運動療育・運動遊び

療育における集団あそびアイデア集!療育のプロが教える4つのポイント

遊具であそぶこども 運動療育・運動遊び

「うちの子、みんなと遊ぶ輪になかなか入れない…」

「順番を守れなくて、トラブルになってしまう」

このようなお悩みはありませんか?

発達障がいのこどもにとって、集団あそびは「楽しい」と感じる前に、たくさんのハードルがある場合があります。

しかし、適切なステップと工夫をし、療育や家庭で行う集団あそびはアイデア次第で社会性やコミュニケーション能力を育む絶好の機会になります。

この記事では、療育の視点から集団あそびの効果やポイント、そしてすぐに取り入れられる具体的な集団あそびのアイデアまで、分かりやすく解説します。

療育における「集団あそび」で育まれる力とは?

療育では集団あそびという楽しい活動を通して、こどもが将来社会で生きていくために必要なスキルを自然と身につけます。

発達に特性のあるこどもにとって、「暗黙の了解」や「相手の気持ち」といった目に見えないものを理解するのは非常に難しい課題です。

言葉で「順番を守りなさい」と100回教えるよりも、あそびの中で「順番を待ったら、次は自分の番が来て楽しかった」という経験を1回する方が深く心と身体に刻まれます。

集団あそびという、一人あそびでは得られない他者との関わりの中で、こどもは多くのことを学び、成長していきます。

集団の中で社会のルールを学ぶ

集団あそびには、こどもの発達を多角的に支える力があります。

単なる「楽しい時間」ではなく、あそびを通して社会で生きていくための欠かせない力を自然に育んでいけるのです。

まず、集団あそびは、こどもたちが社会のルールを学ぶ最初の教室となります。

大人が「順番を守りなさい」と教えるだけでは、その本当の意味はなかなか心に届きません。

しかし、すごろくあそびで順番を抜かしてしまい、友達が悲しい顔をしたりゲームが止まったりする経験を通して、「ルールを守った方が、みんなで楽しく続けられるんだ」ということを、頭ではなく身体で実感するのです。

貸し借りや、人の話を聞くといった社会の基礎も、この「生きた経験」の中で学んでいきます。

コミュニケーション能力を育む

そして、そのルールの中で他者と関わるために不可欠なのが、コミュニケーションの力です。

「次のおもちゃを貸してほしい」「一緒にお城を作らない?」といった言葉での交渉はもちろんですが、こどもたちは常に、相手の表情や声のトーンから「今、楽しいのかな?」「もしかして、嫌だったのかな?」と、言葉にならない気持ちを読み取ろうとします。

この言葉と表情(非言語)のキャッチボールを繰り返すことが、円滑な人間関係を築くための大切な土台となるのです。

さらにあそびが深まると、こどもたちは「自分」と「相手」の存在を認め合い、協力することを学びます。

一人ならば自分の思い通りのに作れる積み木も、友達と一緒ならそうはいきません。

相手が置いたブロックを尊重し、次に自分がどう積むかを考える、そうして一人では決して作れなかった大きなお城が完成したとき、「誰かと協力するって、こんなにすごいことができるんだ!」という大きな喜びと達成感を味わいます。

これはまさに、チームワークの原点です。

感情のコントロール力が身につく

また、あそびの中の小さなトラブルは、こどもたちの「考える力」を育む絶好の機会となります。

ごっこあそびで「二人ともヒーロー役をやりたい!」となった時、こどもたちは頭を悩ませます。

そして、「じゃんけんで決めよう」「前半と後半で交代しよう」といった、自分たちなりの解決策を見つけ出します。

この試行錯誤のプロセスこそが、困難に直面した時にしなやかに考える、問題解決能力の種を育むのです。

そして何より大切なのが、集団あそびが「心の筋トレ」の場になるということです。

ゲームに負ける悔しさ、思い通りにいかないもどかしさ、こうしたネガティブな感情を経験し、支援者に見守られる安全な環境の中で「悔しいと思ってもいい。でも、人や物にあたるのは違う」と学んでいきます。

