発達障害

ひらがなが書けないのは発達障がいのサイン?年齢別に知っておきたい発達の目安

ADHDの子どもを支援する方法 発達障害

ひらがなが書けない発達障がいのお子様は、文字が二重に見えたり、裏返しに見えたりして、文字を正確に捉えることが難しいことがあります。

また、単語を一まとまりとして認識できなかったり、助詞の使い方がわからなかったり、飛ばし読みをしてしまいます。

お子様の発達の進行具合に応じて、ひらがなが書けない原因を理解し、適切な支援が大切です。

この記事では、ひらがなが書けない発達障がいについて、年齢別の発達目安、ひらがな習得の基礎知識、そして効果的な支援方法についてご紹介します。

お子様の成長を見守りながら、共に前向きに進んでいけるような方法を考えていきましょう。

【年齢別】ひらがなが書けないこどもの発達の目安と発達障がいの可能性について

障がい特性を理解する

「ひらがなが書けない」状態が発達障がいのサインなのかどうかは、お子様の年齢によって判断が大きく異なります。

年齢別に発達の目安を理解することで、ひらがなが書けない発達障がいの可能性について適切に判断できるようになります。

3〜4歳:書字の前段階である手指の発達・ひらがなの認識

この年齢では、ひらがなが書けないことはまったく心配する必要はありません。

3〜4歳児は、まだ書字に必要な手指の微細運動や目と手の協応動作が発達途上にあります。

この時期にひらがなを正確に書けるこどもはごく一部です。

この時期に大切なこと:

  • 鉛筆やクレヨンを持って自由に描くことを楽しむ環境づくり
  • 粘土遊びや折り紙など、手指の巧緻性を高める遊びの提供
  • 絵本の読み聞かせを通じた文字への親しみの醸成

この時期は「書く」よりも「触れる」ことを重視しましょう。

手指の筋肉を使った遊びや、文字に親しむ環境づくりが、後のひらがな習得の土台となります。

発達障がいのお子様でも、この年齢でひらがなが書けないことは特別な問題ではなく、まずは文字に興味を持てる環境づくりが重要です。

5〜6歳:幼稚園・保育園年長時はひらがなの習得段階

年長児になると、多くのこどもが自分の名前や簡単なひらがなを書き始めます。

しかし、すべてのひらがなを正確に書けるようになるのは、小学校入学後であることが一般的です。

この時期の一般的な発達の目安:

  • 自分の名前の一部またはすべてを書ける
  • 「あ」「い」「う」など基本的なひらがなを模写できる
  • 文字に興味を示し、絵本や環境から文字を認識できる

この時期にひらがなを書くことに苦手意識があっても、すぐに発達障がいを疑う必要はありません。

ただし、以下のような特徴が見られる場合は、発達障がいの可能性も含めて専門家に相談することが望ましいでしょう。

  • 文字への興味がまったく見られない
  • 鉛筆やクレヨンを握ることや線を引くことに極端な苦手さがある
  • 同じ形を模写することが著しく困難である

年長児では、ひらがなが書けないことよりも、文字への関心や鉛筆を使った活動への参加状況をより重視することが大切です。

発達障がいのお子様でも、適切な支援があれば、自分のペースでひらがなを習得していくことができます。

小学1年生:学校教育でのひらがな習得の過程

小学1年生になると、学校教育の中でひらがなを系統的に学習します。

一般的に、小学1年生の2学期末には多くの児童がすべてのひらがなを書けるようになります。

小学1年生の書字発達の目安:

  • 1学期末:基本的なひらがなの大部分を書ける
  • 2学期末:ほぼすべてのひらがなを書ける
  • 3学期末:ひらがなを使った短い文を書ける

この時期にひらがなが書けない場合は、以下のような点に注意して観察することが重要です。

  • 特定のひらがな(「れ」「わ」「ね」など複雑な形)だけが書けない
  • 鏡文字(左右反転した文字)を書くことが多い
  • 文字のバランスや大きさが極端に不安定

