発達障害

社会性の発達が心配なときに|保護者ができることまとめ

発達障害

こどもが社会の中で上手に関わり合いながら成長していくためには、「社会性」を育てることがとても大切です。

特に発達に課題があるお子さんにとっては、コミュニケーションや協調性を身につけることが難しい場合もありますが、家庭でのちょっとした工夫やあそびを通じて、その力を少しずつ伸ばすことができます。

この記事では、こどもの社会性発達についての基礎知識について解説します。

日々の生活のなかで無理なく取り入れられる工夫を通して、楽しくお子さんの成長を支えていきましょう!

社会性とは?こどもの発達でなぜ大切なの?

泣くこども

「うちの子、友達と上手く遊べない…」そんな悩みを持つ保護者の方は多いものです。

社会性とは、他者と良い関係を築き、コミュニケーションを取る力のこと。

これはただの「仲良くする力」ではなく、

  • 自分の気持ちを言葉で伝える力
  • 相手の気持ちを理解する力
  • 自分の感情をコントロールする力

などが含まれ、こどもの成長に欠かせない力です。

社会性が育つと、こどもは集団の中で安心して役割を果たせるようになり、学校生活や将来の人間関係もスムーズになります。

逆に、社会性の発達が遅れると孤立やストレスを感じやすくなることもあります。

では実際に、社会性はどのような行動として表れるのでしょうか?以下のような力が育ってくると、「社会性が身についてきた」と言えるでしょう。

  • 友達を遊びに誘える
  • 相手の気持ちを考えて言葉を選べる
  • 順番を待てる、ルールを守れる
  • トラブルの後に「ごめんね」と言える など

年齢別・社会性発達の目安【乳児~小学生】

幼児の運動のようす

こどもの社会性は年齢ごとに段階的に発達していきます。

ここでは、乳児期から小学生までの主な発達の目安を紹介しつつ、教育現場で注目されている課題もあわせて解説します。

0〜1歳:信頼関係の芽生え

この時期は、「人は信頼できる存在だ」と感じることが社会性の土台になります。

親とのスキンシップや笑いかけ、やり取りを通じて、安心感と人への興味が育ちます。

2〜3歳:自我の芽生えと対人トラブルの始まり

「イヤ!」が増え、自分の意思をはっきり主張するようになります。

他の子とのおもちゃの取り合いなど、トラブルも増えますが、これは社会性が育つ過程の一部。

大人の関わりの中で、感情の伝え方や相手の存在を学んでいきます。

4〜5歳:ごっこあそびやルール理解の発展

お友達と一緒に「ごっこあそび」やルールのあるあそびを楽しむようになります。

役割を分担しながら協力したり、勝ち負けを経験したりすることで、相手の気持ちを考える力やルールの重要性が育ちます。

小学校低学年:集団行動と「小1プロブレム」

この時期は、学校という大きな集団に初めて参加し、クラスや班などの枠組みの中で自分の役割を意識し始めます。

ただ、入学後に「じっと座っていられない」「先生の話を聞けない」などの行動が見られるケースもあり、これは“小1プロブレム”と呼ばれます。

背景には、幼児期に対人関係を通じたルール理解や協調性を育む経験が十分でなかったことが関係していることも。

この時期は、集団でのふるまいや感情のコントロールが社会性の大きなテーマになります。

小学校高学年:個人差の拡大と「9歳の壁」

高学年になると、友達関係がより複雑になり、「この子とは気が合う/合わない」といった選択が生まれます。

ちょうどこの時期にぶつかるのが、“9歳の壁”と呼ばれる発達のハードルです。

これは、自他の区別が明確になり、自分を客観的に見たり、他人の評価を意識したりすることで、自己肯定感が揺らぎやすくなる現象のことです。

その結果、友達との関係に悩んだり、集団の中で不安を抱えたりする子が増えてきます。

大人はこの変化に気づき、「自分を大切にしていいんだよ」というメッセージを繰り返し伝えることが大切です。

年齢によって社会性の発達に特徴はありますが、すべてのこどもが同じスピードで育つわけではありません。

周囲の大人がこどもの変化に気づき、適切な声かけや環境づくりをすることで、社会性は自然に育っていきます。

