホンを用意するなど)
  • 「できた!」を感じられる環境: こどもの今の力に合わせたあそびや道具を用意して、成功体験を積み重ねられるようにする

感覚統合あそびは、こどもの特性を理解し、適切な環境で行うことで、最大限の効果が得られます。

あそびを通してこどもの発達を支援する際は、専門家のアドバイスも参考にしながら、家庭や教育現場で無理なく続けられる方法を見つけることが大切です。

この記事で紹介したあそびや原則を参考に、お子さんや支援しているこどもたちの特性に合わせた感覚統合あそびを取り入れてみてください。

最も重要なのは、こどもが楽しく、自発的に参加できることです。

無理強いせず、こどもの反応を観察しながら、適切な支援を提供しましょう。

参考文献

  1. エアーズ, A. J. (1972). 『感覚統合と学習障がい』. 協同医書出版社.
  2. 日本感覚統合学会: http://si-japan.net/
  3. 国立特別支援教育総合研究所: https://www.nise.go.jp/

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発達支援に特化した放課後等デイサービスを全国190教室以上展開する「こどもプラス本部」は、筑波大学大学院博士課程修了・柳澤弘樹博士(体育科学)の研究成果を基に設立されました。
身体活動と脳機能に関する研究を行い、発達障がいのお子様向けの運動プログラム開発に貢献しています。

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