小学1年生でひらがなの習得に困難を示す場合、発達性読み書き障がい(ディスレクシア)や発達性協調運動障がいなどの可能性を視野に入れた支援が必要になることもあります。

しかし、焦らずに個々の特性に合わせた支援を継続することで、多くのお子様が徐々に文字を習得していきます。

小学2年生以降:ひらがなが書けない場合に考えられる発達障がいの特性

小学2年生以降もひらがなの習得に著しい困難が見られる場合は、発達障がいの可能性を含めた専門的な評価が役立つことがあります。

小学2年生以上でひらがなの習得に困難を示す児童には、何らかの発達障がいの特性が認められるケースが少なくありません。

この時期に見られる発達障がい関連の特徴:

  • 文字の形を正確に捉えられない(視知覚の問題)
  • 文字を書く動作の計画・実行が難しい(運動企画の問題)
  • 文字と音の対応関係の理解が難しい(音韻処理の問題)
  • 注意の持続や集中に困難がある(注意の問題)

小学2年生以降でひらがなが書けない場合は、学習全般に支障をきたす可能性が高まります。

教科学習の基盤となる「読み書き」の困難は、他の学習領域や自己肯定感にも影響することがあるため、適切な支援体制を整えることが重要です。

年齢に応じた「様子見」と「相談」の判断基準

お子様の年齢や発達段階に応じて、ひらがなが書けない状況への対応を考えましょう。

様子を見守る目安:

年齢・学年 ひらがな習得の目安
3〜4歳(未就園児) 文字に興味を示し、鉛筆やクレヨンなどを使った活動を楽しめる
5〜6歳(年中〜年長) 自分の名前の一部を書こうとする意欲が見られる
小学1年生・1学期 特定のひらがなは書けるが、まだすべての文字は習得できていないことが多い

専門家に相談する目安:

年齢・学年 気になるサイン(発達の遅れや困難の可能性)
どの年齢でも 文字への興味がまったく見られない
5〜6歳(年中〜年長) 線を引く、丸を描くなどの基本的な描画が極端に困難
小学1年生・2学期以降 大部分のひらがなを書くことが難しい
小学2年生以降 ひらがなの習得に著しい困難があり、日常生活や学習に支障が出ている可能性がある

ひらがなが書けない発達障がいの可能性については、単に「書けるか書けないか」だけでなく、お子様の全体的な発達や日常生活での様子も含めて総合的に判断することが大切です。

心配なことがあれば、かかりつけ医や学校の先生に相談することをお勧めします。

次の章では、ひらがなが書けない状態と発達障がいの関係について、より詳しく解説します。

ひらがなが書けないことと発達障がいの関連性

発達障がいでは記憶力が悪い一面もある

ひらがなが書けないことと発達障がいには、いくつかの関連性があります。しかし、ひらがなが書けないからといって、必ずしも発達障がいがあるわけではありません。

発達障がいの特性とひらがな習得の関係について正しい知識を持つことで、適切な対応ができるようになります。

発達障がいと「ひらがなが書けない」の関係

発達障がいの中でも、特にひらがなの習得に影響を与えやすいのは以下の障がいです。

発達障がいの種類 特徴 ひらがな習得への影響例
発達性読み書き障がい(ディスレクシア) ・文字の認識や処理に特異的な困難がある
・知的能力は平均以上でも読み書きが困難
・文字を正確に読み取れない、書き写せない
・読み間違いや書き間違いが多い
注意欠如・多動症(ADHD) ・注意の持続が難しく集中しづらい
・衝動性がある
・書字練習に集中できない
・文字を丁寧に書くのが難しく、乱雑になりやすい
自閉スペクトラム症(ASD) ・文字に強い関心を示すことがある
・こだわりが強い
・完璧に書けないことに不安を抱く
・細かい部分にこだわりすぎて書字が進まないことも
発達性協調運動障がい(DCD) ・手指の運動調整が苦手
・力加減や筆記動作に困難がある
・文字の形は理解していても、実際に書くのが難しい
・鉛筆の操作がぎこちない