社会性が未発達?よくあるサインと判断基準

子どものADHDを判断するチェックリスト

「うちの子、友達とあまり遊ばない」「集団行動が苦手そう」

──そんな不安を抱える保護者の方は少なくありません。

社会性の発達には個人差がありますが、いくつかのサインを知っておくことで、早めの気づきや対応につながります。

よくあるサイン

  • 友達とのあそびが続かない、または一人あそびが多い
  • ルールを理解したり守ったりするのが難しい
  • 相手の気持ちに気づきにくい、共感が難しい
  • 集団の中で孤立しやすい、浮いている感じがする
  • 怒りや不安の感情をコントロールしづらい

一時的なものなら心配はいりませんが、こうした様子が半年以上続き、園や学校でも「関わりづらさ」が見られる場合は、発達支援センターや小児科などへの相談も視野に入れてみてください。

発達障がい(ASD)との違い

発達障がいの一つである自閉スペクトラム症(ASD)では、社会性の難しさが中心的な特徴です。
ただし、社会性が未熟だからといってすぐに「ASDかも?」と自己判断するのは避けましょう。発達障がいは多様な特性の組み合わせであり、専門的な評価と支援が必要です。

保護者ができる声かけ例

  • 「友達とどうしたら仲良くなれるかな?」と一緒に考える
  • 「その気持ち、わかるよ」と共感を示す
  • 小さな成功体験を見逃さず、「できたね!」としっかり認めて自信を育てる
【NG例】「泣かないの!」と感情を否定する
お子さんの感情は否定せず、受け止める姿勢を意識しましょう。

お子さんの「困っているサイン」は、成長途中のサインでもあります。

早めに気づき、寄り添ってサポートすることが、社会性発達の第一歩です。

家庭でできる!社会性を育てる接し方・あそび

お絵描きするこども

社会性は日々の関わりやあそびの中で少しずつ発達していきます。

家庭でできるサポートは、年齢に応じた関わり方を意識することが大切です。

年齢別の関わり方のポイント

  • 乳幼児(0〜1歳)
    たくさん話しかけたり、笑いかけたりして、安心できる信頼関係を築きましょう。スキンシップや目を合わせることが社会性の土台作りになります。

  • 幼児(2〜3歳)
    自己主張が出てくる時期。感情を言葉で表現する手助けをしましょう。「イヤだね」「悲しいね」と気持ちを言葉にして伝えることが大切です。

  • 幼児(4〜5歳)
    ごっこあそびや役割あそびを一緒に楽しみながら、ルールや相手の気持ちを考える練習をします。「お友達の気持ちはどうかな?」と問いかけてみましょう。

  • 小学生
    友達関係や集団行動のサポートを意識し、問題が起きた時は感情を整理する手助けを。具体的には、「どうしてそう思ったの?」と聞いて気持ちを確認し、解決策を一緒に考えることが効果的です。

家庭でできる社会性を育むあそび例

  • ごっこあそび
    お互いの役割を理解しながら協力する力が育ちます。

  • ルールのあるゲーム
    勝ち負けを経験し、ルールの尊重や感情のコントロールを学べます。

  • 読み聞かせや絵本の対話
    登場人物の気持ちについて話し合うことで、共感力が育ちます。

日常の中でお子さんの気持ちに寄り添い、安心できる環境を作ることが、社会性発達の基礎となります。

焦らず、楽しみながら関わっていきましょう。

家庭で実践!社会性の発達を促す運動あそび

社会性は「教え込む」ものではなく、日常の中で少しずつ育まれていくものです。

特に幼児期〜小学生のこどもたちにとって、あそびは人との関わりを学ぶ絶好のチャンス。

ここでは、家庭でも無理なく取り入れられる、社会性を育てるあそびを2つご紹介します。

【運動あそび】2人スキップ

「相手に合わせる」経験で協調性を育てる

このあそびでは、こども同士がペアになって手をつなぎ、一緒にスキップをします。最初のうちは、スピードやタイミングがなかなか合わずにぎこちなくなるかもしれません。でも、それでOK。むしろ「うまくいかないけれど、一緒にやってみる」という経験こそが、社会性を育てる大きな第一歩です。