この経験が、社会に出たときのストレスに対する心のしなやかさを育んでいきます。

このように、集団あそびは社会性から感情のコントロールまで、こどもの発達領域に同時に働きかける、非常に効果的な療育手法です。

大切なのは、こどもが安心して挑戦できる環境を整えてあげることです。

そして、失敗やトラブルを含めて「生きた経験」として積み重ねていけるように、大人がそっと寄り添うことです。

集団あそびの中で育つ力は、こどもたちの大きな財産になっていきます。

このように、療育における集団あそびは、社会性や感情のコントロールといった生きる力を育む上で重要な役割を果たします。

次に、療育で使える集団あそびのアイデアをご紹介します。

療育で使える!集団あそびアイデア集

ここでは、療育現場でもよく使われる、少人数から大人数まで楽しめる具体的な集団あそびのアイデアをご紹介します。

小集団向けあそびのアイデア(2~4人)

まず小集団での活動から始めることが効果的です。

個別の注意が行き届きやすく、一人一人の特性に合わせた配慮が可能になります。

1.救急車片足クマさん(ペア活動)

やり方:

 1.2人1組になります。

 2.1人は床に手をつき、片足を上げる「片足クマ」の姿勢をとります。

 3.もう1人は後ろから、片足クマの上げた方の足の膝あたりを持ち、手押し車のように進みます。

効果: 人と息を合わせる協調性と、腕の支持力を同時に育成できます。

発達障がい児にとって難しい「相手に合わせる」動きを、体を使って自然に学習できます。

準備物: 特になし 所要時間: 5-10分

2.ボール足挟み渡し

やり方:

1.2人1組で向かい合って座り、手は体の後ろにつきます。

2.1人が足の指でボールを挟んで持ち上げ、相手に渡します。

3.もう1人はそれを足で受け取ります。

効果:相手が受け取りやすいように渡す思いやりの心を育み、足先の器用さと腹筋を鍛えます。

準備物: ボール(やわらかめ) 所要時間: 5-10分

3.カップ取り合いゲーム

やり方:

1.2人1組で体操座りになり、手は後ろにつきます。

2.2人の間に置かれたカップを、足の指(親指と人差し指)で挟んで取り合います。

効果: 座った状態で足を持ち上げる姿勢により腹筋を強化し、足先の器用さを向上させます。

勝負要素があるため集中力も高まります。

準備物: 軽いカップ(紙コップなど) 所要時間: 5-15分

大集団向けあそびのアイデア(5人以上)

集団全体の動きを意識し、その中での自分の役割を学ぶ大集団向けのあそびです。

集団活動では、全体への指示と理解力と、集団の中での自己統制力を育てることがでます。

指導者は全体を見渡しながら、個別配慮も忘れずに行うことがポイントです。

1.みんなで大縄跳び

やり方:

1.最初は3人程度から始め、縦1列に並んで跳びます。

2.得意な子を一番前に、苦手意識のある子を後ろに配置すると、前の人の動きを見て、タイミングをつかみやすくなります。

両足を揃えてリズムよくジャンプします。

効果: 連続ジャンプで抑制力を育成し、他者に合わせるタイミング感覚と協調性を身につけます。

同じ位置で跳び続ける集中力も向上します。

準備物: 大縄 所要時間: 10-20分

2.合図で前転(全員一斉活動)

やり方:

1.マットを横長につなげ、こどもたちは横一列に並びます。

2.全員で前転の準備姿勢(マットに両手と頭をつける)をとり、「始め」の合図があるまで待ちます。

3.合図で一斉に前転します。

効果:合図を待つことで抑制力や集中力を高め、周りの友達と動きを合わせることで社会性や協調性を育みます。

準備姿勢の維持でバランス感覚も向上します。

準備物: マット複数枚 所要時間: 10-15分

3.クマ鬼ごっこ

やり方:

1.全員が四つ這いの「クマ歩き」で鬼ごっこをします。

自分と周りの友達、鬼との距離関係をはかりながら、次はどこにどう逃げたら良いか、友達にぶつからないように動きます。

効果: 常に頭を使いながら先を読んで動く力、瞬発力や方向転換能力を育てます。

鬼や友達との距離を測りながら動くことで、空間認知力を高めます。

また、どこに逃げるか、どう動けばぶつからないかを常に考えるため、状況判断力や社会性が向上します。

準備物: なし(広いスペース) 所要時間: 10-15分

少人数から大人数まで楽しめる具体的な集団あそび療育のアイデアをご紹介しました。

次に、集団あそびを取り入れるときのポイントについて見ていきましょう。

集団あそびを取り入れるときの基本ポイント

療育における集団あそびは、「人数・環境設定」「発達段階に合わせたあそび選び」「成功体験を積ませる工夫」の3点を意識することで、こどもが安心して集団あそびに取り組め、さらに成長を感じられる療育活動へとつながります

こども、特に発達に特性のあるこどもは環境からの刺激にとても敏感です。

物理的・心理的な環境を整えることで、こどもは安心して活動に参加し、「楽しい!」と感じる土台が出来ます。

ここでは、保護者や支援者が現場でできる具体的な工夫を詳しくまとめます。

集団あそびの人数・環境設定を工夫する

まず考えたいのが、集団あそびの「人数」です。

私たちはつい「こどもはたくさんいた方が楽しいだろう」と考えがちですが、必ずしもそうではありません。

人数が増えるほど、飛び交う声や動きといった情報量は爆発的に増え、こどもの脳には大きな負担がかかります。

カードゲームやブロックあそびのように集中力が必要な活動は、2~4人の少人数の方が一人ひとりの表情を見ながら丁寧に関わることができます。

もちろん、鬼ごっこのようなダイナミックなあそびにはある程度の人数が必要ですが、新しいルールに挑戦するときなどは、まずは指導者と1対1で試すなど、小さな規模から始めるのが成功への近道です。

そして、その「人数」を包む「空間」の作り方にも、こどもの安心感を高めるヒントが隠されています。

走り回る活動でない限り、実は広すぎる空間はかえって注意散漫の原因になりがちです。

そんなときは、パーテーションやマットなどで「ここで遊ぶ」というエリアを物理的に区切ってあげましょう。

空間の役割が明確になることで、こどもは「ここは集中する場所だ」と認識しやすくなります。

また、視界に入るおもちゃやポスターといった「視覚的なノイズ」も、集中力の大敵です。

活動に使わないおもちゃは箱にしまったり、棚に布をかけたりするだけで、こどもは驚くほど目の前の活動に集中できるようになります。

最後になにより大切なのが安全の確保です。

家具の角をクッションで覆う、床の物を片付けておくといった物理的な安全はもちろん、「ここでなら、少しぐらい失敗しても大丈夫」とこども自身が心から感じられるような、心理的な安全性も意識して作ってあげてください。