発達障がいのあるお子様の多くが何らかの書字の困難を経験しますが、適切な支援があれば、ほとんどのお子様が自分なりの方法で文字を習得できます。

「発達障がい」と「通常の発達の遅れ」との違い

ひらがなが書けない状態には、発達障がい特有の困難さと、単なる発達の個人差による遅れがあります。

両者を区別するためのポイントを理解しましょう。

比較項目 発達障がい特有の困難さ 発達の個人差による遅れ
困難の範囲 特定の領域に限定された顕著な困難(例:文字の認識、運動制御) 全体的にやや遅れているが、極端な困難はない
練習や指導への反応 繰り返しても改善が難しく、成果が見えにくい 練習や経験を重ねることで徐々に改善していく
他の発達領域の様子 言語理解や思考力など、他の領域は年齢相応に発達していることが多い 他の発達領域も同程度の発達レベルであることが多い
間違いの特徴 特定の文字だけが書けない、常に同じ間違いをするなど、独特な誤り方が見られる 習得過程で見られる一般的な間違いが中心

幼児期から小学校低学年にかけては、発達の個人差が大きいため、すぐに発達障がいと判断することは避け、継続的な観察と適切な支援が重要です。

発達障がいによる「ひらがなが書けない」タイプ別の特徴

ひらがなが書けない発達障がいのお子様の困難は、いくつかのタイプに分けられます。

タイプによって効果的な支援方法が異なるため、お子様がどのようなタイプに当てはまるかを把握することが大切です。

タイプ 困難の特徴 主な支援方法
視知覚の問題 – 文字の形・方向・空間認識が難しい
– 似た文字の区別が困難(例:「は」と「ほ」、「ね」と「れ」)
– 文字のバランスが取れない
– 文字の特徴を強調する
– 触覚を使った学習(なぞり書き、砂文字など)
運動機能の問題 – 鉛筆の握り方や筆圧の調整が難しい
– 手の動かし方がスムーズでない
– 文字の理解はあるが書く動作が困難
– 握りやすい筆記具の使用
– 大きな文字や太い線から始める練習
記憶の問題 – 文字の形を覚えるのが難しい
– 一度覚えてもすぐに忘れてしまう
– 繰り返し練習
– 視覚やイメージとの関連づけ
– 音や動作と組み合わせて覚える工夫
注意・集中の問題 – 書く作業に集中が続かない
– 細部の見落としが多く、ミスが頻発
– 短時間で集中できる学習環境の設定
– 視覚的なサポート(ガイド線、色分けなど)
– 成功体験を積ませる工夫

これらの困難さは単独ではなく、複数が組み合わさって現れることが多いです。

お子様一人ひとりの特性を理解し、それに合わせた支援を行うことが重要です。

「ひらがなが書けない」ことと他の発達の関係について

ひらがなが書けないときは、「文字を書く力」だけでなく、他の発達の様子(=発達指標)も一緒に見ることが大切です。

ここでいう発達指標とは、こどもの成長をさまざまな側面から見るためのチェックポイントのことです。

具体的な発達指標の例

  • 言葉の発達(語彙の豊かさ、文章を理解できる力など)

  • 見て認識する力(形や向き、違いを見分ける力)

  • 手先の器用さや運動の発達(鉛筆を持って書く動作に必要な身体の動かし方)

  • 注意力・集中力(一つのことに取り組み続ける力)

  • 記憶力(特に“見て覚える力”)

とくに、言葉の発達や、目と手を連動させる力(視覚-運動協応)は、ひらがなの習得と深く関わっています。

これらが年齢相応に育っているのに「ひらがなだけ」が極端に苦手な場合は、発達性読み書き障がい(ディスレクシア)の可能性もあります。

保護者の不安を軽減するための正しい理解と対応

お子様がひらがなを書けないことに不安を感じるのは自然なことですが、過度な心配や焦りは、お子様にも伝わり、学習への意欲を下げてしまうことがあります。

不安を軽減するためのポイント:

  • 発達には個人差があることを理解する
  • お子様の「できること」に注目し、小さな進歩を認める
  • 文字の習得は一直線ではなく、停滞期や後退期があることを理解する
  • 比較ではなく、お子様自身の成長を見守る姿勢を持つ
  • 必要に応じて専門家のアドバイスを得る

発達の遅れを心配する保護者に対して、「焦らず、でも見過ごさず」の姿勢が重要です。

お子様のペースを尊重しながら、必要な支援を行うことが、結果的に文字の習得を促進します。

ひらがなが書けない発達障がいのあるお子様でも、適切な理解と支援があれば、必ず自分なりの方法で文字を習得していくことができます。

次の章では、発達障がいのお子様のひらがな習得を助ける具体的な支援方法についてご紹介します。

発達障がいのこどもが「ひらがなが書けない」ときの支援方法

ひらがなが書けない発達障がいのお子様には、一人ひとりの特性に合わせた支援方法が効果的です。

従来の「繰り返し書く」練習だけでなく、多感覚を使ったアプローチや、お子様の興味を生かした工夫が、ひらがな習得の鍵となります。

こどもの特性に合わせた多感覚アプローチ

発達障がいのあるお子様は、視覚・聴覚・触覚など複数の感覚を同時に使うことで、学習効果が高まることが多いです。

多感覚アプローチを取り入れた指導は、発達障がいのあるお子様の文字習得に大きな効果があることが分かっています。

視覚を活用した支援:

  • 文字の形を色分けして特徴を強調する(「さ」の三画目を赤色にするなど)
  • 文字の書き順を矢印や数字で示す
  • 空間的な位置関係を意識できるよう、マス目や補助線を活用する

聴覚を活用した支援:

  • 文字を書くリズムを言葉で表現する(「の」なら「ぐるっとまるめて、ちょんと点」)
  • 文字の音と形を結びつける歌やリズム遊びを取り入れる
  • 書きながら書き順を声に出して言う

触覚・運動感覚を活用した支援:

  • 砂文字板や粘土で文字の形を作る
  • 指で空中に大きく文字を書く動作をする
  • 文字型の型抜きや、なぞり書き教材を活用する

まずは、お子様の得意な感覚(視覚優位、聴覚優位など)を見極めることが大切です。

それを活用した学習方法を中心にしながら、他の感覚も補助的に使うことで、効果的な学習が期待できます。

遊びを通じた効果的なひらがな学習法

発達障がいのあるお子様にとって、「練習」ではなく「遊び」として取り組めることが、モチベーションを保つ重要なポイントです。

遊びを通じた学習は、発達障がいのあるお子様の文字習得において高い効果を示します。

日常生活の中でのひらがな遊び:

  • お風呂の壁に水で文字を書く
  • 好きなキャラクターの名前を一緒に書く
  • 食事の時に「あ」から始まる食べ物を探すゲーム
  • 散歩中に見つけた「あ」の形に似たものを探す

楽しく取り組めるひらがな遊びの例:

  • ひらがなカルタや神経衰弱
  • ひらがなを使ったすごろくゲーム
  • 文字探しビンゴ
  • 好きなキャラクターのひらがなスタンプ

これらの遊びを通じて、お子様が「楽しい」と感じながら文字に触れる時間を増やすことが大切です。

特に発達障がいのあるお子様は、興味のあるテーマと結びつけることで、学習への意欲が高まることが多いです。

ツールやアプリを活用した支援方法

デジタル機器を活用した学習は、発達障がいのあるお子様にとって、以下のような利点があります:

  • 視覚的に分かりやすく提示できる
  • 即時にフィードバックが得られる
  • 繰り返し練習しても飽きにくい
  • 自分のペースで取り組める

ツール活用した支援は、発達障がいのあるお子様の文字習得に効果的であることが多くの実践から明らかになっています。

おすすめのアプリやツール:

  • ひらがな書き順学習アプリ
  • タブレットでなぞり書きができるアプリ
  • 文字と音声がリンクした電子絵本
  • 書いた文字を読み上げてくれるアプリ

ツールを活用する際は、使用時間を適切に管理し、実際に鉛筆で書く経験とバランスよく組み合わせることが重要です。

また、保護者や支援者が一緒に取り組むことで、より効果的な学習になります。

つまずきやすいひらがなへの対応と効果的な練習法

発達障がいのあるお子様がつまずきやすいひらがなには、特徴的なパターンがあります。

特に「れ」「わ」「ね」「め」「ぬ」などの複雑な形や、

「あ」と「お」、「は」と「ほ」など似た形の文字は、誤りが生じやすいことが分かっています。

つまずきやすい文字への対応:

  • 形が単純な文字(「い」「う」「え」「お」など)から始める
  • 似ている文字は時間をあけて学習する
  • 文字の特徴を言語化する(「れ」は「おふとんに人が寝ている形」など)
  • 文字の特徴を強調した絵カードを活用する

効果的な練習法の工夫:

  • 大きなサイズから始めて徐々に小さくする
  • 点線なぞり→薄い文字なぞり→見本を見て書く、の段階を踏む
  • 1日に練習する文字の数を限定する(1〜3文字程度)
  • 正確さよりも、まずは形の大まかな特徴をつかむことを重視する

お子様一人ひとりがつまずく文字や理由は異なります。

どの文字が難しいか、どのような間違いをするかを観察し、個別の対応を考えることが効果的です。

モチベーションを維持する工夫とこどもの自己肯定感を育む関わり方

発達障がいのあるお子様がひらがなを習得する過程では、モチベーションの維持と自己肯定感の育成が極めて重要です。

学習意欲と自己肯定感の高さは、発達障がいのあるお子様の文字習得の成功に強く関連しています。

モチベーションを維持する工夫:

  • 小さな進歩を具体的に褒める(「『あ』の丸い部分がきれいに書けましたね」)
  • お子様の興味のあるテーマと文字学習を結びつける
  • 無理のない目標設定(1日に1文字でも十分です)
  • 達成感を味わえる工夫(シール帳や進捗表など)

自己肯定感を育む関わり方:

  • 結果だけでなく、取り組む姿勢を認める
  • できないことを責めず、できることに注目する
  • 「間違い」を「学びの機会」と捉える声かけをする
  • お子様自身が自分の成長を実感できる記録を残す

発達障がいのあるお子様は、繰り返しの失敗体験から「書くこと」に苦手意識を持ちやすいです。

小さな成功体験を積み重ね、「できた!」という経験を増やすことで、学習への前向きな姿勢を育むことができます。

ひらがなが書けない発達障がいのお子様への支援は、単なる文字の練習にとどまらず、「学ぶことの楽しさ」や「自分はできる」という自信を育むプロセスでもあります。

個々の特性を理解し、適切な支援方法を組み合わせることで、お子様は必ず自分なりのペースで文字を習得していくことができます。

次の章では、こどもがひらがなを書けない場合に専門家への相談が必要な場合の判断基準や相談先について解説します。

ひとりで悩まず専門家へ相談しよう|適切なタイミングと相談先選び

ひらがなが書けない状態が発達障がいによるものかどうか、悩んだときは専門家に相談しましょう。

しかし、「いつ」「どこに」相談すればよいのか、迷われる保護者の方も多いでしょう。

ここでは専門家に相談する適切なタイミングと、適切な相談先をご紹介します。

発達相談の適切なタイミング・相談前の準備

発達相談のタイミングは、お子様の年齢や状況によって異なります。

専門家からは、以下のような場合には早めに相談することが推奨されています。

相談を検討すべきタイミング:

  • 小学1年生の2学期以降もひらがなのほとんどを書くことができない
  • 文字以外の発達面(言葉の発達、社会性、運動能力など)にも気になる点がある
  • 文字の学習に極端な抵抗感や苦痛を示す
  • 家庭や学校での工夫をしても、改善が見られない
  • お子様自身が「書けない」ことに困り感を示している

相談する前に、以下のような準備をしておくと、より具体的な助言が得られやすくなります。

相談前の準備:

  • お子様の発達歴をまとめておく(いつ頃から気になったか、これまでの成長過程)
  • 具体的にどのような点が気になるのか、エピソードを記録しておく
  • お子様の書いた文字や絵のサンプルを保存しておく
  • 家庭や学校で試してみた支援方法とその結果
  • お子様が得意なこと、興味があること
  • 現在、気になっている具体的な症状や行動

適切な準備をすることで、限られた相談時間を有効に使うことができます。

また、お子様の状態を客観的に伝えるために、可能であれば保育園・幼稚園・学校の先生からの情報も参考にするとよいでしょう。

相談先の種類と特徴

ひらがなが書けない発達障がいの可能性について相談できる専門機関は複数あります。

それぞれの特徴を理解し、お子様の状況に合った相談先を選びましょう。

実際には、最初の相談先として最も多いのは、市区町村の発達相談窓口とかかりつけ医です。

主な相談先と特徴:

相談先 特徴 対応者 適している場合
市区町村の発達相談窓口 無料で相談でき、地域の支援情報も得られる 保健師、心理士など 初めての相談、どこに相談すべきか迷っている場合
発達障がい者支援センター 発達障がいに特化した専門的アドバイスが受けられる 発達障がいの専門相談員 発達障がいの可能性が高く、専門支援が必要な場合
小児科医・かかりつけ医 医学的な視点のアドバイス、専門医の紹介も可 小児科医 発達全般の相談、健康面も含めた相談
小児神経科・専門クリニック 詳しい発達評価・診断が可能 小児神経科医、専門医 正式な診断や医学的支援が必要な場合
教育相談センター・教育委員会 学校での支援や教育的配慮の相談ができる 特別支援教育の専門家 就学や学校対応の相談をしたい場合
言語聴覚士・作業療法士 実践的な訓練プログラムの提供 リハビリの専門家 具体的な訓練方法を知りたい場合

複数の専門家の視点を得ることで、お子様の状態をより多角的に理解することができます。

最初は市区町村の窓口やかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門機関を紹介してもらうのがスムーズです。

発達障がいのお子様の診断結果を学校と共有・連携する

お子様の発達障がいの診断を受けた後は、学校と適切に情報共有することで効果的な支援環境を整えることができます。

診断結果の学校への伝え方

  • 担任への相談: 面談を予約し、診断書コピーと具体的な支援要望を伝える
  • 特別支援コーディネーターへの連絡: 担任を通じて面談を依頼し、校内支援体制を相談する
  • 診断書提出と支援要請: 診断書コピーを提出し、個別支援計画の作成を依頼する

継続的で一貫した支援のために、保護者と学校の信頼関係構築がお子様の成長を支える基盤となります。

早期支援の重要性と長期的な視点でのこどもの成長

ひらがなが書けない発達障がいのお子様への支援は、早期に開始することで効果が高まることが知られています。

しかし同時に、焦らず長期的な視点で成長を見守ることも大切です。

適切な早期支援を受けた発達障がいのあるお子様の多くが、数年後には学齢期に必要な文字の読み書き能力を獲得できることが分かっています。

早い時期から支援するメリット:

  • こどもの脳が柔軟に成長する時期に適切な学習方法を取り入れられる
    「勉強が嫌い」「自分はダメだ」という気持ちになる前に対応できる
    小学校入学前から準備することで学校生活にスムーズに慣れやすくなる
    親御さんも早くからこどもに合った接し方を学べる