  1. まずは「いっしょに手をつないでスキップしてみよう」と声をかけて、自然にスタート。
  2. 慣れてきたら「相手のスピードに合わせてみようか」と促していくと、こどもは相手の動きを意識するようになります。

大切なのは、成功よりも「一緒に楽しんだ」という体験です。

ペースが合ったときには「いま息ぴったりだったね!」と声をかけて、楽しさや達成感を共有しましょう。

【運動あそび】まねっこ歩き

「相手の動きに注目する力」をあそびながら育てる

このあそびは、数人で列をつくり、一番前の「隊長」の動きを真似して歩く、模倣あそびです。最初は、くまさん歩きやカンガルー跳びなど、こどもがよく知っている動きから始めると取り組みやすくなります。

  1. はじめに「前の人の動きをよく見て、まねっこしてね」と説明したら、隊長役が元気に動き出します。
  2. 後ろのこどもたちはそれを見ながら、同じ動作を繰り返していきます。時にはタイミングがズレたり、うまくできなかったりしても、それもまた楽しいポイント。
  3. 何回か繰り返したら、隊長を交代しながら行うと、「真似をする側」と「真似される側」の両方を経験できます。

これにより、他人に注目する力だけでなく、役割意識や自己表現の力も自然と育まれていきます。

保護者の方のポイント

どちらのあそびも、「できる・できない」ではなく「やってみた・一緒に笑えた」ことを大切にしてください。

こどもが自信を持てるように、「今の上手だったね」「お友達のことちゃんと見てたね」など、努力や意識した点をほめる声かけが効果的です。

なお、この記事で紹介したような運動あそびは、「こどもプラス」の教室でも実際に取り入れられており、社会性をはじめとしたこどもの多様な力を育む療育活動として実践されています。

興味のある方は、こどもプラスの 運動療育プログラム をご覧ください。

デジタル時代のこどもと社会性:SNS・動画・ゲームの影響

ゲームをするこども

「スマホばかり見ていて、友達と遊ばない」「ゲームに夢中で、会話が少なくなった」

現代のこどもたちは、生まれた時からデジタル機器に囲まれて育つ“デジタルネイティブ世代”。

便利な一方で、人との関わりを通じて育つはずの社会性が、経験不足のまま成長してしまうリスクがあります。

デジタルコンテンツが社会性に与える影響

1. 「一方的な受け身の時間」が増える

動画視聴やゲームは、基本的に他人とのやりとりが不要な活動です。

長時間続くことで、「自分の思いを伝える」「相手の反応を感じ取る」経験が不足しがちです。

2. 「即時反応」に慣れすぎると…

SNSや動画では「いいね」やコメントなどの即時的なフィードバックに慣れる傾向があります。

すると、現実のコミュニケーションの“もどかしさ”に耐えられなくなることも。

3. 共感力・空気を読む力が育ちにくい

リアルな対話では表情・声のトーン・沈黙も重要な情報です。

画面越しのやりとりではこれらがカットされるため、相手の気持ちを読み取る力=社会性の根幹が育ちにくくなる側面があります。

家庭でできる「デジタルとの上手な付き合い方」5つのポイント

デジタル機器との付き合い方は、こどもの社会性に大きな影響を与えることがあります。とはいえ、完全に制限するのではなく、「上手に付き合う力」を育てることが大切です。

ここでは、家庭で今日から実践できる5つの工夫をまとめました。

工夫例 内容・意図
デジタルタイムを“区切る” 「15分だけYouTubeを見ようね」とタイマーで区切ることで、切り替え力も育つ
使う前に「誰かと関わる時間」をつくる 「お手伝いしてからゲームしよう」と、人とのやり取りを優先
見た内容について会話する 「今日見た動画、どんな話だった?」と対話を促すことで一方通行を防ぐ
外あそび・対面あそびを意識的に取り入れる 意図的にリアルな関わりの場をつくり、五感を使った交流を増やす
家族ルールを一緒に作る 一方的な制限ではなく、こどもと一緒にルールを決めることで納得感と自律性を育てる

こうした小さな工夫を日々の生活に取り入れることで、人との関わりを大切にしながら、デジタルにも適切に触れる力が育っていきます。

無理にやめさせるのではなく、「どう関わるか」を一緒に考える姿勢が、こどもの自律性や社会性の成長にもつながります。

デジタルは「排除」ではなく「バランス」が鍵

現代のこどもたちにとって、デジタルは「悪」ではなく「日常の一部」。

大切なのは、リアルな人間関係と並行して体験できる環境を整えてあげることです。

こどもだけでなく、大人自身も“関わり”の在り方を見直すチャンスかもしれません。

専門機関に相談すべきタイミングとは?