こうした環境への配慮は、こどもの心の負担を軽くし、「あそびそのもの」にエネルギーを注げるようにするための大切な下準備なのです。

発達段階に合わせてルールの複雑さを調整する

「みんなと同じようにできない…」という経験は、こどもの心をチクリと刺し、集団あそびへの苦手意識を植え付けてしまうことがあります。

私たちができることは、こどもが「頑張ればクリアできる!」と感じられる、絶妙な難易度のあそびを提供してあげることです。

そのためには、あそびのルールを丁寧にかみ砕き、こどもの発達に合わせた「緩やかな階段」を用意してあげることが大切です。

いきなり複雑なルールのあるあそびに挑戦するのではなく、こどもがどこまでルールを理解できているかを見極め、少しずつステップアップしていきましょう。

まず、階段の土台となるのが「ルールがほぼない」自由なあそびです。

ボールに触ったり、転がしたり、その感触をただ楽しむことです。

ここでは「順番」や「やり方」を教えず、まずその活動自体に興味を持ってもらうことが目的です。

次に、「たった一つの単純なルール」を加えてみます。

「自分の番が来たら、1回だけボールを投げる」といったごく簡単な約束事です。

これにより、一つの指示を聞いて行動に移すという、集団活動の基本を学びます。

そのステップに慣れたら、「複数のルール」に挑戦します。

「ボールを投げたら、定位置に戻り、次の子に道具を渡す」のように、2~3つの動作を連続して行うあそびです。

これにより、情報を聞き分けて行動を判断・切り替える力が養われます。

そして、この階段を登った先で、鬼ごっこや簡単なすごろくといった、役割や順番のある本格的な集団あそびにたどりつきます。

ここまで来ると、自分以外の人の動きを意識し、集団の中での自分の役割を理解しながら遊べるようになってきます。

この「あそびの階段」をこどもが安心して登れるように、大人はいくつかの「手すり」を用意してあげることができます。

言葉だけの説明では、ルールはまるで霞のようにつかみどころがありません。

そんな時は、絵カードなどを使ってルールを「見える化」してあげましょう。

「やること」と「やらないこと」が視覚的に分かるだけで、こどもの理解度は格段に上がります。

また、集中力や待つことが難しい場合は、活動時間を短く設定するのも効果的です。

「3回やったら終わり」「タイマーが鳴るまで」と区切ることで、成功体験を積みやすくなります。

教え方にも工夫ができます。

いきなり「やってみて」ではなく、まず大人が見本を見せ、次にこどもと一緒にやり、最後に少し離れて見守るという段階的な提示を心がけましょう。

時には、「どっちのルールでやってみる?」と簡単な選択肢からこども自身にルールを選ばせると、主体性が引き出され、より意欲的に参加できることもあります。

このように、こどもの発達段階を丁寧に見つめ、あそびの難易度を柔軟に調整していくこと。

それこそが、「できない」という悔しさを、「できた!」という自信に変えていくための、最も大切な関わり方なのです。

集団あそびで成功体験を積ませる工夫

集団あそびの最終目標は、スキルを習得すること以上に「人と関わるのって楽しいな」「またみんなとあそびたいな」という肯定的な感情を育むことです。

そのために、大人ができるのは、こどもが「できた!」という成功体験を積み、自己肯定感を高められるような、少し特別な「仕掛け」を用意してあげることです。

まず大切なのは、あそびへの参加のハードルを、こどもが気づかないうちにそっと下げてあげる工夫です。

例えば、活動の導入には、こどもが好きなあそびや得意な動きを取り入れてみましょう。

ジャンプが好きなこどもなら、最初はジャンプがメインのあそびから始める。

そうすることで、こどもは自信を持って活動に入ることができ、その最初の小さな成功体験が「次もやってみよう」という意欲になります。

活動中の声かけも重要です。「みんなで仲良く」といった曖昧な指示では、こどもはどうしていいか分からず不安になってしまいます。

「〇〇くんがブロックを3つ置いたら、次は△△ちゃんの番ね」というように、誰が・いつ・何をするのかを具体的に伝えることで、先の見通しが立ち、安心して自分の番を待つことができます。