長い目で見た支援のコツ:

  • 大きな目標を小分けにして、少しずつの成長を一緒に喜ぶ
    文字が書けるようになることだけでなく、話す力や考える力も大切にする
    タブレットやパソコンなど、別の方法で学習する選択肢も取り入れる
    小学校入学や進級など環境が変わるときに支援方法を見直す

ひらがなが書けない発達障がいのお子様も、適切な支援と時間があれば、必ず自分なりの方法で文字の世界を広げていくことができます。

一人ひとりの発達のペースを尊重しながら、長期的な視点で支援を継続することが大切です。

親としての心構えはこどもの可能性を信じること

ひらがなが書けない発達障がいのお子様を育てる上で、保護者の方自身の心構えも非常に重要です。

保護者の前向きな姿勢とこどもの可能性を信じる気持ちが、こどもの学習成果に大きく影響します。

保護者の心構えのポイント:

1. 比較ではなく、個性として受け止める

  • 他の子と比べるのではなく、お子様自身の成長に目を向ける
  • 「できないこと」より「できること」「好きなこと」に注目する
  • 発達障がいの特性を「個性」として理解し、尊重する姿勢を持つ

2. 小さな進歩を認め、称える

  • わずかな成長も見逃さず、具体的に褒める
  • 結果だけでなく、取り組む過程も評価する
  • 成功体験を積み重ねる機会を意識的に作る

3. こどもの可能性を信じる

  • 「いつかできるようになる」という信念を持つ
  • 長期的な視点で成長を見守る忍耐力を養う
  • こどもの強みを生かした支援を考える

4. 自分自身のケアも大切に

  • 保護者自身が心身の健康を保つ
  • 同じ悩みを持つ保護者とのつながりを持つ
  • 必要なときは専門家のサポートを受ける

ひらがなが書けない発達障がいのお子様との関わりは、時に忍耐を要することもあります。

何より大切なのは、お子様のペースを尊重し、可能性を信じる保護者の姿勢です。

焦らず、でも必要な支援は早めに提供し、長期的な視点でこどもの成長を見守りましょう。

ひらがなが書けない発達障がいのお子様も、必ず自分なりの方法で文字の世界を広げていくことができます。

その過程を温かく見守り、適切にサポートすることで、お子様の可能性は大きく広がっていくでしょう。

参考文献

  1. 稲垣真澄(2019)「発達性読み書き障がい(ディスレクシア)の理解と支援」日本発達障がい学会誌
  2. 国立教育政策研究所(2021)「小学校低学年における文字習得に関する調査報告」
  3. 東京学芸大学特別支援教育研究センター(2022)「発達障がい児の書字困難に関する実態調査」
  4. 国立特別支援教育総合研究所(2020)「多感覚アプローチを用いた学習困難児への支援効果」
  5. 日本LD学会(2021)「遊びを通じた学習支援の効果に関する研究」
  6. 文部科学省(2023)「ICT活用による発達障がい児支援に関する調査報告」
  7. 国立国語研究所(2022)「日本語の文字習得における困難点の分析」
  8. 日本発達心理学会(2023)「発達障がい児の学習意欲と保護者の関わりに関する研究」
  9. 日本小児医学会(2022)「発達障がい早期発見・早期支援ガイドライン」
  10. 厚生労働省(2023)「発達障がい児支援のための相談機関利用実態調査」

この記事を書いた人
アバター画像

発達支援に特化した放課後等デイサービスを全国190教室以上展開する「こどもプラス本部」は、筑波大学大学院博士課程修了・柳澤弘樹博士(体育科学)の研究成果を基に設立されました。
身体活動と脳機能に関する研究を行い、発達障がいのお子様向けの運動プログラム開発に貢献しています。

発達障害
発達障がいのお子様向け放課後等デイサービス・児童発達支援 - こどもプラス
発達障がいのお子様向け放課後等デイサービス・児童発達支援 - こどもプラス