公的な機関

お子さんの社会性について悩んでいても、「これって個性?それとも何か問題があるのかな?」と迷い、相談のタイミングが分からず戸惑う保護者の方は少なくありません。

中には、「私の育て方がいけないのかも…」と自分を責め、誰にも相談できずにいる方もいるかもしれません。

ですが、気になることがあったときに誰かに相談することは、決して特別なことではありません。

むしろ、お子さんの今の姿を理解するための第一歩。ここでは、相談するメリットやタイミングについて分かりやすくご紹介します。

こんなときは相談を検討しましょう

社会性の発達は個人差が大きいため、焦る必要はありませんが、「長く続いている」「家庭以外でも困っている」という場合は、専門的な視点で見てもらうことをおすすめします。

  • 集団生活や友達関係で半年以上トラブルや孤立が続いている

  • 家では落ち着いていても、園や学校で極端に緊張・萎縮している

  • 感情のコントロールが難しく、家庭内でも爆発しやすい

  • 保育士・担任の先生などから「他のこどもとの関わりづらさ」について指摘があった

  • 保護者自身が「なんとなく気になる…」という感覚が続いている

これらのうち1つでも当てはまれば、相談しても早すぎることはありません。

相談できる場所

どの機関に相談すればよいか迷う保護者の方も多いかもしれません。

以下に、主な相談先とその特徴をまとめました。お子さんの様子や悩みに応じて、適切な機関を選ぶ参考にしてください。

機関名 内容・特徴
小児科・発達外来 医学的な視点での評価。必要に応じて他機関の紹介も。
発達支援センター・療育センター 発達の専門機関。相談・発達検査・支援プログラムの提供。
保育園・幼稚園・学校の先生 日常の様子を共有できる最初の相談相手。連携のきっかけにも。
子育て支援センター・保健センター 初期の悩み相談や子育て全般のサポートが受けられる。

小さな気がかりでも、早めに相談することが安心につながります。

特に地域の保健センターや子育て支援センターは、初めての相談先として利用しやすく、多くの保護者にとって心強い存在となっています。

早期に相談するメリット

早めに相談することで、保護者の不安が軽減されるだけでなく、こどもへの関わり方のヒントが得られることもあります。

もし支援が必要な場合でも、早期にサポートを開始できる点は大きなメリットです。

また、実際に相談を通じて「その子に合った関わり方」が見えてくるケースも少なくありません。

“特別な子だから相談する”のではなく、今の発達段階を客観的に知るための手がかりとして、気軽に利用してみてください。

相談には“待ち時間”があることも

発達障がいの専門外来では、初診までに数か月から半年以上待つことも珍しくありません。
そのため、「しばらく様子を見てから相談しよう」ではなく、気になった時点で早めに予約・相談を始めることが大切です。

待機期間中も、保健センターや園・学校の先生と連携を取りながら、できることから少しずつ支援を始めていくことができます。

「相談=何かが悪い」と思われがちですが、実は逆です。

「今の状態を前向きに理解するための第一歩」として、誰でも使える手段です。

一人で悩まずに、まずは気軽に話してみることが、親子にとっても大切な“社会性の第一歩”になるかもしれません。

この記事を書いた人
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発達支援に特化した放課後等デイサービスを全国190教室以上展開する「こどもプラス本部」は、筑波大学大学院博士課程修了・柳澤弘樹博士(体育科学)の研究成果を基に設立されました。
身体活動と脳機能に関する研究を行い、発達障がいのお子様向けの運動プログラム開発に貢献しています。

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発達障がいのお子様向け放課後等デイサービス・児童発達支援 - こどもプラス
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