そして、何より私たち大人自身が「楽しむモデル」になることを忘れないでください。

大人が心から楽しそうに遊んでいると、そのポジティブな雰囲気は自然とこどもたちに伝わります。

「なんだか楽しそうだから、参加してみたい」という気持ちを引き出す、最高のきっかけになります。

こどもがあそびに参加できた時、私たちの「声かけ」が、その経験を本物の自信に変えるための最後の仕上げとなります。

ここで気をつけたいのが、「一番になれてすごいね!」という結果だけを褒めることです。

それだけでは、負けてしまった時に「自分はダメなんだ」と感じやすくなってしまいます。

本当にこどもの心に響くのは、結果に至るまでの「目に見える行動」や「内面の努力」を認める言葉です。

「自分の番まで、じっと待ててえらかったね」と伝えれば、お子様は自分の自己抑制力を誇らしく思うでしょう。

「最後まで諦めなかったのが、かっこよかったよ」と声をかければ、粘り強さの大切さを学びます。

「お友達に『どうぞ』って言えたね」と褒めれば、その社会的な行動は、また次もやってみようという力に変わります。

このように、頑張りの過程をその場ですぐに、具体的に言葉にして伝えることが大切です。

それこそがこどもの自信となり、「次も頑張ろう」という力になります。

療育では「2人あそび→小集団→大集団」と段階的に広げる

公園や園、学校で、多くのこどもたちが楽しそうにあそんでいる輪。

その輪の中に、我が子がなかなか入っていけない姿を見ると、保護者としては少し心配な気持ちになってしまうかもしれません。

しかし、いきなり大人数の輪に飛び込むのは、多くのこどもにとって、実はとてもハードルが高いのです。

知らない人がたくさんいる、どこを見ていいか分からない、ルールが複雑で理解できない…そんな不安や混乱で、頭がいっぱいになってしまうのです。

大切なのは、無理に背中を押すことではありません。

こどもの心の負担を軽くし、「これならできるかも」という安心感を育てながら、少しずつ世界を広げていく「スモールステップ」のアプローチです。

まず始めるのは指導者や保護者、あるいは特定のお友達との「2人きりのあそび」です。

ここでの目的はただ一つ、「人と関わるって、こんなに安心できて楽しいんだ」という経験の土台を作ることです。

こどもが笑ったら一緒に笑い、驚いたら一緒に驚く、そうやって感情を共有するうちに、「この人といると心地いい」という信頼関係が生まれます。

大人が「かして」「どうぞ」といったやり取りのモデルをさりげなく見せることで、社会性の基礎も自然と育まれていきます。

その安心感を土台にして、次は3~4人の「小集団」へとステップアップします。

ここからは、「自分」以外の「他者」の存在を意識するステージです。

混乱を避けるために、大人のサポートが鍵となります。

「〇〇くんはボールを投げる係ね」と一人ひとりの役割を明確にしたり、「順番に一つずつ」とルールをできるだけ単純化したりすることで、こどもは「何をすればいいか」が分かり、安心して参加できます。

トラブルが起きそうになったら大人がそっと仲立ちをし、「みんなと一緒でも、うまくいった!」という成功体験へと導いてあげましょう。

この小さな自信が次の大きな一歩に繋がります。

いよいよ5人以上の「大集団」への挑戦です。

ここでは、集団全体の大きな動きの中で、こども自身が自分を調整する力を身につけることが目標となります。

大人は、そのための「お守り」をいくつか用意してあげましょう。

活動の前に「今日はこれをやって、次にこれをするよ」とイラストなどで流れを説明し、見通しを持たせて不安を軽減します。

全体への指示が届きにくい子には、そっとそばに寄って個別に声をかける配慮も大切です。

そして何より重要なのが、「逃げ場の確保」です。

集団の刺激に疲れてしまった時、いつでもクールダウンできる静かなスペースがあれば、「いざとなったら休める」という安心感が、もう一度挑戦する勇気を与えてくれます。

このように、こどものペースに合わせて一歩ずつステップアップしていきます。

その過程でたくさんの小さな成功体験を重ねていくことこそが、集団への苦手息しを克服し、「みんなで遊ぶのって、楽しい!」という心からの笑顔を引き出す鍵となるのです。

環境やルールを意識することで、こどもが安心して集団あそびに取り組め、さらに成長を感じられる療育活動へとつながります

次に課題別のあそびのアレンジ方法についてご紹介します。

課題別!集団あそびのアレンジ方法

集団あそびは、こどもが社会性を学ぶ貴重な機会であると同時に、その子の「つまづき」や「苦手」が見えやすい場面でもあります。

しかし、それは決してネガティブなことではありません。

むしろ私たちがどう支援すれば良いかを教えてくれるヒントなのです。

ここでは、それぞれのつまずきに寄り添う具体的な集団あそびのアレンジをご紹介します。

ルール理解が難しい場合は(イラストカードで視覚支援)

口で説明してもきょとんとしていたり、すぐにルールを忘れてしまったりするこどもにとって、言葉だけでのルール説明では、頭の中にイメージが作りにくいのです。

言葉を聞いて記憶し、自分の行動に反映させるのは、非常に高度な集中力と理解力を必要とします。

そこで、言葉を「見てわかる形」に変えてあげましょう。

例えば、ゲームの手順を簡単なイラストで描き、①→②→③と順番に並べた絵カードは、こどもにとって目で見てわかる手順書になります。

「やってはいけないこと」に大きく赤い「×」マークをつけるだけで、言葉で何度も注意されるよりもずっと直感的に理解できます。

また、大人が「こうやるんだよ」と楽しそうにお手本を見せることは、何より分かりやすい方法です。

それでも難しい場合は、こどもの手をそっと取って「一緒にやってみようか」と、身体の動きを通してルールを伝えます。

理屈で理解するのではなく、実際の動きとして体験することで、一度身につくと忘れにくくなります。

順番を待つのが苦手な場合(順番ボードやタイマーを活用)

「あと少し待っててね」の「あと少し」が、こどもにはいつ終わるか分からず、とても長く感じられることがあります。

「待つ」という時間の感覚を理解するのは、大人でも難しいものです。

順番を待てずに割り込んだり、「まだ?」と何度も聞いたりするのは、いつ自分の番が来るか分からず不安になっているのかもしれません。

このような時間の経過や順番が、視覚的にわかるように工夫しましょう。

例えば、ホワイトボードに参加する子の顔写真マグネットを順番に貼り付けます。

自分の位置が視覚的に分かるだけで、「あと2人待てば自分の番だ」と見通しが立ち、安心して待つことができます。

キッチンタイマーや砂時計も、時間を具体的に示すための効果的な道具です。

「この砂が全部落ちるまで」と伝えることで、「あと少し」という曖昧な時間が、砂がすべて落ちるまでという明確な終わりの時間に変わります。

特に、残り時間が色で示されるビジュアルタイマーは、あとどれくらいかが一目で分かり、気持ちの切り替えを助ける客観的な合図として非常に効果的です。

勝ち負けにこだわりすぎる場合(協力型ゲームに変更、ゴールを複数設定)

ゲームに負けるとひどく落ち込んだり、勝つためにルールを曲げようとしたり。

そのこだわりは、単なるわがままではなく、「負ける=自分はダメな存在だ」という、自己肯定感の揺らぎに繋がっている場合があります。

そんな時は、あそびのゴールそのものを変えてみましょう。

必ずしもあそびに勝ち負けは必要ありません。

敵と味方に分かれて競うのではなく、「みんなで力を合わせて、一つの目標を達成する」という協力型のゲームを取り入れます。

「制限時間内にみんなで宝物を集める」といったあそびでは、「誰かと競う」のではなく「みんなで挑戦する」という経験が、勝敗とは違う達成感を教えてくれます。

また、「一番」だけがゴールではない、と大人が示してあげることも大切です。

「かけっこで一番になった子もすごいけど、転んでも最後まで諦めなかった〇〇くんも、同じくらい素晴らしいことだよ」

「友達に『どうぞ』って譲ってあげた△△ちゃんは『優しさチャンピオン』だね!」

というように、勝ち負け以外の行動を具体的に褒めましょう。

そうすることで、「速いこと」だけでなく、「諦めない心」や「優しさ」も価値があることだと学び、結果に過度にこだわる気持ちが少なくなっていきます。

このように、よくある3つの課題に寄り添う具体的な集団あそびのアレンジをご紹介しました。

これらのアレンジは、こどもの「苦手」を乗り越えさせるためだけのものではありません。

一人ひとりの「つまずき」に寄り添い、環境を調整することで、こどもが安心して自分を発揮し「みんなと遊ぶって楽しい!」と心から感じられるようにするために、大切な支援なのです。

この記事を読んで、「うちの子にも、こんな風にあそびを通して成長をサポートしてあげたい」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。

私たち「こどもプラス」の教室では、運動療育を提供しており、こども一人ひとりの発達段階や特性に合わせた療育を通して、「できた!」という成功体験を育むお手伝いをしています。

ご家庭での関わりにプラスして、専門的な支援にご興味のある方は、お気軽にお問い合わせ・ご相談ください。

この記事を書いた人
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発達支援に特化した放課後等デイサービスを全国190教室以上展開する「こどもプラス本部」は、筑波大学大学院博士課程修了・柳澤弘樹博士(体育科学)の研究成果を基に設立されました。
身体活動と脳機能に関する研究を行い、発達障がいのお子様向けの運動プログラム開発に貢献しています。

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